あらすじ
はな(山田望叶)が塀越しに吉平(伊原剛志)と再会して以来、ガス灯の下はふたりの秘密の待ち合わせ場所となっていた。そこへ夜な夜な聞こえてくるスコット先生(ハンナ・グレース)の美しい歌声に、聞きほれるはな。そんな折、富山(ともさかりえ)が「校長先生に英語で手紙を送る」という課題を出し、辞書も持っていないはなは困り果ててしまう。締め切り間近の日、スコットの部屋で掃除をしていたはなは、ある物を発見する…。
10回ネタバレ
修和女学校
ガス灯の下
はな「おとう… ごめん。 おら おとうの期待には応えられんさ!」
吉平「グッド イブニング。 はな。」
はな「てっ!」
<1か月ぶりの親子の再会でした。>
はな「おとう!」
スコット♬『(英語での歌声)』
吉平「美しい声じゃな。」
はな「スコット先生…。」
スコット♬『(歌声)』
<あの晩から このガス灯の下が はなとおとうの 秘密の 待ち合わせ場所になりました。>
廊下
茂木「はなさん? こんな時間に どうしたの?」
はな「あっ 御不浄に行きたくなって…。」
茂木「おなかでも壊したの? ついていきましょうか?」
はな「だ… 大丈夫です!」
ガス灯の下
吉平「今夜は もう来ねえか。」
はな「グッド イブニング。 おとう。」
吉平「グッド イブニング。 はな。」
はな「おとう 昼間 会いに来てくれりゃ いいだに。」
吉平「すまん。 昼間は 仕事が忙しくてな。 どうだ? 学校は。」
はな「校長のブラックバーン先生は 鬼みてえに おっかねえ。 英語の富山先生は 全然 笑わんし 寮母の茂木先生は 時々 優しいけんど 行儀作法に うるさくて。」
吉平「大変じゃな。 …で 友達は できたけ?」
はな「お嬢様たちの頭ん中は お見合いや縁談の事ばっかしで おら さっぱり 話しについていけねえさ。」
吉平「ほうか…。」
はな「おじおいやんと おかあは 元気け?」
吉平「ああ。 おかあは はなの心配ばっかりしとる。 腹すいてねえか 風邪ひいてねえかって。」
はな「兄やんや かよや ももは?」
吉平「吉太郎は 相変わらず 学校も行かんで野良仕事しとる。」
はな「ほうけ。」
吉平「かよは 昔のはなみてえに ももの子守しとる。」
回想
かよ「昼飯 持ってきただよ!」
ふじ「ああ ありがとう。」
周造「ご苦労さん。」
かよ「もも! 駄目じゃん。」
回想終了
吉平「はな。 ここで やってけそうか? 給費生は はな一人だけだし 肩身の狭え思いしてるじゃねえだか? この前も この柵 乗り越えて 逃げようとしてたら?」
はな「ううん! ありゃあ 柵に登って お月様を見てただけじゃんけ!」
吉平「ほうか。」
はな「毎日 腹いっぺえ ごちそう食わしてもらって ふかふかの布団で眠って 図書室には うんとこさ 本があるし。」
吉平「ほうか。」
はな「おらだけ うちの仕事もしなんで お姫様みてえな暮らし させてもらってるら。 ありがたくって もってえねえだよ。」
吉平「ほうか。」
はな「おとう。 おら 逃げねえ。 お嬢様たちに負けねえよう こぴっと精進する。」
吉平「ほうか。」
スコット♬『(英語での歌声)』
吉平「また あの歌じゃ。」
スコット♬『(歌声)』
はな「スコット先生 また歌っとる。」
スコット♬『(歌声)』
正門
12月
「ごきげんよう。」
教室
富山「2学期の総まとめの 課題を出します。 読んで。」
一同『Write a letter to miss Blackburn.』
富山「日頃の感謝の気持ちを込めて ブラックバーン校長に 英語で お手紙を書きましょう。」
はな「(小声で)『英語で?』」
富山「今週いっぱいに提出して下さい。 期日を守れなかった者 ブラックバーン校長がお読みになって 合格点が取れなかった者は 落第と見なし 上の暮らすに新旧できません。」
(どよめき)
醍醐「どうしよう。 英語の手紙なんて書いた事ないわ。」
はな「おら やっとこさ A B C 覚えただに 英語の手紙なんて 逆立ちしても無理ずら。」
茂木「何ですか この縫い目は。」
はな「あっ!」
寄宿舎
醍醐「はなさん。 私の辞書を貸してあげるから 一緒に頑張りましょう。」
はな「醍醐さん…。」
醍醐「私 はなさんに落第されたら困るの。 だから 頑張って 一緒に進級しましょうね。」
はな「うん!」
醍醐「手紙は まず 最初に 『Dear Miss Blackburn』って 書くんですって。」
はな「ディア?」
醍醐「親愛なるという意味よ。」
白鳥「小さい人たち。 課題は 試験と同じですから 助け合ってはいけません。 富山先生に知られたら 2人とも落第になりますよ。」
醍醐「えっ?」
白鳥「当然ですわ。」
はな「醍醐さん ありがとう。 おら なんとか 一人で 頑張ってみるじゃん。」
白鳥「それに そのなまりは いつになったら直るんですか?」
労民新聞
吉平「あの~! 宿に言づてを頂いてたようで。」
「お待ちしてました。 浅野先生!」
浅野「ああ。 いや~ いらっしゃい。 この間は せっかく お訪ね頂いたのに 留守をしていて失礼致しました。」
吉平「ああ!」
浅野「あなたは 私どもの運動に 非常に共鳴して下さっている。」
吉平「あっ はい! 講演会に参加して 貧しい者 労働者のために 新しい法律を作ろうとする 熱意に打たれました!」
浅野「実は あなたのような賛同者を 待っておりました。 あなたに 是非やって頂きたい事がある。」
吉平「何でも やらせてもらいます。」
浅野「あなたは 全国のあちこちを巡る行商人だ。 その行商のついでに 私たちの思想について書かれた 新聞や書物を売ってほしいのです。 書物が売れれば それだけ 私たちの思想が広まる事にもなる。」
吉平「はあ…。」
浅野「名付けて 伝道行商。 お願いできませんか?」
吉平「やりましょう。 伝道行商!」
<おとうが そんな事に 首を突っ込んでいるとは 華族は 思ってもませんでした。」
安東家
庭
リン「はなは 暮れも正月も帰ってこんだけ。」
周造「そうさな。」
ふじ「冬休みは 帰れるだと。 ふんだけんど 甲府までの汽車賃も 送ってやれねえし。」
周造「婿殿が 東京行ったっきり 戻ってこんから はなの様子も分からん。」
リン「ほれ見ろし。 ふんだから 反対しただよ! キリスト教の学校なん行ったら 婿殿みてえな西洋かぶれになって 嫁の貰え手もなくなるだよ!」
朝市「いや。 嫁の貰え手なら おる。」
周造「ん?」
リン「ほんな物好きがいる訳ねえら~!」
修和女学校
ガス灯の下
はな「おとう 忙しいのかな…。」
スコット『♬~(英語での歌声)』
<英語の歌詞は 分からないけれど なぜか この曲に心引かれる はなでした。>
スコット♬『(歌声)』
<この曲は 別れた恋人への気持ちを 歌った歌です。 スコット先生には 日本に来る時 別れを告げた 恋人がいたのです。>
教室
富山「今日までですから まだ提出していない人は 早く出して下さい。」
<手も足も出ず はなは 絶望してしまいました。>
スコットの部屋
はな「おとう… ごめん。 おら これで落第ずら。 『まだまだと おもひすごしおるうちに はや 落第のみちへ むかふものなり』。 何でえ こりゃあ。」
廊下
はな「富山先生! これ お願えしやす!」
富山「あら 間に合ったんですか。」
はな「お願えしやす!」
富山「分かりました。 ブラックバーン校長に 読んで頂きましょう。」
<さて はなは 一体 どんな手紙を書いたのでしょう。 この手紙が とんでもない騒動を 引き起こすのでした。>
校長室
富山「Miss Blackbura. It’s Toyama.」
<ごきげんよう。 さようなら。>
ブラックバーン「Come in!」