あらすじ
「熱があるかも」と言いだした歩(横山歩)が、ほんとうに高い熱を出していることに驚く花子(吉高由里子)と英治(鈴木亮平)。花子は急いで歩を布団に寝かせ、つきっきりで看病を始める。歩はぐったりしながらも花子に「痛いお注射する?」などと問いかけ、花子は元気になったら今度こそ海に行こうね、と言葉をかける。やがて英治に呼ばれた医師と看護師が到着。歩を診察した医師は、花子と英治に所見を伝える…。
118回ネタバレ
村岡家
居間
花子「歩…。」
<9月1日の明け方 歩が疫痢で息を引き取りました。>
英治「本日は 歩の葬儀に お集まり下さいまして ありがとうございました。 歩の死は… あまりに突然でした。 今でも信じられません。 歩のいない時間を どうやって 過ごしていったらいいのか 情けない話ですが 僕たちには まだ考えられません。 皆さん どうか 花子を支えてやって下さい。 よろしくお願いします。」
書斎
(戸が開く音)
吉太郎「(泣き声)」
吉太郎「すいません…。」
醍醐「吉太郎さんは 歩ちゃんの 親友でいらっしゃいましたものね。」
宮本家
居間
蓮子「ただいま 純平。 遅くなって ごめんね。」
純平「お帰りなさ~い。 お母様は 僕が死んだら悲しいの?」
蓮子「純平?」
純平「歩君 天国に行っちゃったんでしょ?」
浪子「私が教えたの。 花子さんのところへ行って 歩君と遊ぶんだって 聞かないもんだから。」
純平「お母様。」
蓮子「悲しいわよ。 純平がいなくなったら お母様 とても生きていけない…。」
純平「くすぐったいよ~。 くすぐったいよ~。」
村岡家
書斎
吉平「はな… 大丈夫け?」
花子「うん…。」
居間
(セミの声)
<翌日 蓮子は 再び 花子のもとを訪れました。>
蓮子「はなちゃん…。 こんな事しかできなくて ごめんなさい…。」
花子「蓮様…。 蓮様…。 ありがとう…。」
蓮子『あすよりの 淋しき胸を 思ひやる 心に悲し 夜の雨の音』。 『母と子が 並びし床の 空しきを 思いやるなり われも人の親』。 『われにさへ けさは冷たき 秋の風 子をうしなひし 君がところ』。
書斎
<蓮子から贈られた歌の数々が 花子を仕事に向かわせました。>
仏間
吉太郎「はな どうしてますか?」
英治「書斎に籠もって 仕事をしています。」
吉太郎「仕事?」
書斎
吉太郎「はな…。」
花子「あっ… 兄やん 来てただけ。」
吉太郎「もう 仕事なんしてるだか…。」
花子「翻訳の締め切り 過ぎちまって 急がんきゃ。」
吉太郎「歩が死んだばっかだに よく 仕事なんできるじゃんけ! これ 持ってくぞ。」
(時計の音)
カフェー・タイム
吉太郎「はなのやつ こんな時に仕事なんか…。」
かよ「兄やん?」
吉太郎「母親が仕事してるせいで 歩が どんだけ寂しい思いしてたか はなは ちっとも分かっちゃいん…。」
かよ「お姉やん 今 ほうしかできんじゃねえかな。 おらも あのころ ほうだった。 体 動かしていんと 苦しくて 寂しくて… 生きてるのが怖かった。 ふんだから 昼も夜も がむしゃらに働いてたさ。 お姉やんにとっちゃ きっと ほれが 物語作ったり 翻訳する事なんだよ。」
村岡家
書斎
英治「徹夜したの?」
花子「ええ…。 ありがとう。」
英治「梶原さんには 僕が電話して渡しておくから 君は ゆっくり休めよ。」
花子「まだ眠くならないから もう少しだけ。」
居間
梶原「英治君。 これ。 申し訳ない事を したかもしれないな…。」
花子『歩ちゃん。 あなたと一緒に このご本を 読みたかったのですよ』。
花子『でも もう あなたは 天のおうちね…。 お母ちゃまは バカでしたね…。 こんなに早く 天国に行ってしまうなら 仕事ばかりしていないで あなたのそばに ずっと いてやればよかった…』。
(雨の音)
花子『雨が降ってきました…。 お母ちゃまの心にも 雨が降っています…。 かわいい お宝の歩ちゃん…。 お母ちゃまの命は あなたの命と一緒に この世から離れてしまったような 気がします』。
居間
英治「(泣き声)」
平祐「英治。 花子さん どこ行ったんだ?」
英治「ゆうべ 徹夜したので まだ寝てるはずですが…。」
平祐「いや… どこにもいないぞ。」
<花子が姿を消してしまいました。 ごきげんよう。 さようなら。>