あらすじ
『王子と乞食』の翻訳を完結させた花子(吉高由里子)をねぎらうため、聡文堂で祝賀会が催される。その席で、醍醐(高梨臨)が退職することと、村岡印刷が平祐(中原丈雄)から英治(鈴木亮平)へ代替わりすることが発表される。郁弥(町田啓太)は『王子と乞食』を単行本化してはどうかと梶原(藤本隆宏)に提案し、皆は夢を膨らませる。また、かよ(黒木華)に思いを寄せる郁弥は、ある“計画”を花子と英治に打ち明け…。
105回ネタバレ
葉山邸
花子「もし 希望を見失いそうになったら 想像の翼を広げてみて。」
蓮子「え…?」
花子「親子3人で 幸せに暮らす日の事を 思い浮かべるの。」
村岡家
郁弥「かよさんは ベイビーの世話も手慣れたものですね。 理想のお嫁さんだ。」
(歩の声)
醍醐「かよさんと郁弥さん 何だか 最近 いい雰囲気よね。」
花子「そうね。」
<それから 1年がたとうとしておりました。>
1923年(大正12年) 夏
書斎
花子「『「余と余の民は知っている。 そちは 知らぬ」。 私たちは この言葉を覚えて 彼の名を賛美しよう』。 はあ… 終わった…。」
<『王子と乞食』の翻訳が とうとう 完成しました。>
聡文堂
<花子の『王子と乞食』の翻訳が 完結した事を祝って ささやかなパーティーが開かれました。>
梶原「皆さん! この『にじいろ』秋号をもって 創刊号から連載してきた 『王子と乞食』の翻訳が ついに完結となりました。 翻訳者の村岡花子先生 本当にご苦労さま。」
花子「皆さん 本当に ありがとうございました。」
梶原「それから 挿絵を描いてくれて その縁で結婚した村岡英治君 『王子と乞食』の原書を 提供してくれた村岡郁也君にも 感謝します。 児童文学界に新風を吹き込むべく 聡文堂を設立して 4年。 この『にじいろ』が ここまで続いた事 心より感謝しています。 これからも 皆さん どうぞ 力を貸して下さい。 では 乾杯!」
一同「乾杯!」
(拍手)
梶原「え~ 皆さんに もう一つ 報告があります。 醍醐君。」
醍醐「はい。」
梶原「この度 醍醐君が 退職する運びとなりました。」
花子「てっ!」
三田「えっ ちょ…! まさか ようやく 結婚相手が見つかったのか?」
醍醐「違うんです 三田さん。 挑戦してみたい新しい道が 見つかったんです。」
須藤「新しい道?」
醍醐「私 世間がまだ知らない 本当の嘉納蓮子の姿を 書いてみたいんです。」
三田「それを書いたあとは どうする訳?」
醍醐「それは… まだ分かりません。 でも 書きたいという このドキドキ… パルピテーションを 今は 大切にしたいんです。」
梶原「引き継ぎが終わるまで まだ しばらく いてもらうが みんな よろしく。」
須藤「何で三田君が聞落ちしてるの? えっ もしかして そういう事!?」
醍醐「残りの日々も 編集者として 精いっぱい働きますので よろしくお願い致します。」
(拍手)
梶原「それと 村岡印刷さんからも 発表があります。」
平祐「英治。 郁弥。」
英治「はい。」
花子「頑張って。」
英治「うん。」
平祐「この度 村岡印刷の代表を 長男の英治に譲る事にしました。 これからは 英治が社長 郁弥は専務取締役として 務めますので 皆様 どうぞ 今後とも よろしくお願いします。」
英治「え~… 皆さん。 私も弟も まだまだ じゃくしゃい… じゃくひゃいもの…。」
(笑い声)
英治「ああ すいません…。」
郁弥「兄さん リラックス! 深呼吸して。」
英治「(深呼吸) 皆様。 私も弟も まだまだ 若輩者ではございますが 多くの読者の記憶に残る本を 一冊でも多く印刷するよう 精進していく所存です。 どうぞ ご指導 ご鞭撻を よろしくお願い致します。」
郁弥「よろしくお願い致します。」
(拍手)
英治「ありがとうございます。 頑張ります。」
花子「歩。 パパ とっても立派ね。」
歩「りっぱ。」
花子「立派。」
郁弥「あっ! I’ve got an idea!」
英治「何だよ 急に びっくりするじゃないか。」
花子「郁弥さん。 何? いい考えって。」
郁弥「『王子と乞食』を一冊の本にしませんか?」
醍醐「単行本を出版するのね。 これだけ好評なんですもの いい案だわ。 梶原さん いいですよね。」
(笑い声)
かよ「お姉やん すごいじゃん!」
花子「痛い…。」
英治「花子さん 夢じゃないよ。」
郁弥「兄さん。 装丁に工夫を凝らして 今までの日本にない 美しい本にしようよ。 イギリスに負けないくらい!」
英治「そうだな。 やってみるか!」
郁弥「うん。」
花子「これからも どんどん 夢のある 童話を翻訳していきますので よろしいくお願いします! 社長!」
英治「社長は やめてくれよ。」
歩「しゃちょ。」
英治「歩まで!」
(笑い声)
英治「社長は やめてくれよ~!」
平祐「花子さんは いつまで 仕事を続けるつもりなんだ…。」
郁弥「父さんこそ いつまで そんな事 言ってるんだよ。」
平祐「お前は ちゃんと家に入る女性と 結婚しなさい。」
郁弥「僕は 出会った瞬間から かよさんと結婚するって 心に決めてますから。」
花子「郁弥さん?」
郁弥「あっ…。 ちょっと いいですか? (小声で)実は 明日 求婚するつもりなんです。」
花子「てっ! 明日?」
郁弥「明日は 彼女のバースデーですよね。」
花子「ええ。」
郁弥「だから かよさんが カフェーで 働いているところに サプライズで」
花子「ああ…。」
郁弥「たとえ 父さんが反対しても 僕の決心は揺らぎませんから。」
平祐「反対なんかしないさ。 あの子はいい。 家事も手際もいいし 料理もうまい。 何より働き者だからな。」
郁弥「ワンダフル! 賛成してくれてよかった。」
郁弥「ただし 結婚式は 東京で挙げろ。」
郁弥「えっ…。」
平祐「また 甲府で挙げる気なら 『異議あり!』と言って 暴れてやるぞ。」
郁弥「またですか。 かよさんには 明日まで黙ってて下さいね。」
花子「ええ。 郁弥さん 頑張って!」
郁弥「はい。」
村岡家
縁側
花子「歩 やっと寝たわ。 明日 郁弥さん うまくいくといいわね。」
英治「ああ。」
(風鈴の音)
英治「花子さん。 母の形見なんだ。」
花子「すてきなカメオ…。」
英治「これは 一度 香澄が母から受け継いだもので 彼女が亡くなる前に 郁弥に託したんだ。 郁弥が僕にくれたんだ。 花子さんに渡すようにって。 あの時 郁弥が背中を押してくれたから 僕は 君と歩と こんなに幸せな家庭を持てた。 これ… 花子さんに持っていてほしい。」
花子「ありがとう。 大切にします。」
カフェー・ドミンゴ
玄関前
郁弥「よし。」
ホール
かよ「いらっしゃいませ。 コーヒーでいいですか?」
郁弥「えっ あっ… はい。」
郁弥「(小声で)あなたは 僕の女神だ…。」
郁弥「あなたは 僕の…。 えっ!? あっ 早っ…。 ちょちょちょ…。」
女給「いらっしゃいませ。」
郁弥「少し早いけど… いいか。 よし!」
(時計の音)
郁弥「かよさん。 ハッピー バースデー! お誕生日おめでとう!」
♬~(バイオリン)
かよ「てっ!?」
郁弥「かよさん。 あなたは 僕の女神です。」
かよ「てっ…。」
郁弥「僕と… 結婚して下さい。 かよさん!」
(拍手)
「いよっ ご両人!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
郁弥「かよさん?」
かよ「郁弥さんの… バカっちょ!」
郁弥「かよさん!? あっ…。」
<郁弥さん やっちまいましたね。 ごきげんよう。 さようなら。>