ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第107回「涙はいつか笑顔になる」【第18週】

あらすじ

関東大震災から三日後、行方不明だったかよ(黒木華)を連れて、英治(鈴木亮平)が大森の家に戻って来た。花子(吉高由里子)はかよに駆け寄り抱きしめるが、かよはうつろな様子で放心したまま。家の中で花子と平祐(中原丈雄)は、英治の口から信じがたい事実を告げられる。一方甲府では、徳丸(カンニング竹山)の家に吉平(伊原剛志)やふじ(室井滋)らが駆けつけ、一向に安否の分からない花子たちの身を案じていた…。

107ネタバレ

村岡家

花子「歩…。 歩?」

花子「お義父様?」

平祐「ここだ…。 歩は 無事か!?」

花子「はい!」

<大地震で 東京の中心部は 恐ろしい被害を受けましたが 大森の村岡家は 幸い 倒壊を免れました。>

玄関前

花子「かよ? かよ… 無事だっただけ! お帰り…。」

<かよを捜しに行った英治が 大森のうちに戻ったのは 震災から3日後の事でした。>

花子「かよ… 心配しただよ。 郁弥さんは?」

かよ「お姉やん…。 郁弥さん… 結婚して下さいって 言ってくれたさ…。」

花子「そう… よかったね。」

かよ「おら… うれしかった…。」

花子「かよ?」

かよ「郁弥さん… おらの事 女神だって言ってくれた…。 ほれなのに… おら 恥ずかしくって 店 飛び出しちまったさ…。」

花子「2人とも… とにかく 中に入って。 疲れたでしょう。」

英治「さあ… かよさん。」

かよ「おら… 何で 『はい』って 素直に言えなんだずら…。」

居間

平祐「おお… よかった…。 無事だったか!」

英治「父さん…。 郁弥が… 火災に巻き込まれて… 郁弥は 逃げきれませんでした…。」

平祐「何かの間違いだろう…。 ひ… 人違いじゃないのか?」

花子「そんな…。」

寝室

居間

英治「火災が ようやく収まったって 聞いて 銀座に向かったんだ。 銀座の町は 見る影もなく 辺り一面 すっかり燃えてしまっていた。 かよさんと君が住んでいた長屋も 跡形もなかった。」

英治「郁弥とかよさん… どこかに避難してるんじゃないかと思って 避難所を一つずつ 回っていったんだ。 新橋 京橋 日本橋辺りまで 捜しに捜して ようやく 築地のお寺で かよさんを見つけたんだ。」

花子「お寺で?」

英治「そのお寺で… 郁弥が埋葬されるのを 見届けてくれたようだ。」

平祐「郁弥は… 本当に逃げ遅れたのか? そんな事 どうして分かるんだ? もう一度 捜しに行く! 今度は 私も行く。」

英治「父さん…。」

平祐「捜してみなきゃ 分からないじゃないか! そうだ…。 会社の連中にも手伝ってもらおう。 郁弥がいないと困るだろう。 えっ? これから 村岡印刷 立て直すのに…。」

英治「父さん! 郁弥は もういないんです! あの一帯にいた人たちは みんな 助からなかったそうです…。 店の近くで かよさんは見つけたそうです。 郁弥の時計を…。 何もしてやれなかった…。」

(泣き声)

徳丸商店

<甲府では 花子たちの安否が 一切分からぬ状態で 皆が不安に暮れておりました。>

徳丸「おう。 呼びぃ行かしたのは ほかでもねえ。 震災のこんだけんど…。」

吉平「徳丸さん! 東京は どんな状況でえ? 大震災から3日たっても 新聞も届かんし 電報も打てんから 子どもたちの無事も分からん!」

朝市「役場でも 状況は 分からんみてえですし!」

ふじ「何でもいいから 教えてくりょう! 東京は… 大森は どんな様子ずらか!?」

徳丸「まあ 落ち着けし! その… 大森ってとこの状況は 分からんけんど 銀座や東京の東の方は 建物が倒れたあと ひでえ火事が起こって 辺り一面 焼け野原だとう。」

ふじ「てっ!」

吉平「てっ… 銀座が…。」

朝市「村岡さんの会社 銀座にあるじゃなかったけ?」

ふじ「かよの長屋もカフェーも銀座じゃん!」

徳丸「東京で地震に遭って逃げてきた うちの衆が ほう言ってるから 残念だけんど 恐らく ほうずら…。」

リン「ふじちゃん…。」

朝市「かよちゃん…。 はな…。」

リン「大丈夫さよ! 『便りがねえのは いい知らせ』っていうじゃんけ!」

武「お父様。 準備ができました。」

徳丸「おう。 東京は ほんな ひでえ状況だ。 きっと みんな 食うに困ってるはずだ。 これっから 東京のお得意さんとこに この物資を届ける。」

吉平「徳丸さん… おらたちも行かしてくりょう! 子どもたちの無事を 確かめてえだ!」

ふじ「徳丸さん! おらも連れてってくりょう!」

徳丸「ふじちゃん。 ここは 男しに任しとけし!」

朝市「ほれなら おらも行く!」

リン「朝市は 学校があるら! 生徒ほったらかして 行く訳にゃあ…。」

徳丸「こんな時だ。 わしから校長に 言っとくから 行ってこうし。」

朝市「徳丸さん ありがとうごいす!」

リン「ありがとうごいす!」

武「ふんじゃあ みんな 無事でな!」

徳丸「武! おまんも行くだ!」

武「てっ!」

村岡家

<東京では 救援活動に携わる吉太郎が 村岡家に立ち寄っていました。>

英治「お義兄さん ありがとうございました。」

吉太郎「いえ。」

花子「兄やん 戻らんでいいの?」

吉太郎「そろそろ行く。 ほうか…。 郁弥さんがな…。 はな。 かよを頼むぞ。」

花子「うん。」

英治「あの子たちの親は まだ 安否が確認できないのか。」

花子「ええ… みんな どこかに 避難しててくれればいいんだけど。」

フミ「ねえ また お話聞かせて。」

花子「あ… フミちゃん ごめんね。 今 ちょっと…。」

英治「お話 してあげなよ。」

居間

花子「『昔 ある所に あんまり泣くので ナミダという名を付けられた 小さい娘がありました』。 『ナミダさんは カエルに言いました。 『何だって 私についてくるのよ?』。 『なぜかと言えば もうじき お嬢さんの周りに 涙の池が出来るだろうと思いましてね』。 ナミダは なお一層 泣きだしました。 『よして下さい! よして下さい!』。 カエルは 夢中になって 飛び回りました。 『そんなにお泣きになると 大水が出ます』。 なるほど ナミダは ちょっと泣くのをやめて 辺りを見回しますと 水は 一刻一刻に 増しておりました』。」

フミ「ナミダさん 泳げないんだよ!」

花子「そうなの! 『ナミダは 泳げなくて 困って また泣きだすのです。 『私を この島から 出してちょうだい』。 カエルは ナミダに こう言いました。 『この島から抜け出す道は 一つしかありません。 笑うんです』』。 さあ ナミダさんは 笑えるかな?」

かよ「笑える訳ないじゃんけ。」

玄関前

二日後

朝市「この辺りは だいぶ 無事みてえですね!」

吉平「ああ。 はな… かよ… 無事でいてくりょう!」

朝市「せ~の!」

武「まだけ~? おら もう駄目どう。 一歩も歩けねえ…。」

吉平「もう すぐそこじゃん! お~い! はな! 無事け~!?」

花子「てっ! おとう!」

英治「お義父さん! 朝市さんも! 来てくれたんですか!」

朝市「英治さん! はな!」

花子「朝市!」

武「ああ 無事だっただけ はなたれ!」

花子「武!」

吉平「よかった! 無事で… 本当よかった!」

花子「おとう…。」

<吉平たちがやって来たのは 地震から5日後の事でした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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