ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第9話「ご縁の糸」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】9話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)の父・源兵衛(大杉漣)は、新たな店舗を出すことを計画。商売の手を広げすぎることで家業が不安定になることを望まない登志(野際陽子)は、源兵衛と鋭く対立。その登志が脳こうそくで倒れ、予断を許さない状態に…。布美枝は源兵衛の口から登志が夫を亡くしたのち、独学で商売や読み書きを学んだことを初めて聞く。病状を心配する布美枝だったが、床についたままの登志は逆に布美枝に励ましの言葉をかける。

9話ネタバレ

飯田家

居間

登志「ええ年して また 何をしようと言うんだ? 炭焼き 荒物屋 小間物屋 刀研ぎ… あれこれ 手ぇつけては 何べんも しくじっとるでね~か。」

源兵衛「ハチミツは 成功しとる。 この店も 酒屋にしたから なんとか なっとるんだろうが。 昔ながらの呉服屋だったら とうに つぶれとるわ!

登志「それで もう ええ事にせえ。 余計な事に手ぇ出して この家 手放すようなまねは 絶対に 許さんけんね!」

源兵衛「ふん!」

布美枝「ただいま。」

源兵衛「布美枝…! 背筋 しゃんと伸ばせ!」

布美枝「機嫌悪いな。 お父さん どげしたの?」

登志「あれの事業欲にも 困ったもんだ。」

ミヤコ「はい。」

登志「今度ばかりは 承知できんわ。 ご先祖様に 申し訳たたんけん。」

台所

布美枝「この うちが 人に取られる いう事?」

ミヤコ「そげな事には ならんと思うけど。 米子に 大きな酒屋の出物があってな そこを買わんかと もちかけられとるんだって。 お金のいる話だけん… この家を 担保にしてでもって お父さんが言うもんだけん。」

布美枝「うちが 借金のかたになる いう事?」

ミヤコ「お父さんも ええ加減 落ち着いて くれたら ええのにね~。」

居間

源兵衛「好きに やらせてくれたら ええものを いつまでも わしのする事に 口を出してからに。 おばばは 頑固でいけんわ!」

<源兵衛には 様々な事業に 手を出しては 家族を 振り回すところがありました。 その虫が また 騒ぎだいたようなのです>

登志の部屋

登志「どうか… あれが むちゃな事せんように。」

<そんな もめ事があってから 数日後の事でした>

布美枝「おばば ご飯 出来たよ。 おばば? どげしたの?! おばば しっかりして! おばば!」

廊下

医者「今日 明日 いう事では ないけども 年が 年だけん 油断は できんですよ。 覚悟だけは しとって下さい。」

<医者の見立ては 脳梗塞でした>

ミヤコ「よっ。」

ユキエ「おばば 眠っとった。」

ミヤコ「倒れてから ず~っと うつらうつら しとられるわ。 時々 はっきりする事も あ~だけどね。」

ユキエ「もう… このまま いけんだろうか…。」

ミヤコ「あんたは もう ええから うちに帰りなさい。 子供 ほうっておいたら いけん。」

ユキエ「うん。 言ったら けんかもしれんけど。」

ミヤコ「うん?」

ユキエ「フミちゃんが まだ 嫁に行かずに 家に おってくれて こげな時は ほんとに助かると思うわ。」

登志の部屋

布美枝「お父さん 寒くないかね? お父さん。」

源兵衛「ああ。」

布美枝「それ 何なの?」

源兵衛「昔の店の大福帳だわ。 わしも知らんかったが おばばは ずっと大事に 持っておったんだな。 これ 見てみ 下手くそな字だろ。 まるで 子供のなぐり書きだが。」

布美枝「ほんとだ。 これ お父さんが書いたかね?」

源兵衛「いいや… おばばだ。」

布美枝「えっ 信じられん。 おばばは 達筆なのに。」

源兵衛「おばばは… 嫁に来た頃は 商売の事は まるで分からんし 読み書きも よう できんだった 言っとったわ。 女には 学問のいらんいう 時代の話だけんなあ。」

源兵衛「わしのおやじが早(はや)こと 亡くなってしまったけん おばば わしを育てながら 家の事して 呉服屋の切り盛りもして 子供の頃 夜中に目を覚ますとな…。 おばば一人で 手習いしとった。 えらい真剣な顔でな 声が かけられんだった。 偉いもんだのう。 独学で こげに きちっとした帳面を つけられるまでになったんだけん。 偉いもんだのう。」

数時間後

登志「布美枝 布美枝。」

布美枝「おばば 気がついたかね?」

登志「どげしただ? そげな暗い顔して。 そげな顔しとると ええ ご縁も逃げていくぞ。」

布美枝「何 言っちょ~ね? 具合は どげなかね?」

登志「久しぶりに 話 聞かせてや~わ。」

布美枝「え?」

登志「『とんと昔が あったげな。 飯田のおばばがな ちょっこしの間 あの世へ行って ご先祖様に お伺いしてきたげな』。

登志「『孫の布美枝が 嫁入り先が ね~のではと案じておるが どげでしょうか?』。『ご先祖様はな【布美枝は のっぽで ちょっこし内気だなあ。 だども 気持ちの優しい ええ子だけん いつか きっと ご縁のある所に導いてあげる】そげ 言っとらしたげな』。こっぽし。」

布美枝「おばば…。」

登志「お前の事はな おばばが ず~っと見守っとるけんな。 布美枝ちゃんに ええご縁がありますように。」

布美枝「おばば…。」

<私が布美枝と話したのは この夜が 最後となってしまったのです>

<私が あの世に旅立ち 四十九日も済んだ ある日…>

廊下

布美枝「お父さん…? あ お父さん こんな時間に どっか行くんだろうか?」

ミヤコ「何も聞いとらんけどね…。 じき 晩ご飯だけん ちょっこし見てきてごしない。」

布美枝「うん。」

布美枝「もう お父さん どこ行ったんだろう? あ…。 お父さん 何してるの? 精霊船(しょうろうぶね)? お盆でもないのに? それ おばばの古い帳面でしょう?」

源兵衛「ああ。」

布美枝「なして 流してしまうの?」

源兵衛「おばばに送ってやろう 思ってな。 手もとにあった方が 安心するだろう。」

回想

登志「ご先祖様の魂は 船に乗って 川を下っていくんだよ。」

回想終了

布美枝「おばばのもとに届きますように。」

飯田家

ミヤコ「大根 今年も そろそろ 漬けんといけませんねえ。 もう… おらっしゃらんでしたねえ。(すすり泣き)」

源兵衛「布美枝 わしなあ… おばばに すまん事したわ。 最後の最後に 心配かけた。 わしは… だらず息子だ。 すまんな おばば。 家は 必ず守るけん。 手放すようなまねは 決して せんけん。(むせび泣き)お母さん…。(号泣)」

<布美枝は 父が 声を上げて泣く姿を 初めて見たのでした>

モバイルバージョンを終了