ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第117回「海にかかる虹」【第20週】

あらすじ

「熱があるかも」と言いだした歩(横山歩)が、ほんとうに高い熱を出していることに驚く花子(吉高由里子)と英治(鈴木亮平)。花子は急いで歩を布団に寝かせ、つきっきりで看病を始める。歩はぐったりしながらも花子に「痛いお注射する?」などと問いかけ、花子は元気になったら今度こそ海に行こうね、と言葉をかける。やがて英治に呼ばれた医師と看護師が到着。歩を診察した医師は、花子と英治に所見を伝える…。

117ネタバレ

村岡家

居間

歩「僕 お熱があるかもしれないよ。」

花子「えっ? 本当だわ。 随分高いお熱よ。」

英治「風邪ひいたのか。 歩?」

花子「歩ちゃん?」

英治「歩!?」

平祐「早く医者を呼べ。」

英治「はい。」

花子「歩ちゃん… 歩ちゃん!」

寝室

花子「また 熱が…。」

英治「歩。 もうすぐ お医者さん来るからな。」

歩「お母ちゃま…。」

花子「何? 歩ちゃん。」

歩「痛いお注射する?」

花子「そうね…。」

歩「お注射 やだな~…。」

花子「じゃあ お母ちゃまが 代わりにしてもらうわ。」

英治「花子さん…。」

歩「それじゃ 僕の病気 よくならないよ…。」

花子「そうね…。」

英治「歩は 強いから 注射痛くても大丈夫だよな。」

花子「お医者様の言う事を聞いて いい子にしてれば すぐ よくなりますからね。 元気になったら 今度こそ海に行こうね。 大丈夫?」

(戸が開く音)

医者『村岡さん。』

玄関

英治「先生 よろしくお願いします!」

医者「坊やの熱は いつからですか?」

英治「夕方ごろ 急に高い熱が出て おなかも下しています。」

寝室

花子「先生… 歩は?」

医者「残念ながら 疫痢の可能性が高い。」

英治「疫痢…。」

平祐「そんな…。 なんとかしてやって下さい。」

花子「先生 歩を助けて下さい! お願いします! お願いします!」

英治「お願いします!」

<当時 疫痢は たくさんの 子どもが命を落とす 最も怖い病気とされていました。>

医者「もう一度 強心剤をうとう。」

「はい。」

花子「歩ちゃん?」

英治「歩。」

花子「まあ… やっと気持ちよくなったのね。 歩のおめめの なんて きれいなこと…。 こんなに高い熱が出たのに ちっとも目が曇らないのね…。」

花子「歩ちゃん。 さあ おぶを飲みましょうね。 歩ちゃん? 歩ちゃん。 歩ちゃん! 歩ちゃん!」

英治「先生…。」

医者「もう お時間がないので 抱いてあげて下さい。」

英治「花子さん…。」

歩「お母ちゃま。」

花子「何? 歩ちゃん。」

歩「僕が『お母ちゃま』と言ったら 『はい』ってお返事するんだよ。」

花子「お返事しますとも。」

歩「お母ちゃま。」

花子「はい。」

歩「お母ちゃま。」

花子「はい。 歩ちゃん? お母ちゃまのお返事 聞こえないの?」

歩「お母ちゃま…。 …ちゃま。」

花子「はい。 はい! 歩ちゃん…。 お母ちゃまも お父ちゃまも おじいちゃまも みんな あなたのそばにいるのよ。 歩ちゃん…。 何? 何? お願い… 何か言って! お願い 歩ちゃん…。」

(泣き声)

花子「歩ちゃん? 歩…。」

<その日の明け方 歩は 息を引き取りました。>

宮本家

玄関

郵便配達員「電報です。」

蓮子「ご苦労さまです。」

龍一「電報 誰から?」

蓮子「歩君が…。 はなちゃん…。」

龍一「すぐ行ってあげた方が…。」

浪子「何をぐずぐずしてるの! 母親にとって 子どもを亡くすのは 心臓をもがれるよりも つらい事よ! 子どもたちの世話は 私に任せて 早く行きなさい!」

蓮子「はい!」

村岡家

(戸が開く音)

居間

英治「花子さん。 蓮子さんが来て下さったよ。」

蓮子「はなちゃん…。」

花子「蓮様…。 歩…。 『お母ちゃま… お母ちゃま』って…。」

蓮子「はなちゃん…。」

花子「歩…。」

(泣き声)

花子「歩!」

(泣き声)

蓮子「はなちゃん…。」

(泣き声)

玄関

英治「申し訳ありませんが 翻訳の締め切りは 遅らせて頂けないでしょうか。 当分 仕事は 手につかないと思いますので…。」

梶原「いやいや… 翻訳の事は 心配しないでくれと 花子さんに伝えてくれ。」

英治「すみません。」

梶原「英治君。 君は 大丈夫か?」

英治「…はい。」

梶原「僕でできる事があったら 何でも言ってくれ。」

英治「ありがとうございます。」

寝室

(虫の声)

回想

歩♬『こっちが ママアのダアリング こっちが パパアのダアリング パパア ママアのダアリング パパア ママアのダアリング こっちが ママアのダアリング』

歩「虹が出たよ!」

回想終了

<『あすよりの 淋しき胸を 思ひやる 心に悲し 夜の雨の音』。 さようなら。>

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