あらすじ
夏のある日。大森の村岡家へ、甲府から吉平(伊原剛志)とふじ(室井滋)がやってくる。花子(吉高由里子)と英治(鈴木亮平)が海水浴に誘ったのだ。歩(横山歩)は早くも水着を着て翌日海に行くのを楽しみにしており、吉平とふじは目を細める。だが翌日、外は大雨。海水浴はまた今度にしようと花子に言われ、すっかりへそを曲げた歩は泣き出してしまう。花子は歩を元気づけるため、あることを思いつく…。
115回ネタバレ
村岡家
工房
<たくさんの友人たちの 力を借りて 花子たちは 青凛社を作り 『王子と乞食』の単行本を 完成させました。 それから2年後 かよは 必死で働き 自分の店を持ちました。 そして 歩は 4歳になりました。>
カフェー・タイム
(セミの声)
1926年(大正15年)・8月
村岡家
居間
<さて 8月のある日の事。>
花子「歩ちゃん! おじぃやんとおばぁやんが 来てくれたよ。」
吉平「歩~。 グッド イブニ~ング!」
歩「おじぃやん おばぁやん グッド イブニング!」
ふじ「てっ 歩! もう 海水着 着てるだけ?」
花子「歩ったら 明日が待ち切れなんで 朝からお騒ぎさ!」
吉平「ああ~ こんだけ てるてる坊主 つるしゃあ 明日は きっと 晴れるら。 歩! 海行って スイカ割りしような!」
歩「うん!」
平祐「おお~! 立派なスイカですな!」
英治「重くて大変だったでしょう?」
吉平「いっとう甘えやつ 選んできたです。 (笑い声)」
花子「よかったね 歩ちゃん。」
ふじ「歩 呼んでくれてありがとね。 おばぁやん 海水浴なんて 生まれて初めてじゃん。」
歩「お母ちゃま これ着るんだよ!」
ふじ「はあ~!」
花子「歩ちゃん 恥ずかしいでしょ!」
ふじ「はあ~!」
花子「おかあも…。」
翌日
(雨の音と雷鳴)
<てっ。 ザーザー降りですか。>
花子「歩ちゃん…。 海水浴は また今度ね。」
歩「やだ。 みんなで海に行くんだもん。」
平祐「雷も鳴ってるし 海も荒れてるだろう…。」
英治「今日は 諦めよう 歩。」
歩「やだ。 みんなで海水浴するんだもん! (泣き声)」
花子「やりましょう。 海水浴。」
歩「えっ? お母ちゃま 本当?」
花子「皆さん どうぞ。」
ふじ「どうぞ。」
平祐「ああ こりゃ どうも どうも。」
ふじ「どうぞ。」
英治「どうも。」
花子「歩ちゃん。 ここは 海よ。 想像の翼を大きく広げて ここが海だって想像してみるの。」
歩「ここが海?」
花子「そう。 さあ 目を閉じて。 想像してみて。 歩ちゃんは 今 みんなと一緒に浜辺にいます。 今日は とっても いいお天気で 太陽は キラキラしています。 みんなも一緒に 想像の翼を広げて。」
花子「ザブ~ン ザブ~ンと寄せては返す波。 あっ 大きな波が来たわ!」
歩「でも ここは おうちだもん…。」
吉平「ほうじゃねえ 歩…。 おおっ! 海だ! さあ おじぃやんと泳ごう!」
花子「おじぃやんが泳ぐよ!」
吉平「すい~ すい~ すい~。」
英治「よし! じゃあ お父ちゃまも泳ごうかな! ザッブ~ン!」
2人「すい~ すい~。」
吉平「ほら 歩も 泳がないと溺れるぞ! おいで! あっ! でっけえ魚がいるじゃん!」
英治「あっ!」
吉平「うわ~!」
2人「すい~。」
歩「でも ここは海じゃないもん…。」
花子「歩ちゃん。」
歩「僕 海に行きたい。 海に行きたいの!」
花子「歩!」
平祐「まあ 畳を海だと思えという方が 無理があるな。 ハハハハ。」
書斎
花子「歩ちゃん おばぁやんがスイカ切ってくれたよ。 これ食べて 機嫌直そうよ。 歩ちゃん。」
歩「僕 海でスイカ食べる!」
花子「歩…。 いつまでも わがまま言ってる子は 知りませんからね!」
<花子が息子に手を焼いている頃…。>
宮本家
<一方 蓮子は…。 おや? こちらは 順調なようですね。」
純平「お母様 ただいま。」
蓮子「お帰りなさい。 棚に おやつが入ってますよ。」
純平「うん。」
浪子「純平。 手は洗ったのかい?」
純平「まだです。」
浪子「お外から帰ったら きちんと きれいに手を洗いなさいって 言ってるでしょう。 蓮子さんも 仕事にかまけてないで ちゃんと注意しなさい。」
蓮子「申し訳ございません。 気を付けます お義母様。」
浪子「ほら 早く洗いなさい。 きれいに洗うんだよ。」
純平「はい。」
浪子「それにしても 富士子は いい子だね。 生まれた時から たくさん お乳は飲むし よ~く育つよ。」
蓮子「ええ。」
浪子「はい。」
純平「ねえ おばあ様。 僕が生まれた時は どんなだった?」
浪子「えっ…。」
純平「ねえねえ 教えてよ~。」
蓮子「おばあ様は 純平が生まれた時の事 知らないのよ。」
浪子「ちょっと 蓮子さん。」
純平「どうして?」
蓮子「それは…。」
<龍一と引き離され 実家に連れ戻された蓮子は 一人で純平を産みました。 それを 幼い息子に どう説明したらよいのか 蓮子は 言葉が見つかりませんでした。>
村岡家
書斎
花子「歩ちゃん。 みんなと一緒に お弁当食べましょう。」
歩「雨なんか嫌いだ! ずっと降らなきゃいいんだ!」
花子「『今日のように ある暑い夏うの朝の事です』。 『小さな ひとひらの雲が 海から浮き上がって 青い空の方へ 元気よく 楽しそうに飛んでいきました。 ずっと下の方には 下界の人間が 汗を流しながら 真っ黒になって 働いておりました。 雲は 思いました。」
花子「『どうかして あの人たちを助ける工夫は ないのだろうか』』。 『こちらは 空の下の世界です。 あんまり太陽の光線が強いので 人々は 時々 空を見上げては 雲に向かって 『ああ… あの雲が 私たちを 助けてくれたらな』というような 様子を致しておりました』。 さあ 雲は 何て言ったと思う?」
歩「『助けてあげるよ』って。」
花子「そうね。 でも 雲は 人間の世界に近づくと 消えてしまうの。」
歩「消えちゃうの?」
花子「それでも 雲は 勇ましく こう言ったの。 『『下界の人たちよ。 私は 自分の体に どんな事が起きても構わない。 あなたたちを助けよう。 私は 自分の命を あなたたちにあげます』。 下へ下へ 人間の世界に下っていった雲は とうとう 涼しい うれしい 夕立の滴となって 自分の体をなくしました』。」
英治「ほら。」
花子「まあ…。」
歩「雲は 死んじゃったんだね。」
花子「ええ…。 でもね 雲が降らせた雨で 苦しい苦しい暑さから たくさんの人や動物や木や草花が 救われたのよ。」
歩「じゃあ 雨の事 嫌ったら かわいいそうだね。」
花子「うん そうね。 今日は 雨で海に行けなくて 残念だったけど 今度の日曜日 行こうね。」
歩「うん。」
居間
歩「僕 分かったよ。」
平祐「ん? 何だ? 歩。」
歩「雲はね 雨を降らせて消えちゃったあと 虹になるんだよ!」
花子「てっ…。 ほうね!」
歩「お別れに お空の虹になったんだ。」
吉平「ほう~…。」
ふじ「アハハ あんたの言いてえこんは 分かるさ。」
英治「歩は 神童に間違いありませんよ!」
吉平「いや~ 全くじゃん。」
(笑い声)
カフェー・タイム
ふじ「て~っ! 立派なお店じゃん かよ!」
吉平「ああ 自分の店を持つなんて 俺の娘にしちゃ出来すぎじゃん。 かよ うんとこさ頑張っただな。」
かよ「おとうも おかあも ゆっくりしてってくれちゃ。」
吉平「かよ。 もう 郁弥君の事は 大丈夫か?」
かよ「こぴっと頑張ってれば きっと郁弥さんが見ててくれる。 ほう思ってるさ。」
村岡家
居間
梶原「花子君は 締め切りを守ってくれるから 本当に助かるよ。」
花子「編集の皆さんの苦労は よ~く分かりますから。」
梶原「そうか。 それで… 折り入って相談なんだが。 この本の翻訳も お願いできないだろうか。」
花子「歩の好きそうな本です。」
梶原「大急ぎで 翻訳してもらえないだろうか。」
花子「はい。 是非やらせて下さい。」
梶原「本当に急いでんだ。 10日で仕上げてくれないか?」
花子「10日ですか…。」
梶原「何か用でもあるの?」
花子「大丈夫です。 頑張ります。」
梶原「引き受けてくれるか!」
花子「ええ。」
梶原「助かるよ。 それじゃ よろしく。」
歩「お母ちゃま! お母ちゃま 日曜日 これ 海で着るんだよ!」
花子「歩ちゃん。」
梶原「10日で本当に大丈夫?」
花子「大丈夫です。」
<さて 花子は この海水着を 着る事ができるのでしょうか? ごきげんよう。 さようなら。>