ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第89話「チャンス到来!?」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、はるこ(南明奈)を連れて深大寺を訪れた。はるこは布美枝に、茂(向井理)は布美枝がいるから、漫画に打ち込めるのだと言う。布美枝は、はるこの茂への秘めた思いを感じる。はるこが東京を去った後、浦木(杉浦太陽)が布美枝たちのもとにやって来て、「なぜ、はるこが去ることを自分に知らせなかったのか」と茂をなじる。ばたばた騒ぎのなか、雄玄社の豊川(眞島秀和)が村井家を訪ねてくる。

89話ネタバレ

深大寺

はるこ「おいしい!」

布美枝「境港のお父さん この間 それ 5つも食べたんですよ。」

はるこ「先生の甘い物好きは お父さんに 似たんですね。」

布美枝「なんとかなる主義と 食いしん坊は お父さん譲りです。」

(うぐいすの鳴き声)

はるこ「いいところですね。 深大寺。 こんなに すてきだと知ってたら もっと 早くに来たのにな。」

布美枝「うちの人も 自転車で よう来るんですよ。 深大寺とか この近くのお墓とか。」

はるこ「お墓ですか? やっぱ 他の人とは違うな。 先生の発想のもとって そういうとこにあるんですかね?」

布美枝「私には よう分からんです。 あの人の頭の中の事ですから。」

はるこ「この間は ごめんなさい。」

布美枝「え?」

はるこ「私 ひどい事 言ってしまって。」

布美枝「そのとおりかもしれんって 思いました。」

はるこ「え?」

布美枝「毎日 家の事して 藍子の面倒見て。 時々 少しだけ 仕事の手伝いして。 私がしとるの それだけですもんね。 うちの人と一緒に 考えたり 悩んだりもできんし。」

布美枝「漫画のヒントになるような 面白い話もできん。 ただいるだけで 何の役にも 立っとらんのかなって 自分でも思う事あります。 あ それ…。」

はるこ「え?」

布美枝「持って帰るんなら…。 こうした方が…。 花が もちますよ。」

はるこ「私 本当は 分かってるんです。 布美枝さんでなきゃ ダメなんです。」

布美枝「え?」

はるこ「布美枝さんが奥さんだから 先生は 安心して 漫画に 打ち込めるんだと思います。」

布美枝「どうかな? 私がおらんでも この人は ちっとも 困らんのだなあって 思う事もあります。」

はるこ「先生は 考えた事 ないんじゃないですかね。 布美枝さんが いなくなるなんて。 だって 布美枝さん この花みたいですもの。」

布美枝「この花?」

はるこ「いつも そこにあって 目立たないけど よ~く見ると かれんな花が咲いてる。 それでいて 根っこは しっかり たくましく伸びてるんです。 布美枝さん ナズナみたい。 だから 先生 安心して 一緒にいられるんですね。」

布美枝「雑草の代表ですけんね。 うちの人は ちょっこし 変わっとるし 貧乏だし 雑草でないと とても 一緒には やっていけません。」

はるこ「雑草じゃありません。 野の花です。 あれ? これ お宅にもありましたよね?」

布美枝「ここに最初に来た時 買ってもらったんです。」

はるこ「最初に来た時って 先生とですか?」

布美枝「え? ええ。 はい!」

回想

茂「ええとこが あるんですよ。」

茂「買いましょうか?」

布美枝「え?」

茂「気に入ったようだから。」

茂「よく見ると これは ハート型ですな。」

布美枝「フフフ!」

回想終了

はるこ「それから 少しずつ 作ってきたんですね。 2人の暮らし。 それは かなうはずないな。」

布美枝「え?」

はるこ「私 先生の事を 好きだったんです。 あ! 変な意味じゃなく 先生の描く漫画が好き。 先生の漫画に懸ける情熱が好き。」

布美枝「はるこさん。」

はるこ「それから…。 先生のご家族が好き。 先生と布美枝さんの関係 うらやましいです。」

<先生が好き 先生の事が好き…。 はるこの笑顔から 胸に秘めた 本当の思いが あふれ出していました>

はるこ「すいません! これ 下さい!」

店員「ありがとうございます。 万葉集の歌をもとに 作ったものなんです。」

<それは 気づいても どうにもならない思いでした。 布美枝は そっと受け止めて 胸にしまう事にしたのです>

はるこ「私 また頑張ります!」

布美枝「はい。」

嵐星社

深沢「じゃあ これ 預からせてもらうよ。」

青年「よろしく お願いします。」

深沢「また持っといで 期待してるから。」

青年「はい! ありがとうございます!」

深沢「うん。」

青年「失礼します。」

深沢「はい。 これ 次の号に載せよう なかなか ユニークで面白い。」

郁子「はい。 河合さん 実家に戻られるんですね。」

深沢「うん 惜しいけどなあ。」

郁子「こうやって 次々 新しい書き手が 出てくるんですね。」

深沢「よし そろそろ 始めるか 新人賞。」

郁子「新人賞? コンクールですか?」

深沢「ああ。 若い人のために 発表の場を 作るのも 雑誌の仕事だからな。 少年誌には 載らない 実験的な作品も うちなら 紹介できるし。」

郁子「ええ。」

深沢「俺も出会いたいしね もっともっと 新しい才能に。」

水木家

玄関前

(犬のほえる声)

浦木「うわ~! はるこさ~ん!」

居間

浦木「はるこさんが消えてしまった~!」

茂「泣くなよ。」

浦木「(泣き声) うるさい。」

茂「ほれ。」

浦木「ありがとよ! どこへ行ってしまったんだろう? 天へ帰ってしまったんだろうか? 月へ戻ってしまったのか?」

布美枝「話した方がええですよ。」

茂「うん。 あのな 天でも月でもなくて 実家に戻ったぞ。」

浦木「え?」

茂「山梨の親元。」

浦木「何?」

茂「漫画は 3年の期限つきだったそうだ。 時間がないと焦っとったのは そういう訳だ。」

浦木「お前 それ 知ってたのか?」

茂「ああ 帰る前に挨拶に来たけん。」

浦木「なぜ 止めなかった!」

茂「おう 何だ 何だ?」

浦木「知っていながら みすみす はるこさんを!」

茂「落ち着け!」

浦木「だら! これが 落ち着いておられるか! なぜ すぎに 俺に知らせんだった! 友達がいのない奴め!」

茂「友達じゃない!」

浦木「はるこさんも はるこさんだ! なぜ 俺のとこに 来てくれない!」

布美枝「会ったら かえって 別れが つらくなりますけん。 ね? それで 浦木さんの所には 行けなかったんですよ。 『よろしく伝えて下さい』って はるこさんが…。」

浦木「本当ですか? 奥さん。」

布美枝「え ええ。」

浦木「はるこさんが そんな事を…。」

布美枝「ええ… まあ。」

浦木「何という いじらしい 女心だろう。」

浦木「(すすり泣き)」

藍子「どうしたの?」

浦木「しっ しっ! この胸の痛みは 子供には 分からん。 ほれ ほれ!」

藍子「あ~!」

布美枝「あ~ あ~ あ! 浦木さん 意外に純情なんですね?」

茂「うん。」

浦木「もう 二度と会えないのかなあ。 はるこさ~ん!」

茂「俺は もう知らん。 仕事する。」

浦木「つきあえ!」

茂「え?」

浦木「飲みに行くぞ お前も来い。」

茂「え~?」

浦木「失恋の痛みは 酒で流すしかない。 友達だろう お前も来い!」

茂「だら言うな 俺は 酒は飲めん。」

浦木「いいから つきあえ!」

茂「押すな 俺は仕事だ 時間がない!」

浦木「お前がないのは 金だろ? 今日は 俺が おごってやる。 行くぞ!」

玄関

茂「おごるって いらん! 離せ! 俺は 戌井さんとこの 締め切りがあるんだ!」

浦木「お前は 親友の俺より 仕事の方が大事なのか!」

茂「当たり前だ!」

浦木「薄情な奴!」

豊川「あの~」

豊川「こちら 水木しげる先生の お宅でしょうか?」

2人「はい。」

豊川「よかった。 迷って うろうろしてしまいましたよ。」

浦木「あんた 誰?」

豊川「私 雄玄社の豊川といいます。」

浦木「ユウゲンシャ? え? あの大手出版の雄玄社?!」

豊川「『週刊少年ランド』の 編集をやっている者ですが。 水木先生に お話があって伺いました。 今 取り込み中ですか?」

浦木「いや 取り込みというほどの事では。」

豊川「突然 伺って恐縮なのですが 少々 お時間を 頂けますでしょうか?」

浦木「ちょっと飲みに行くとこなんです。」

茂「お前 どいてろ! あの…。」

豊川「はい。」

茂「水木は 自分ですが。」

豊川「えっ? あなたが 水木先生?」

茂「はい。」

仕事部屋

豊川「大変 失礼しました。 先生の 戦記物は 拝読していたのですが 片腕を無くされている事は 存じませんでした。」

茂「いや かまいませんよ。 それで 話というのは?」

布美枝「失礼します。」

豊川「『少年ランド』に…。 『別冊少年ランド』に 漫画を お願いしたいのです。」

布美枝「え?」

茂「ん?!」

浦木「おっ?」

茂「何しとる?」

布美枝「あ…。 どうぞ。」

豊川「これ うちの雑誌です。 それと カステラ。 お口に合えばいいんですが。」

茂「ああ 大好物です。」

布美枝「すいません。 ちょうだいします。」

浦木「奥さん 奥さん ちょっと! 雄玄社といえば 日本で一二を争う 大手の出版社ですよ。」

布美枝「はい。」

浦木「ゲゲの奴 失礼な事 言って 失敗しやせんかな。 よし こうなったら 俺が マネージャーとして。」

布美枝「浦木さんは ええですけん!」

浦木「何で?」

布美枝「お父ちゃん しっかり!」

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