ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第78話「初めての里帰り」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)が境港から安来の実家に戻ってくると、ちょうど貴司(星野源)が源兵衛(大杉漣)に対して、“恋人と結婚したい”という気持ちを打ち明け、店は継げないことを明言していた。怒りにかられた源兵衛は、相手の女性の家に乗り込もうとしていた。しかしその時、子ども同士で遊んでいた藍子が、ビー玉を飲み込んでしまい大騒ぎになる。とっさに布美枝は、藍子の背中をたたき吐き出させようとするが…。

78話ネタバレ

飯田家

居間

邦子「貴司さん ゆうべ 例の編み物教室の娘さんと 会ったんですって。」

布美枝「満智子さんと?」

邦子「それで 話があるって お父さんと 仏間に。」

布美枝「すんません。」

仏間

源兵衛「ほんなら お前 その ミシン屋の婿になる気か?」

貴司「一人娘だけん 一緒になるには それしかない。」

源兵衛「酒屋を ほうり出すつもりか?」

貴司「それは… すまんと思ってる。」

源兵衛「小さくとも おばばが 一生懸けて 守った店だ。 わしの代で 大きくして お前やちに渡せば おばばも あの世で 喜ぶ。 そげ思って やってきたんだ。 『小糠三升あったら 婿に行くな』 というのは 知らんのか。 こげな立派な酒屋があるのに なして 婿に出さねばならん。 わしは 許さんけんな!」

居間

布美枝「お母さん…。」

ミヤコ「ああ 帰っとったの。」

布美枝「お父さんと貴司 どげなっとるの?」

ミヤコ「満智子さんいう人と 一緒になりたんだって。 『一人娘だけん 婿に入って 向こうの家を継ぎたい』って。」

布美枝「お父さんは 何て?」

ミヤコ「絶対に許さんて…。」

布美枝「そう…。」

ミヤコ「お父さんに刃向かった事なんか 一遍も ない子が…。 よっぽど その人の事が 好きなのかねえ。」

飯田酒店

貴司「おやじ やめてごしない。」

源兵衛「わしゃな 向こうの親と話す。 こげな事は 親同士で話さんと ラチが明かんのだ。」

飯田家

居間

ミヤコ「何?!」

飯田酒店

源兵衛「どけ!」

貴司「勝手な事は せんでごせ!」

源兵衛「何!」

貴司「俺は 満智子さんと どげでも 一緒になりたいんだ!」

源兵衛「だらず! うちの商売は どげする気だ!」

貴司「俺は あの人が 一番 大事だ! 酒屋より 大事なんだ! おやじには すまんけど… 俺は あの人を選ぶ。 これだけは 譲れん。」

俊文「(泣き声)」

邦子「どげしたの?」

俊文「おばちゃん 藍子が…。」

布美枝「どげしたの?」

俊文「藍子が ビー玉 飲んじゃった!」

一同「え…!」

居間

布美枝「藍子っ 藍子 藍子!」

源兵衛「おい!」

邦子「ほんとに飲んだの?」

俊文「いつの間にか 口に入れとった。」

邦子「だら!」

源兵衛「おい!」

俊文「ごめんなさい。」

貴司「医者 呼んでくる!」

玄関

いずみ「ちょ… ちょっと 何?!」

貴司「藍子が…!」

いずみ「藍子?」

居間

布美枝「藍子 吐き出しなさい! 藍子! 吐き出しなさい! 藍子!藍子! 吐きなさい! 吐き出しなさい!」

源兵衛「布美枝! わしに貸せ! 気道に入ったら 息が詰まる!」

布美枝「藍子! 出して! 藍子! 藍子! 藍子 吐き出しなさい! 藍子! 吐き出しなさい! 藍子! 吐き出しなさい! 藍子! 吐き出しなさい!」

(藍子の泣き声)

源兵衛「助かった…! あ~ よかったなあ。」

邦子「すんません! すいません。」

(藍子の泣き声)

布美枝「苦しかったね! もう大丈夫。 もう 大丈夫だから…。」

医者「どこですか?!」

貴司「先生! 先生 来たぞ!」

源兵衛「先生 もう大丈夫です! 吐きましたけん! 布美枝が 手… こう 口 入れて これ 吐きましたけん。」

布美枝「痛かったね。 苦しかったね」

源兵衛「よかったな。」

布美枝「ごめんね 藍子!」

仏間

源兵衛「布美枝の奴… すっかり 母親らしく なっちょ~な。」

ミヤコ「ええ。」

源兵衛「この家が残れば… それで ええ事にするか!」

ミヤコ「はい。」

源兵衛「店は… 細々とでも続いておれば おばばも 許してくれるだろう。 子供やち いつの間にか みんな 自分で しっかり 歩いちょ~わ。 もう… 道をつけてやらんでも ええな。」

(鈴の音)

源兵衛「おばば… ここは 残ったもんで なんとか やっていきますわ。」

飯田坂店

源兵衛「山田さんから 『出雲錦の特級 3本 届けてくれ』と 注文が来とるぞ。」

貴司「分かった。 ここ済んだら 行ってくる。」

源兵衛「それからな…。」

貴司「ん?」

源兵衛「一遍… うちに連れてこい。 早い方がええ。」

貴司「…え?」

源兵衛「どげな娘か… 会ってみんと 分からんけんな。 話は それからだ。」

貴司「おやじ…。」

源兵衛「許した訳では な~ぞ。 まずは 本人と 親御さんに お会いしてからだ。」

貴司「うん…。」

源兵衛「まったく… 早こと言えばええものを…。」

貴司「すまん…。」

飯田家

2階

(ミシンの音)

いずみ「姉ちゃん?」

布美枝「ん?」

いずみ「何 縫っとんの?」

布美枝「藍子のスカート。 たんすの中に 私の古い服が 残っとったけんね。」

いずみ「お父さん 『会ってみる』って 言っとったよ。」

布美枝「え…?」

いずみ「『満智子さん 家に連れてこい』って お兄ちゃんに言っとった。」

布美枝「そう… うまくいくと ええね。」

いずみ「ね 『満智子さんの事は 絶対に譲れん』って お兄ちゃん お父さんに 言ったんだって?」

布美枝「うん。」

いずみ「見直したわ。 貴司兄ちゃんも いざとなると 強い時 あるね。」

布美枝「ほんと。」

いずみ「『そげなとこは フミ姉ちゃんと同じだ』って お父さん 言っとったよ。」

布美枝「私と?」

いずみ「うん。 ほら さっきの早業 お父さん 感心しとったわ。 藍子の のどに 指ぐっと入れて ビー玉 吐き出させて。」

布美枝「とっさの事だけん。」

いずみ「お医者さんも 褒めとったよ。 『対応が早かったけん 大事にならんだった』って。」

布美枝「…そういえば あんたが 藍子くらいの頃 肺炎にかかって 死にかけた事があったんだよ。」

いずみ「私が?」

布美枝「お医者さんにも 『覚悟した方がええ』て言われてね。 おばば ず~っと 仏壇の前で 手合わせて 拝んどった。」

いずみ「へ~え。」

布美枝「一遍 息が止まってね たんが のどに詰まって。 もう… ダメだと思った。 その時 お父さんが あんたの 口の中に 指突っ込んだの。 『こげに小さな子供を死なせて どげす~だ』って たんを かき出して。」

布美枝「あんた それで 息吹き返して 大きな声で 泣いたんだよ。 さっき とっさに 指入れたの お父さんの事が 頭に残っとったからかな。 東京に出ていくのも ええけど けんかして 飛び出すような 事だけは せんでね。 お父さん 専制君主だけど あんたの事 心配しとるのは ほんとだけん。」

いずみ「うん…。 私 車の免許 取ろうかな。」

布美枝「免許?」

いずみ「うん。 だって 貴司兄ちゃんが 婿に行ったら 私だって たまには 配達の 手伝いも せんといけんでしょう。」

布美枝「いずみ…。」

いずみ「昔のフミ姉ちゃんみたいに 自転車で配達するの カッコ悪くて 嫌だもん。」

布美枝「も~っ。」

仏間

布美枝「おばば うちの事 よろしくね。」

貴司「姉ちゃん そろそろ 行かんと 汽車に遅れるぞ。」

布美枝「うん。 今 行く。 ほんなら… 行ってまいります!」

<初めての里帰りは こうして 無事に終わりました>

水木家

玄関

布美枝「ただいま戻りました!」

茂「お~ 戻ったか。 藍子 ぐずらんだったか?」

布美枝「はい。 ずっと ええ子にしとりました。」

茂「そうか 偉いなあ。」

布美枝「ただいまって。」

藍子「ただいま。」

茂「お~ よく言えたな。」

居間

茂「みんな 元気にしとったか?」

布美枝「ええ。 お父ちゃんは 留守の間 ちゃんと ご飯食べとった?」

茂「おう。」

布美枝「部屋 散らかっとりませんね。 意外と きれいに 片づいとりますね?」

茂「うん。」

布美枝「留守にしたら 少しは困るかと 心配しとったのに。」

茂「何を言っとる。 炊事でも 洗濯でも その気になれば 俺は 何でも できるんだ。 けどな…。 1人では あんまり笑えんな。」

布美枝「え?」

茂「せっかく ええ音を響かせても 聞くもんがおらんと おかし事も 何ともないわ。」

(おならの音)

茂「さて 今の音は?」

布美枝「う~ん 空に輪を描く トンビの声でしょうかね。」

茂「うん そのとおり。」

(笑い声)

布美枝「はぁ やっぱり うちは ええなあ。 のんびりする。」

茂「実家で のんびり してきたんじゃないのか?」

布美枝「ええ。 けど… 私のうちは ここですけん。」

<オンボロな家でも 茂と藍子と暮らす この場所が 今は どこよりも ホッとできる 布美枝の 大切な我が家でした>

モバイルバージョンを終了