あらすじ
村岡家の前でばったり出くわした蓮子(仲間由紀恵)と伝助(吉田鋼太郎)。あえて通り過ぎようとする伝助に、意外にも蓮子が声をかける。蓮子が伝助を連れて来たのは、かよ(黒木華)の屋台。かよは、あれだけ世間を騒がせて離婚した二人が、なぜ一緒にここへ来たのかと緊張する。離れた席に座り、かつてのことを少しずつ語り始める二人。その時、蓮子を探しにやって来た龍一(中島歩)が酒をくみ交わす二人を目撃し…。
112回ネタバレ
村岡家
玄関前
<2人が顔を合わせるのは なんと 蓮子の駆け落ち事件以来でした。>
嘉納「筑前銀行の頭取さんは 明日ん約束やったかな。」
番頭「明日の午後2時からの 約束になっちょります。」
蓮子「あの…。 ちょっと 一杯やりませんか?」
嘉納「はあっ!?」
屋台
<かよは 緊張で ひきつっていました。 あれほど世間を騒がせて 離婚した2人が なぜ 屋台なんかに来たのでしょう。>
蓮子「そういえば はなちゃんと かよちゃんは この人の事を褒めていたわね。 『怖そうに見えるけど きっと苦労人で 優しい人だ』って。」
かよ「はい。」
蓮子「それなのに… あのころの私は この人のいいところなんて 一つも見ようとしていなかった。 自分で心を閉ざしてしまって…。」
嘉納「まあ… しかたなかったろ。 今 思えば こん人は 気の毒な花嫁じゃった。 俺は 金ん力で買えんもんは 何一つないち 思ちょった。 ばってん この年になって やっと分かった。 この世にゃ 金の力では どうにもならんもんが 一つだけ ある。 俺の負けたい。 勘定しちゃって。」
蓮子「いいえ ここは 私が。」
嘉納「何を言いよる! 天下の石炭王が 女に金やら払わせられるか!」
蓮子「かよちゃん! これを。」
嘉納「怒るばい!」
蓮子「自分で稼いだお金で ごちそうさせて下さい。 そのために お誘いしたんです。」
嘉納「分かった。 そんなら 一遍だけ ごちそうになるばい。」
蓮子「かよちゃん。 お代わりを2つ。」
かよ「はい。」
嘉納「蓮子… しゃん。」
蓮子「はい。」
嘉納「今… 幸せか?」
蓮子「はい。」
嘉納「そうか。 そうか…。 ごちそうになった。 じゃあ… 元気でな。」
蓮子「あなたも お元気で。 ごきげんよう。 さようなら。」
嘉納「さあ! 今夜は 神楽坂中の芸者呼んで どんちゃん騒ぎたい!」
村岡家
居間
花子「そう… よかったわね。」
玄関
英治「ただいま!」
花子「お帰りなさい。 どうしたの?」
居間
英治「工事現場の帰り 龍一君に飲みに誘われて…。」
龍一「女ってのはね 魔物ですよ! 僕は 蓮子の事が 分からなくなりました!」
英治「もう さっきから ずっと こんな調子で…。 ほら 龍一君。」
花子「龍一さん はい。」
英治「あ… どうも。 龍一君…。」
英治「石炭王とね 仲良く乾杯してたんですよ。 蓮子が 今の暮らしに がっかりしてるのは 分かってましたよ。 新米弁護士の稼ぎじゃ ぜいたくさせられないし 口うるさい おふくろは いるしさ…。」
英治「あっ!」
蓮子「龍一さん。」
龍一「はっ? 蓮子…。 何で 石炭王と 屋台なんか行くんだよ!? じゃあ 俺との逃避行は 何だったんだよ!」
英治「龍一君! でも… 龍一君が やけ酒飲みたくなる気持ちも 分かりますよ。」
花子「もう… 英治さんまで。」
英治「花子さん。」
花子「龍一さん。 蓮様は 別れたご主人に きちんと さよならを言ってきたんです。 こぴっと けじめをつけて 今日から 育児も家事も頑張るそうです。」
蓮子「龍一さん…。 私 今の暮らしに がっかりなんてしていなくてよ。 お義母様には 叱られてばかりいるけれど 嫌われないように頑張るわ。」
龍一「蓮子…。」
蓮子「帰るうちがあるって… うれしい事ね。」
翌日
花子「醍醐さんが声をかけてくれて 修和の同級生たちが こんなに お金を送って下さったの。」
英治「醍醐さん 本当に ありがとうございます。」
醍醐「『王子と乞食』の単行本を 待ち望んでるお母様たちが こんなにも 大勢 いらっしゃるという事ですわ。」
花子「皆さんのお気持ちに 必ず応えましょう。」
英治「そうだね。 何年かかっても 必ず やり遂げよう。」
台所
花子「英治さん。 今日からは これで我慢して下さい。」
英治「節約は 大切だよ。 今 僕たちにできる事を 一つずつ やっていこう。」
玄関
花子「こんなに高く買い取って頂き ありがとうございます。」
「いえいえ こちらこそ。」
書斎
<どうしても 会社を再建し 郁弥の夢をかなえたい。 その強い思いが 2人を突き動かしていました。>
<こうして 2人で頑張っていた ある日の事。>
『ごめんください。』
花子「は~い。」
玄関
番頭「嘉納社長からの伝言です。 筑前銀行 東京支店の 内藤支店長が 融資の話を 聞いちゃんなさるそうですばい。」
筑前銀行
内藤「お待たせして すんまっせん。」
英治「これが 出版社兼印刷会社の事業計画です。」
花子「何とぞ よろしくお願い致します。」
内藤「嘉納伝助社長から お話は 伺っちょります。 契約書を。」
「はい。」
村岡家
居間
英治「父さん! 父さん! 印刷機が買えます! 『王子と乞食』を 出版できるんです!」
平祐「まさか…。」
英治「本当です。 銀行が融資してくれたんです。」
花子「郁弥さんと私たちの夢が かなうんです!」
平祐「どこの銀行だ?」
英治「筑前銀行です。」
平祐「筑前銀行?」
英治「はい。 九州の嘉納伝助さんが 口を利いて下さって…。」
平祐「そうか…。」
庭
回想
郁弥「この花 かよさんみたいでしょう?」
かよ「私 チップの方が うれしいんですけど。」
郁弥「よく似合います。」
回想終了
<いつの間にか こんな所に 勿忘草が…。 ごきげんよう。 さようなら。>