ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第77話「初めての里帰り」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、貴司(星野源)に対して「自分の本当の気持ちを大切にすべきだ」とアドバイスするが、貴司は恋人への思いを押し殺し、新しい店を引き受けようとしていた。布美枝は藍子を連れて、境港の茂(向井理)の実家を訪れる。絹代(竹下景子)と修平(風間杜夫)は、布美枝を歓迎する。絹代は布美枝に対して「貧しい暮らしのなかで、夫の茂を当てにすることなく、自分自身がしっかりするように」と諭す。

77話ネタバレ

飯田家

2階

いずみ「結婚して 3年半も 戻ってこんかったくせに こっちの残っとるもんの 気持ちなんか 分からんわ!」

居間

源兵衛「お前 知っとったのか?」

ミヤコ「いえ… 気づきませんでした。」

源兵衛「親に内緒で 好き勝手やりおって! 東京に行くだの 婿に行くだの。」

ミヤコ「いずみには 後で よう言って聞かせますけん。」

源兵衛「お前が甘いから いけんのだ!」

ミヤコ「すんません。」

源兵衛「貴司は 婿には 出さん。 酒屋やらせる。 何が悲しくて ミシン屋の婿に 瀬にゃならんのだ。」

飯田酒店

布美枝「昔は ここで 瓶に詰め替えたよね。」

貴司「びっくりした~! 姉ちゃんか。」

回想

源兵衛「布美枝 酒が届いとるぞ!」

回想終了

布美枝「あれは 重労働だったね。」

貴司「昔に比べたら 今は 随分 楽になったわ。」

布美枝「どれが売れちょ~の?」

貴司「出雲錦が よう出とる。」

布美枝「あんた 伏見の銘酒を 地酒の値段で売って お父さんに 叱られた事あったね。」

貴司「あった あった。 覚えとるか? 姉ちゃん 配達中に 自転車で転んで 積んでた酒瓶 全部 割ってしまったろう?」

布美枝「あの時は どげに叱られるかと 思って ビクビクして帰ったけど あんたが 一緒に謝ってくれたけん あんまり 叱られんで済んだわ。」

貴司「泣きべそ かいとったもんな。」

布美枝「泣いとらんよ。」

貴司「いや 半泣きだったぞ。」

(2人の笑い声)

貴司「苦労して続けてきた 酒屋だけん ほうり出す訳にもいかんよなあ。 酒屋やっとったお陰で 家族が食べてこられたんだけんな。」

布美枝「なあ 貴司。」

貴司「ん?」

布美枝「私が 口出す事ではないけど。 あんた 自分の気持ちも 大切にせんといけんよ。 一遍 ちゃんと 話 した方がええ。 何も知らんところで いきなり 婿入りの話されたら 幾らなんでも お父さんでも へそ曲げるわ。」

貴司「話しても どげだいならん。 それより 大丈夫なのか?」

布美枝「え?」

貴司「『貧乏しとるようで かわいそうだ』って お母さん 心配しとったぞ。」

布美枝「ああ…。 あんただから 話すけど うち 質札が こんなに たまっとるのよ。」

貴司「えっ? 質札?」

布美枝「質入れした物が 流れんように しょっちゅう 出したり入れたり。 何度も 食糧危機に陥ったし 鼻紙が切れて買えんだった事も 電気が止められた事も あったんだよ。」

貴司「へえ~! そげん もうからんのか? 姉ちゃん よう 文句も言わんで やっとるな。」

布美枝「言っても しかたないもん。 うちの人 漫画 描いて生きるって 決めとるけんね。 一日中 夢中で描いとるよ。 貧乏はしとるけど 好きな事に 打ち込んど~けん しかたないわ。        私も うちの人には 漫画を描いとって ほしいけんね。」

貴司「そげか。」

布美枝「あんたは 酒屋で ええの?」

貴司「え?」

布美枝「酒屋 継ぐ事 一番大事と思っとるの? 何があっても 一番大事なことは 諦めたらいけん。 私 うちの人 見とったら そげ思うわ。 あんたもな もし 店の事よりも あの人の方が…。

貴司「俺は 村井さんとは 違う!」

貴司「ヘヘヘ! ずっと ここで暮らし 酒屋やりながら 30まできたんだ。 今更 商売 ほうり出して 好き勝手する訳には いかん。」

(小鳥の鳴き声)

居間

邦子「フミちゃん 今日は 藍子ちゃん 連れて 境港にお出かけですねえ。」

布美枝「うん 行ってくるわ。」

ミヤコ「今日は あっちに泊まるの?」

布美枝「戻ってくるつもりだけど。」

哲也「境港じゃ 藍子が来るのを てぐすね引いて待っとるらしいぞ。 幽閉されんように 気をつけろ! ハハハハ!」

布美枝「まさか ねえ!」

いずみ「ごちそうさまでした。 学校 行ってきます。」

台所

ミヤコ「困ったねえ。 せっかく あんたが帰ってきたのに こげな事になって ごめんね。」

布美枝「ううん。」

ミヤコ「いずみの事は ともかく 貴司の事は 相手がある事だけん このままにしておけんね。 お父さん 誰の意見も聞かずに 何でも 話 進めてしまうけん。 (ため息)」

村井家

居間

絹代「はい 藍子 こっちにおいで ハハハ! ようやっと しげさんの子供を 抱けたわ。」

修平「どれ! わしにも抱かせろ! 」

絹代「丈夫に育っとる? 病気はしとらん?」

布美枝「はい めったに 風邪もひかんし よう食べるし よう寝るし 手のかからん子です。」

絹代「しげさんの子供の頃と 同じだわ。 ねえ お父さん。」

修平「こっち よこせ。」

絹代「顔も よう しげさんと似とる。」

布美枝「みんなに 言われます。」

藍子「ちいちゃ~い!」

絹代「ちいちゃ~い。 しげさんより ず~っと賢いな! あの子は 4つまで ちっとも しゃべらんだったのよ。」

布美枝「そげですか?」

絹代「う~ん。 フッ ハハハハ! 最初にしゃべったのが 『ねんこんババ』。」

布美枝「えっ?」

修平「猫のふんと言ったんだ。」

布美枝「はあ…。」

絹代「自分の粗相を 猫のふんのせいにして ごまかそうとしたんだがね。」

布美枝「あら!」

絹代「あの子は あの頃から ちょっこし 変わっとりましたねえ お父さん。」

修平「ええから! 早とこ わしに抱かせ!」

絹代「もう 大きな声 出して! 嫌でちゅねえ~。」

知人1「ごめんくださ~い!」

知人2「しげさんの子は 来ちょ~かね?」

絹代「は~い! お父さんが 言って歩くけん 近所の人が 藍子 見に来たんだわ。 は~い! 藍子 来ちょ~ますよ!」

修平「もう… う~ん!」

布美枝「はい お待たせしました!」

知人1「こりゃ ゆくゆくは べっぴんさんに なんぞ~!」

知人2「絹代さんに よう似ちょ~わ!」

絹代「あら そげですか?」

修平「一つも似とらん。」

知人1「半兵衛さんとこには 連れていったかね?」

絹代「まだですわ。 何せ 今日初めて 嫁が 藍子連れてきたんですけん。」

知人2「そげかね? あんた まめに 顔出いて じじ ばばを喜ばせんといけんわ。」

布美枝「すんません。」

知人1「しげさん 仕事は どうしとる? 漫画は 成功しとるかね?」

知人2「成功しと~に 決まっちょ~わ! 忙して 一緒に 来れんぐらいだけんな?」

布美枝「はい。」

知人3「絹代さ~ん お~かね!」

絹代「トミコさんだ。 は~い! 行こうか~。」

修平「よう来てくれた。 遠いとこ ご苦労さん。」

布美枝「…お父さん。」

知人1「修平さん この間 話しとった カキの養殖の話 どげなった?」

知人2「カキの棚の権利 買ったら がいに もうかると言っとったが あんたが うまくいったら わしらも乗ろうと 思っとるんだけど。」

修平「それですわ。 後は 話を詰めるだけ いうところまで 進んどったのに 絹代の奴が 猛反対するもんですけん 話は ご破算ですわ。 惜しい事をしましたわ!」

知人1「絹代さん 堅いけんなあ。」

修平「ひと山 大きく当てるという 男の夢が 分からん女ですけん。」

絹代「…何の話ですか? 私が あの時 止めんだったら わずかな老後の蓄えまで パアでしたわ! ふん! あげな話… 詐欺に決まっとります! …ちっ!」

布美枝「はい お待たせしました。」

(一同の笑い声)

布美枝「台所… 片づきました。」

絹代「ご苦労さん。」

布美枝「そろそろ戻らんと 汽車がなくなりますし…。」

絹代「何 言っとるの? 今晩は 泊まっていきなさい。」

布美枝「けど… うちの方で ちょっこし 気にかかっとる事もありますし。」

絹代「ほんなら 布美枝さんは 帰ってええよ。 藍子は 明日 私が送り届けるけん。」

布美枝「いや… そんな。」

修平「まあ 一晩ぐらい こっちで ゆっくりしったら ええ。」

布美枝「はあ…。」

絹代「なあ。」

布美枝「はい。」

絹代「しげさん ほんとは もうかっとらんのでしょう?」

布美枝「いえ… なんとか。」

絹代「『なんとか』ねえ。 雄一は 雄一で フラフラして 当てにならんし…。」

修平「おい そげな愚痴 聞かせても しかたなかろう。」

絹代「一番 当てにならんのが お父さんですわ。」

修平「しまった! いらん事 言って こっちに 火の粉が降ってきた。」

絹代「カキの養殖詐欺に まんまと 引っ掛かりそうになって。」

修平「あれは ほんとに ええ もうけ話だったんだ!」

絹代「いいえ 詐欺です! うちの男どもは これだけん。 布美枝さん あんたが しっかりせんと いけんよ。」

布美枝「はい。」

絹代「藍子も お~だけん いつまでも 貧乏では どげだいならんわ!」

布美枝「はい。」

水木家

仕事部屋

茂「うん この男の前途は 屁の力によって開ける訳だ。」

(茂の おならの音)

茂「おう! 軽やかな ええ音色だ。 なあ。 そうか おらんのだった。」

村井家

2階

布美枝「うち これから どげなるんだろうか?」

飯田酒店

回想

布美枝「何があっても 一番大事なことは 諦めたらいけん。」

回想終了

貴司「はあ~!」

(足音)

貴司「マチちゃん…。」

布美枝「ただいま 戻りました~! あれ? 誰も おらんかいね? 店も開けっぱなしで。」

邦子「お帰り!」

布美枝「どげしたの?」

邦子「お父さんと 貴司さんが…。」

モバイルバージョンを終了