ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第82話「旅立ちの青い空」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)が提案した“メダルの景品作戦”は子どもたちの人気となり、「こみち書房」には客のにぎわいが戻ってきた。しかし、貸本漫画を“悪書”と断定する市民団体が「こみち書房」にやって来て、「小学生が貸本屋に出入りすることは、禁止となった」と一方的に告げる。店内は騒然とし、ちょうど外から戻ってきた政志(光石研)と団体の男が、激しいもみ合いになり、警官が店に来る騒ぎになってしまう。

82話ネタバレ

こみち書房

子供1「お! やってるやってる!」

子供2「面白そうだな!」

布美枝「あ… 賑わっとるなあ!」

<五輪ブームを当て込んだ メダル作戦が 功を奏して こみち書房には 客足が 戻ってきました>

美智子「ありがとう!」

純喫茶・再会

テレビ・実況『長嶋 足から ゆっくり 戻っています。 バッターボックスは…』。

マスター「いらっしゃい。」

亀田「お~! やってるやってる。 巨人戦!」

テレビ・実況『投げました。 長嶋 スタートをきった。 キャッチャー 二塁送球』。

マスター「亀田さんとこだって テレビあるじゃない。」

亀田「営業中に見てたら うちのが 『ウヤーッ!』って…。」

マスター「ハハハハ!」

亀田「そういや 政志さんとこの店 持ち直してきたね。」

政志「ダメだよ 貸本屋は テレビに食われちまって。」

亀田「でも 今日なんか 結構込んでるよ… セーフ! セーフ! 貸本オリンピックなんか やっててさ。」

マスター「そうそう。 あれ 考えたね。」

亀田「いいのかい? たまには手伝わなくても。」

テレビ・実況『その後 二塁 三塁へ 立て続けに…』。

政志「…俺には関係ねえよ。」

テレビ・実況『ランナー 三塁…』。

こみち書房

美智子「あら! あと2冊で 金メダルよ!」

日出子「ダメですよ! もう おしまい!」

子供3「僕 もっと漫画 見たい!」

キヨ「また出たよ! うるさいのが…!」

日出子「ほら あなた達 こんなとこで 道草 食ってないで 早く おうちに帰りなさい。」

子供達「面白いね これ面白い。」

日出子「早く店から出なさい!」

子供達「何で? 何でだよ!」

父親1「静かにしなさい!」

(子供達の非難の声)

靖代「…何なの あれ?」

美智子「奥さん! これ… どういう事ですか?」

日出子「私達 学校と話し合いましたの。 小学校の子供達が 俗悪図書に汚染されるのは 教育的にも ゆゆしき問題ですから。 学校の父兄の総意で 子供達の貸本屋への出入りは 禁止になりました。」

布美枝「えっ?!」

美智子「えっ?!」

布美枝「出入り禁止って?」

日出子「ここへは もう 来ては いけないという事に なったんです。」

子供達「え~っ!」

子供4「誰が決めたんだよ!」

日出子「先生と お父さんと お母さん達で決めた事なのよ。」

子供5「いつ決めたのさ? 何月何日 何曜日? 何時何分?」

子供3「何でダメなんだよ! いつまでダメなんだよ!」

日出子「ずっとよ。 この先ずっと禁止です!」

(子供達の非難の声)

日出子「静かに! 本なら 学校の図書室に行けば いいのが たくさん あるでしょ!」

子供「漫画 置いてないもん!」

子供「メダル もらえないじゃん!」

子供「そうだよ そうだよ!」

キヨ「大変だ…! 騒ぎを起こしちゃいけないよ。 ここは なんとか収めて!」

美智子「ええ そうね!」

日出子「さっさと出なさい!」

美智子「あの すいませ~ん! あの~ 今日のところは ひとまず お引き取り頂けませんか?」

日出子「帰れですって!」

美智子「子供達は そういう決まりが 出来た事を知らないんですから。 急に 『ダメ』って言われても 納得しませんし。」

靖代「そうよ! あんた達 不意打ちなんか 卑怯じゃないのよ!」

キヨ「まあ いいから いいから!」

和枝「でも この人達 勝手な事ばっかり!」

キヨ「ここは 美智子に任せて。 騒ぎになったら 損すんのは こっちなんだからさ。」

徳子「そりゃそうだけどさ。」

キヨ「子供に 何か あったら 困るだろ ね?」

日出子「何度も申し入れたはずですよ。 子供達に 俗悪漫画を 貸し出さないようにと。」

美智子「ええ…。」

母親「それなのに 何ですか! こんな安っぽい おもちゃのメダルで 子供の気を引いたりして!」

父親1「やってる事が こっちの要望とは逆じゃないか!」

美智子「分かりました。 ともかく ここは お引き取り頂けませんか…? 今夜にでも 改めて また…。」

日出子「これ以上… 話し合う余地は ありません。 貸本屋への出入りは 禁止! これは 規則ですから!」

子供達「何だよ! 聞いてないよ!」

キヨ「今日は 帰って!」

母親「帰りなさい!」

日出子「ほら ご覧なさい! こんな所に 出入りしてるもんですから 大人の言いつけに 従わないようになるんですよ!」

母親「しつけの妨げですわね!」

父親1「漫画なんか 読んでるから 子供が バカになるんだ! あんたら 貸本屋は 金のためなら 何でも貸すのか?!」

美智子「そんな…。」

政志「勝手な事 言うな!」

布美枝「政志さん…。」

政志「お前ら… よってたかって!」

父親「何だ あんたは。 失敬だぞ!」

政志「何すんだよ! おい!」

(もみ合う人達の声)

美智子「やめて~! やめて下さ~い! お願いですから やめて下さい!」

警官「どいて! どいて はい! 何の騒ぎですか?」

布美枝「あ… お巡りさん。」

(もみ合う人達の声)

警官「静かにしなさ~い!」

(子供の泣き声)

キヨ「えっ!」

布美枝「あっ…。 大丈夫?」

子供6「痛いよ~!」

布美枝「大丈夫?」

美智子「どこが痛いの? あら 膝が!」

(子供の泣き声)

美智子「わあ ごめんね! 痛かったねえ。 ごめんね…。」

(子供の泣き声)

美智子「ごめんね。」

<幸い 子供の けがは 軽い打ち身と擦り傷でした。 駆けつけた警官の計らいで 事件に ならずに 済んだのですが…>

田中家

キヨ「どういうつもりだい? あんたが しゃしゃり出たせいで 騒ぎになっちまったじゃないか。 子供のけが 大した事なかったから よかったようなものの…。 騒ぎに ならないようにね 美智子は ぐっと 我慢してたんだよ! それを 何だい! 知らんぷりしてないで 店の片づけ 手伝ったら どうなんだ!」

政志「痛えな 何すんだよ!」

キヨ「『商売の邪魔されて 腹が立った』なんて 言わせないからね。 え~?! あんたね 一度だって この店のために 働いた事は ないんだから! 全部 美智子じゃないか! 店の仕事も やりくりも… みんな美智子に押しつけて!」

美智子「おばあちゃん… もう。」

キヨ「お巡りさんまで来て…! もう これで うちの評判は がた落ちだ。 あんた この店 つぶす気かい?!」

布美枝「すいません… 私が 余計な事したから。 メダルなんか 作らなきゃよかったんです。 あの人達 怒らしてしまって…。」

美智子「何言ってるの。 布美枝ちゃん うちのために 一生懸命 やってくれたんじゃない。」

キヨ「そうだよ。 布美枝ちゃんが 責任 感じる事はない。 考えなきゃ いけないのは あんただよ 政志! こういう時に ビシッとしないでどうすんだ! 昔のあんたは こんなんじゃなかったよ…。 電気工してた頃の あんたは 働きもんで 頼りになった。 それが… 今じゃ まるで ふぬけだよ!」

政志「あ~ うるせえ うるせえ うるせえ!」

キヨ「そうやってね グダグダしてるくらいなら 千葉へでも何でも行って 電気工の 仕事 したらいいじゃないか!」

政志「電気工に戻るつもりねえから。」

美智子「お茶でも いれようか? お客さん もう来ないだろうし 店 閉めて…。」

キヨ「どうして ちゃんと 言わないんだ! 私に ばっかり言わせて…! 女房だろ。 たまには 『しっかりしろ』って ハッパかけたら どうなのさ!」

美智子「おばあちゃん…。」

キヨ「あんたがね いつまでも そうやって 遠慮してたら かえって 政志のために よくないんだよ。 どうして それが 分かんないのか?!」

客「すいません お願いします。」

キヨ「お客さんだよ。 お客さん!」

客「お願いしま~す!」

美智子「…は~い。」

キヨ「はあ 美智子も かわいそうに…。 よく分かってるんだよ。 美智子の気持ちは。」

布美枝「おばあちゃん…。」

キヨ「政志に すまないと思ってんだよ。 シベリアに行ってる間に 子供を 死なせてしまった事…。 ずっと負い目に思ってて…。 ふがいない亭主に 強い事 言えないんだよ。」

布美枝「病気だったんですよね 子供さん。 腸チフスで亡くなったって…。 だったら 美智子さんの せいじゃないのに。」

キヨ「何度も 言って聞かせたよ。 『あんたのせいじゃない』って。 それでも… 自分を責めちまうんだろうさ。 母親だから…。」

回想

美智子「どうしたの? こんな物。」

政志「これ食って 元気な子供 産んでくれ。」

回想終了

布美枝「美智子さん…。」

キヨ「でもねえ…。 美智子が 自分を責めてるうちは 政志だって 救われないよ。 どうしたら いいかねえ…。」

<店に警官が来る騒ぎから 1か月…>

こみち書房

子供7「今日 漫画の発売日だね 本屋さんに買いに行こう!」

子供8 9「うん! あれ楽しみなんだよねえ!」

子供たち「早く読みたいね。 早く行こう! うん!」

<こみち書房を訪れる客は 目に見えて減っていました>

水木家

(小鳥の鳴き声)

居間

茂「おい。 おい 出来たぞ。」

布美枝「あ はい。」

茂「何度も声かけとるのに。」

布美枝「ああ すいません。 夢中になっていて。」

茂「あ~ 『勲章』か。 これ よう描けとるだろう?」

布美枝「はい。 勲章や肩書に みんなが コロッと だまされる話…。 何べん読んでも なるほどなあって。」

茂「うん。 『ゼタ』は 大人の読者も多いけん これくらい 毒が効いとった方が ええんだ。 ほれ 次号の原稿。 深沢さんに 届けてくれ。」

布美枝「あ…。」

茂「俺は 仕事が あるけん。」

布美枝「はい。」

茂「これも 面白いぞ!」

玄関

(犬のほえる声)

子供達「きゃ~! 怖いよ! 野良犬だ! 逃げろ~!」

(犬のほえる声と 子供達の騒ぐ声)

茂「おい。 この間から 野犬が うろついとる ようやけん 気をつけて行けよ。」

布美枝「はい。」

茂「うん。」

布美枝「行ってきます…。」

茂「おう。」

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