あらすじ
2年が経った大正15年。必死で働いたかよ(黒木華)は、小さいながらも自分の店を持った。その開店祝いに、花子(吉高由里子)や蓮子(仲間由紀恵)たちがやってくる。花子の息子・歩(横山歩)はもうすぐ5歳で、花子はそのやんちゃぶりに手を焼いていた。蓮子と龍一(中島歩)の間には二人目の子ども・富士子が生まれ、幸せいっぱいの村岡家と宮本家。にぎやかな祝いの席で、醍醐(高梨臨)からとあることが発表され…。
114回ネタバレ
村岡家
居間
英治「郁弥。 これからも 美しい本を たくさん作るからな。」
庭
かよ「時間は 止まっちゃあいんだね。 郁弥さん…。 ありがとう…。」
1926年(大正15年)・初夏
<それから 2年がたちました。>
居間
英治「父さん。 読み終わったページ下さい。」
花子「歩ちゃん! 待ちなさい! 歩ちゃんったら! かよ叔母ちゃんのお店に 行くんだから ちゃんと お着替えなさい。」
<歩は もうすぐ5歳です。 やんちゃ盛りの我が子に 花子は 手を焼いているようです。>
花子「いい子だから お着替えして。」
カフェー・タイム
<かよは 必死で働き 小さいながらも 自分の店を持ちました。>
(時計の音)
村岡家
庭
歩「ねえ お母ちゃま 早く 早く!」
花子「歩ちゃん 待って。 ああっ 転んだら大変よ! 歩ちゃんは お母ちゃまの ダーリングボーイなんだから。」
歩「ダーリングボーイ?」
花子「かわい子ちゃんって意味よ。」
歩「僕は お母ちゃまの かわい子ちゃんなの?」
花子「そうよ。 お母ちゃまのダーリング。」
歩「お母ちゃまのダーリング。」
カフェー・タイム
歩「かよ叔母ちゃん!」
かよ「いらっしゃい 歩! グッド アフタヌーン。」
歩「グッド アフタヌーン!」
かよ「いらっしゃい。」
花子「開店 おめでとう!」
かよ「ありがとう。」
英治「かよさんらしい 落ち着いた いいお店だね。」
かよ「狭い店ですけんど 好きな所に座って下さい。」
平祐「かよさん 早速 コーヒーをお願いできるかな。」
かよ「はい ただいま。」
歩「僕も お手伝いする。」
かよ「歩は お客さんだから ママたちと一緒に座ってて。」
花子「歩 こっち おいで。」
歩「は~い。」
平祐「お~ 歩は 実に優しい子だな。」
英治「また ご褒美のお菓子は 要りませんからね。」
平祐「何も言ってないだろう。」
英治「父さんは 歩を甘やかし過ぎなんですよ。」
かよ「いらっしゃいませ。」
蓮子「ごきげんよう 皆様。」
花子「ごきげんよう 蓮様 龍一さん。」
龍一「どうも。」
花子「ごきげんよう 純平君。」
純平「ごきげんよう。」
<あの純平君も こんなに大きくなりました。 そして 宮本家には 2人目も生まれました。>
龍一「富士子です。 蓮子が 花子さんのお母さんみたいに 優しい女性になってほしいって 言うんで。」
(泣き声)
英治「へえ~ 富士子ちゃんか~。」
歩「純平君 一緒にお絵描きしよう。」
純平「うん。」
蓮子「かよちゃん 今日は お招きありがとう。 屋台もよかったけれど このお店も すてきね。 自分の力でお店を開くなんて すごいわ。」
かよ「ありがとうございます。 いらっしゃいませ。」
醍醐「ごきげんよう。」
花子「醍醐さん ごきげんよう。」
<開店祝いに みんなが顔をそろえました。>
かよ「さあ どうぞ座って下さい。」
花子「かよ みんなに挨拶しろし。」
かよ「てっ?」
かよ「皆さん。 今日は お集まり頂き 本当にありがとうございます。 お客さんが おなかいっぱいになって 元気んなれるような店を目指して こぴっと頑張りますので どうぞ ごひいきに。」
蓮子「さあ 乾杯しましょう。」
英治「じゃあ かよさんの店を 一番楽しみにしていた うちの父から ひと言。」
平祐「それでは かよさん 開店おめでとう。 乾杯!」
一同「乾杯!」
かよ「ありがとうございます。」
一同「おめでとう。」
(拍手)
醍醐「私も ご報告があります。 蓮子様の事件を 取材していた記事を 昨年より 『文芸東洋』で 連載してまいりましたが この度 一冊の本として 出版の運びとなりました。」
花子「醍醐さん… すごいじゃない!」
醍醐「ありがとう。」
平祐「醍醐さんの連載 よく そこまでと思うほど 深く踏み込んだ内容になってて いい記事だった。 評判もよかったね。」
醍醐「ありがとうございます。 それも これも 蓮子様と宮本さんが 愛のために 大胆な事件を 起こして下さったおかげです。 お二人の勇気に感謝致します。」
龍一「いや 感謝って…。」
蓮子「さんざん批判は されたけれど 感謝されたのは 初めてね。 醍醐さんが 私の事を 書いて下さったおかげで 私も 小説のお仕事を頂いたのよ。」
花子「あの小説 本当に面白かったわ。」
醍醐「蓮子様には 短歌だけではなく小説の才能もあったんですね。」
蓮子「趣味ではなく 仕事として書く事が これほど張り合いのある事だとは 思わなかったわ。」
花子「ねえ もう一度乾杯しませんか。 醍醐さんと蓮様のご活躍に 乾杯!」
2人「乾杯!」
平祐「いやはや ご婦人方は 大活躍だな。」
英治「ええ…。」
平祐「2人とも 頑張りなさい!」
英治「はい…。」
醍醐「一つ 大きな目標を 達成した事だし これからは 仕事以外に 結婚相手を見つける事も頑張るわ。」
蓮子「あなたは 修和の生徒の時から そればかりおっしゃっていたのに。」
醍醐「そうでしたわ。」
蓮子「ええ! そうよ。」
花子「あ~ 楽しい。」
蓮子「ええ。」
花子「久しぶりに 3杯目 飲んじゃおうかしら。」
かよ「お姉やん!」
英治「花子さん!」
蓮子「はなちゃん!」
花子「冗談よ! 冗談よ…。 ねえ 歩ちゃん。 歩! 何やってるの! 駄目じゃない! 壁に描いたりなんかしたら! 歩! かよ叔母ちゃんに ちゃんと ごめんなさいして。 歩!」
かよ「お姉やん ほんなに怒らんでもいいじゃん。」
花子「かよ…。 本当にごめん!」
かよ「ううん。」
村岡家
書斎
花子「歩。 とうとう かよ叔母ちゃんに ごめんなさい言わなかったわね。」
歩「大きい絵 描きたかったんだもん。」
英治「僕から よく言っておくから 花子さんは 仕事しなよ。 ほら 行くぞ。」
(ため息)
花子「もう…。 英治さんは 甘いんだから…。」
<かなり怒っております。>
宮本家
蓮子「楽しかったわね。 楽しすぎて ついつい 時間を忘れちゃったわ。」
浪子「遅い。 私のお夕飯も忘れたの?」
龍一「母さん 腹が減ったなら 自分で作ればいいだろ。」
浪子「家事は 嫁の仕事!」
蓮子「申し訳ありません お義母様! すぐに。」
<こちらも かなり怒っております。>
村岡家
居間
歩♬『パパア ママアのダアリング』
2人♬『パパア ママアのダアリング パパア ママアのダアリング』
花子「どうしたの? その歌。」
英治「歩が作ったんだよ。」
歩「かわい子ちゃんの歌だよ。」
花子「てっ…。」
2人♬『こっちが ママアのダアリング パパア…』
歩「ねえ お母ちゃま。 お話して!」
花子「いいわよ。 歩。 今日は どんなお話がいい?」
歩「『王子と乞食』がいい。」
寝室
花子「『トムは 王子に言いました。 『私は たった一度でいいから 王子様が着ていらっしゃるような 着物を身につけたいと思います』』。」
<花子にとって 毎晩こうやって 歩にお話を聞かせるのが 最高に幸せな時間でした。>
歩「王子とトムは そっくりだもんね。」
花子「そうね。」
書斎
花子「歩ちゃん? 歩ちゃん。」
縁側
花子「歩? 何やってるの!?」
歩「お母ちゃま 見て。 これ 王子とトムだよ。」
花子「もう… お父ちゃまに叱られる前に こぴっと お片づけしましょう!」
歩「やだ!」
花子「歩。 歩! 言う事聞かないなら お母ちゃまにも考えがあります。」
歩「お母ちゃま怖い。」
英治「ただいま。 ちょっと! 花子さんまで一緒になって 何やってるんだよ!」
花子「ごめんなさい つい楽しくなっちゃって…。」
歩「お父ちゃまも 一緒にお絵描きしようよ。」
英治「え~? お父ちゃまは いいよ。」
花子「ねえ 英治さん 見て。 これ 歩が描いたの。 王子とトム! そっくりでしょ?」
英治「ええ~…。」
歩「ねえ 早くやろうよ! みんな そろってるよ。」
花子「ねっ 英治さんも。」
英治「しょうがないな…。」
花子「お父ちゃまもやってくれるって。」
英治「じゃあ お父ちゃまは 雲を描こうかな。」
花子「歩ちゃんは?」
歩「僕は これ描く。」
<いつしか 歩よりも夢中になる 花子と英治でした。 ごきげんよう。 さようなら。>