ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第108回「涙はいつか笑顔になる」【第18週】

あらすじ

吉平(伊原剛志)、朝市(窪田正孝)、武(矢本悠馬)が甲府から運んできた救援物資で、花子(吉高由里子)たちはほうとうを作り、近所の人たちを元気づけようとしていた。そこへ醍醐(高梨臨)も現れ、活動に参加する。しかしかよ(黒木華)は、ショックから立ち直れないまま。花子は、親の消息が分からず預かっている子どもたちにお話の語り聞かせをつづけ、それをぼんやり聞いていたかよに、朝市が声をかける…。

108ネタバレ

村岡家

居間

英治「火災に巻き込まれて… 郁弥は 逃げきれませんでした…。」

平祐「人違いじゃないのか?」

花子「そんな…。」

花子「『『この島から抜け出す道は 一つしかありません。 笑うんです』』。 さあ ナミダさんは 笑えるから?」

かよ「笑える訳ないじゃんけ。」

<そんな かよに 何も言えない花子でした。>

玄関前

吉平「よかった…。 無事で… 本当によかった! おお かよ!」

朝市「おじさんも おばさんも 本当に心配してただよ!」

吉平「本当に みんな無事でよかった! かよ…。」

花子「おとう。 おらたちは 無事だったけんど 郁弥さんが…。」

吉平「かよ…。」

「ありがとう。」

英治「どうぞ!」

花子「皆さん! たくさん ありますから 召し上がって下さいね。」

「ほうとう お代わり!」

花子「どうぞ!」

醍醐「はなさん!」

花子「醍醐さん! 無事だったのね。」

醍醐「まあ 甲府の皆さんも ごきげんよう。」

武「て~っ!」

花子「醍醐さん ご家族は?」

醍醐「みんな元気よ。 でも 聡文堂の建物は すっかり崩れてしまって…。」

英治「梶原さんたちは…。」

醍醐「はい。 梶原さんも皆さんも ご無事です。 原稿や本は 全て燃えてしまったけど…。」

花子「あっ ねえ 醍醐さんも召し上がって。 おとうたちが 甲府から いろいろ持ってきて作ったの。」

武「醍醐さん どうぞ。」

醍醐「ありがとうございます。 頂きます。 おいしい!」

花子「よかった。」

朝市「こんな時こそ うまいもん食って 元気出しましょう!」

醍醐「私も持ってきたの。」

花子「えっ? まあ… おリボン?」

醍醐「私なら これが一番 元気が出ると思って。 女の子は きれいなものを見ると 元気が出るんですもの。 はい。」

花子「はい 正男君。 はい フミちゃん。 どうぞ。」

正男「頂きます。」

フミ「頂きます。」

花子「かよも ひと休みして食べろし。 ずっと食べてないじゃん。 倒れちもうよ。」

玄関前

花子「(ため息)」

朝市「かよちゃん…。」

醍醐「どうなさったの?」

台所

朝市「郁弥さんみてえに 明るくて楽しい人が ほんなこんになるなんて…。」

かよ「これも食べていいよ。」

正男「ありがとう。」

花子「かよ… まるで 感情を どこかに なくしてきてしまったみたいなの。」

フミ「ねえ おばちゃん。 また 『ナミダさん』の話 して!」

居間

花子「『『よして下さい! よして下さい!』。 カエルは 夢中になって 飛び回りました。 『そんなにお泣きになると 大水が出ます』。 なるほど ナミダが ちょっと泣くのをやめて 辺りを見回しますと 水は 一刻一刻に 増しておりました。 『それじゃあ 私を この島から出してちょうだいよ。 そうすりゃあ泣かないわ』。 すると カエルは こう言ったんです。 『この島から抜け出す道は 一つしかありません』』。」

フミ「笑うんだよ!」

花子「『カエルは ナミダに言いました。 『笑うんです。 笑いさえすれば 池も だんだんに水が引いてきて 私たちは 逃げられるようになります』』。」

朝市「笑えば 涙の池が小さくなるなんて はならしいじゃんね。 はなだって… 本当は 泣きてえ気持ちだろうに。 かよちゃん。 うちのおかあが いつか言ってただ。 おとうが死んじまった時 ここが ギュ~ッて 締めつけられるみてえで 苦しくて たまらなんだって。 明けても暮れても ただ 寂しくて苦しくて…。」

朝市「腹もすかんし… もう二度と笑えんて思っただとう。 ふんだけんど 人っちゅうのは やっぱり 腹はすくし 楽しい事がありゃあ 笑っちもう生き物だ。 けがが治るみてえに 自然と… 心のつらさも よくなる。 ふんだから かよちゃんも… きっと大丈夫だ!」

玄関前

醍醐「ほうとう まだありますから お代わりして下さいね。」

「ありがとうございます。」

蓮子「私にも ほうとうを頂けるかしら。」

花子「はい。 蓮様…。」

英治「龍一君!」

蓮子「はなちゃんも皆さんも よく ご無事で。」

龍一「その節は お世話になりました。」

花子「蓮様 もう 葉山様のお屋敷からは 解放されたのね。」

蓮子「龍一さんが 純平と私を 救い出しに来てくれたの。 想像の翼を広げて この日が来るのを待っていたのよ。」

<その日の夜の事でした>

玄関

「あの… こちらに うちの子たちが いるっていうのは 本当でしょうか!?」

かよ「はい。」

正男「父ちゃん!」

「正男! フミ! 無事でよかった…。」

フミ「父ちゃん 父ちゃん!」

「2人とも 遅くなってごめんな。 さみしかったろう?」

正男「さみしくなかったよ。 『ナミダさん』のお話 聞いてたから。」

かよ「よかった。」

台所

かよ「お姉やん…。」

花子「何? かよ。」

かよ「もう一遍だけでも いいから… 郁弥さんに会いてえ。」

花子「かよ…。」

かよ「郁弥さん あんなに すてきな求婚してくれたに おら… 恥ずかしくって 店を飛び出しちまったさ。 どうしても… 郁弥さんに伝えてえこんがあるだ。」

回想

郁弥「かよさん。 あなたは 僕の女神です。 僕と… 結婚して下さい。」

回想終了

かよ「はい…。 おらを お嫁さんにしてくれちゃあ。(泣き声)会いてえ…。 郁弥さんに会いてえ…。(泣き声)」

玄関前

吉平「かよ。 一緒に甲府に帰らんけ? 何なら この大八車に乗っけて 連れて帰るぞ。」

武「かよちゃん! ほうしろし。」

かよ「ううん。 大丈夫。 おら 東京に残って みんなと頑張る。」

吉平「ほうか。 分かった。」

かよ「おとう… ありがという。」

朝市「ほいじゃあ また。」

英治「本当にありがとうございました。」

吉平「ほれじゃあ また来るからな。」

花子「うん。」

吉平「よ~し! 武! 帰りは おまん一人で引けし!」」

武「てっ!?」

朝市「ほうじゃん!」

武「てっ!」

朝市「持てし! 早く引けし! 引けし 引けし!」

<かよの顔に 少しだけ ほほ笑みが戻りました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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