ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第111回「春の贈りもの」【第19週】

あらすじ

伝助(吉田鋼太郎)は花子(吉高由里子)に、蓮子(仲間由紀恵)は最近どうしているかと問いかける。その夜、家族とけんかして家を出て来た醍醐(高梨臨)が村岡家を訪れ、しばらく居候することに。醍醐はそこから連日蓮子(仲間由紀恵)の元を訪れ、取材を頼みこむ。一方、伝助の言葉に背中を押され、『王子と乞食』出版の決意をあらたにする花子と英治(鈴木亮平)に、醍醐は「クッキーを焼きましょう」と不思議な提案をする…。

111ネタバレ

宮本家

廊下

かよ「前に進まんきゃ いけんのかな。 おらは… このまま止まっていてえ。 郁弥さんのいた時間に…。」

村岡家

居間

嘉納「東京は こげん ありさまやき こげん時こそ あんたの本を待っちょる人が ほかにも 大勢おるとやろね。」

花子「嘉納さん…。」

嘉納「もう一つ 聞きたい事がある。」

花子「な… 何でしょう?」

嘉納「あいつは どげんしよるとね?」

花子「えっ?」

嘉納「蓮子は 無事に暮らしちょるか?」

花子「あ… 蓮様ですか! はい。 震災のあと 龍一さんと坊やと 一緒に暮らせるようになって 蓮様も 人並みに お姑さんの事で 苦労なさってるみたいですよ。」

嘉納「ああ…。 そうか。 邪魔したな。」

花子「いえ…。」

<その夜の事でした>

玄関

醍醐「ごきげんよう。 こんな時間にごめんなさい。」

花子「醍醐さん… どうなさったの?」

醍醐「今夜 泊めて下さる? 私 行くとこがないの。」

花子「てっ…。」

醍醐「出版社を辞めて 蓮子様の 駆け落ち事件を取材してる事で 父と衝突してしまって…。 もう あんな家には 帰らないわ!」

居間

醍醐「ご迷惑なのは 重々承知しておりますが ほかに 行く当てがないものですから…。」

英治「どうぞ。 お好きなだけ いらして下さい。」

平祐「まあ 私も居候だから…。」

花子「狭いけど 我慢してね。」

醍醐「ありがとうございます。」

玄関前

<こうして 醍醐は 村岡家に居候しながら ますます 取材に燃えておりました。>

宮本家

居間

蓮子「私の記事を?」

醍醐「はい。」

蓮子「これまでにも さんざん あちこちで 書かれているじゃないの。 醍醐さんも どうぞ お好きにお書きになったら?」

醍醐「そこには 一つも 本当の事は 書かれていません。 知らべれば調べるほど あの事件は ただの恋愛沙汰ではないと 思うようになりました。 蓮子様は 家や身分に操られる 人生を捨てて 自分の人生を生きようと したんではありませんか? 私は あなたの声を聞き 真実を書きたいんです。」

浪子「蓮子さん 大変! 雨よ! 雨!」

蓮子「まあ… 本当だわ!」

浪子「ほら 急いで! 洗濯物がぬれてるじゃないの!」

蓮子「大変ですわ。」

浪子「急いで 急いで! 遅い 遅い! どうして 雨が降る前に 洗濯物を取り込まなかったのよ!」

蓮子「申し訳ございません お義母様。」

浪子「あなた! 見てないで手伝って!」

醍醐「はい。」

蓮子「雨ですわ!」

浪子「雨よ!」

蓮子「お願い。」

村岡家

英治「お父ちゃまの 出ないなあ。 こうやってごらん。」

花子「英治さん。 やっぱり 『王子と乞食』の本を 作りましょう。」

英治「でも かよさんは 賛成してないんじゃ…。」

花子「嘉納伝助さんが お見えになった時 言って下さったの。 こんな時だからこそ 本を待ってる人が いるんじゃないかって。」

英治「あの人が?」

花子「ええ。 そう言ってもらって 私も強く思ったの。 この本が出来る事で 少しでも 元気を取り戻してもらえる人が 増えたらいいって。 どうかしら。」

英治「うん…。 そういう本を作ろう。 これは 僕たちがやらなきゃ いけない仕事だ。」

花子「歩。 お母ちゃまも こぴっと頑張りますよ。」

台所

醍醐「すてきだわ。 郁弥さんの夢を実現なさるのね。 是非 私もお手伝いさせて。」

花子「でも… まだ資金の事もあるし 実現できるかは めどは 全然立ってないの。」

醍醐「そうなの…。」

花子「醍醐さん?」

醍醐「いい考えがあるわ。 はなさん クッキーをたくさん焼きましょう!」

花子「クッキー?」

<さて 醍醐さんのひらめいた アイデアというのは?>

花子「焼けたわよ!」

醍醐「すごいわ はなさん! まあ 丸焦げ!」

玄関

醍醐「お待ちしてましたわ。」

畠山「ごきげんよう!」

竹沢「ごきげんよう!」

<まあまあ 修和女学校の 同級生の皆さまでございますね。>

醍醐「ごきげんよう。」

花子「皆さん…。 ごきげんよう! お元気そうで。」

畠山「はなさん 醍醐さん お懐かしいわ。」

大倉「今日は お招き頂き 光栄ですわ。」

居間

花子「皆さん お茶をどうぞ。 紅茶がとても高いので 女学校の時代のようには できないけれど…。」

畠山「分かっています。」

醍醐「さあ 皆さん クッキーもどうぞ。」

4人「まあ!」

畠山「スコット先生直伝のクッキー?」

醍醐「ええ。 でも 震災のあとで オーブンが調達できなくて。」

花子「かまどで焼いた特製クッキーよ。」

醍醐「ちょっと焦げてるけど我慢してね。」

竹沢「頂きます。」

梅田「頂きます。」

花子「どうぞ。」

畠山「おいしい。」

竹沢「おいしいですわ。」

花子「ああ よかった!」

夕方

花子「皆さん ご無事で本当によかったわ。」

畠山「私 教会の奉仕活動で 震災以来 避難所を 訪ねているんですけれど 皆さん 家族やおうち お仕事を失って 本当に絶望なさっていて…。」

竹沢「震災さえ なければ…。」

醍醐「でも 修和の建物は無事に残って 本当に幸いでしたわ。」

花子「やっぱり 女学校の頃が 一番楽しかったわね…。」

畠山「はなさん! そんな事を言ったら ブラックバーン校長に叱られますよ。」

花子「ああ…。」

回想

ブラックバーン「The best things are never in the pest, but in the future.」

回想終了

一同『最上のものは 過去にあるのではなく 将来にあります。 旅路の最後まで 希望と理想を持ち続け 進んでいく者でありますように』。

醍醐「皆さん。 お手紙にも書いたとおり 今日は ご協力をお願いしたいんです。」

花子「えっ?」

畠山「はなさん。 ご主人と 『王子と乞食』を出版なさろうと してるんですってね。 うちの子どもたちも あの物語 ずっと読んでいたのよ。」

大倉「出版社を兼ねた印刷会社を 作ろうとしていると伺いました。 はなさん… 是非 協力させて下さい。 不謹慎なんですが 震災のあと 主人の衣料品会社が 大層 繁盛しておりますの。」

畠山「私も協力致しますわ。」

梅田「私も。」

竹沢「私も。」

醍醐「もちろん 私も協力させて頂くわ。」

花子「皆さん…。 お金は 頂けません。」

醍醐「どうして?」

花子「皆さんのお気持ちは 本当に… 本当にうれしいです。 でも 甘える訳には…。」

畠山「それじゃあ このお金は 未来の本への投資というのは どうかしら?」

花子「投資?」

畠山「会社がうまくいったら どんどん 本を出すでしょう? そうしたら 私たちに 割引価格で 優先的に売って下さらない?」

醍醐「いい考えね。」

畠山「こういう時こそ 人々を 楽しく 元気づけるものが必要だと思うの。」

花子「皆さん…。」

英治「未来の本への投資?」

花子「みんな 早く本を作ってくれって 言って下さって。 醍醐さん ありがとう。」

醍醐「お茶会を開いて 私も助かったわ。 畠山さんのお宅 離れが 空いてるから貸して下さるって。 明日から お世話になる事にしたわ。」

花子「そう。 よかったわね!」

英治「でも 本当によろしいんですか?」

醍醐「ええ。 修和女学校の皆さんが はなさんに 本を 是非 出してほしいと…。」

<かよの心の時計は まだ止まったままなのでしょうか。>

玄関

<数日後 再び 嘉納伝助がやって参りました。>

嘉納「こないだ 翻訳してもろた お礼たい。」

花子「こんなに たくさん 頂けません。」

嘉納「よかよか。 余ったら 配給ち言うて 近所ん人に配っちゃんしゃい。」

花子「ありがとうございます。 じゃあ 遠慮なく。」

(戸が閉まる音)

玄関前

<あれほど世間を騒がせて 離婚した2人が ばったり 出くわしてしまいました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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