あらすじ
花子(吉高由里子)は日本中の子どもたちに楽しい物語を届けたい一心で、児童文学の翻訳にまい進し、英治(鈴木亮平)とともに老若男女が楽しめる雑誌『家庭』を完成させる。『家庭』の創刊を祝して、かよ(黒木華)の店に女流大物作家の長谷部汀(藤真利子)や宇田川(山田真歩)、醍醐(高梨臨)や蓮子(仲間由紀恵)が集う。それぞれ活躍をしている女性陣に、英治や梶原(藤本隆宏)は押され気味でたじたじとなる…。
121回ネタバレ
村岡家
寝室
花子「歩…。」
<大正15年9月1日の明け方 花子の長男 歩が 息を引き取りました。>
海
<時代は 昭和に替わり>
村岡家
<花子は 児童文学の翻訳に 没頭していました。>
書斎
<日本中の子どもたちのために 楽しい物語を送り届けたいという 強い思いからでした。>
工房
<3年前に平祐が亡くなり このうちは 英治と花子だけに なってしまいました。>
仏間
英治「我が青凛社の 新しい雑誌が完成しました。」
花子「子どもも大人も楽しめるような 雑誌にしました。 歩は 喜んでくれてるかしら?」
英治「ああ。 きっと喜んでくれているよ。」
<歩の死から6年。 2人が歩の事を思わない日は ありませんでした。>
カフェー・タイム
英治「おかげさまで 青凛社の雑誌『家庭』 皆さんのご協力頂き 無事 創刊の運びとなりました。」
花子「大先輩の長谷部 汀先生 宇田川満代先生にもご寄稿頂き 誠に光栄に存じます。 白蓮先生には 募集した短歌の選者として 醍醐亜矢子先生には 随筆をご寄稿頂き ありがとうございました。」
英治「今後とも この雑誌を通じ 日本中の家庭に 上質な家庭文学を届けるよう 精進していく所存ですので どうぞ よろしくお願いします。 それでは。 乾杯!」
一同「乾杯!」
(拍手)
長谷部「『王子と乞食』を 出版したところの雑誌なら 是非 協力したいと思ったのよ。」
英治「ありがとうございます。」
宇田川「…で どうして 聡文堂の梶原さんまでいるの?」
<大震災で会社を失った梶原も ようやく聡文堂を再建しました。>
梶原「今の文学界を支える 著名な先生方の お集まりの会に参加できて 僕も光栄です。 先生方 これを機会に 我が新生聡文堂にも 是非書いて下さい。」
醍醐「梶原さん。 私 児童文学は書けませんけれど 女流作家の評伝を書きたいと 思ってるんです。 長谷部先生や宇田川先生の評伝も 書きたいんです。 是非 聡文堂で書かせて下さい。」
梶原「是非 お願いします。 ところで 花子先生。 うちも 翻訳物を 増やしていきたいんですが 今後 どんな作品を 翻訳したいですか?」
花子「日本には 10代の若い方たちが読む 物語が少ないと思うんです。 私が女学校時代に 読みふけっていた 欧米の青春文学を もっともっと 紹介していきたいと思います。 バーネットの『A Little Princess』や 『Tha Secret Garden』なんて どうでしょうか?」
醍醐「梶原さん。 今のうちに 予約しておいた方がいいですよ。 花子先生 翻訳の連載が2つに 少女小説 それから 随筆も書いていらして 大層 お忙しいですから。」
宇田川「あなた そんなに? 私より稼いでんじゃないの?」
蓮子「はなちゃん 本当に人気者ね。 一体 いつ寝てるの?」
花子「もう 蓮様まで。 やめて下さい。」
長谷部「そういう白蓮さんは ご自分の半生を 小説にお書きになって 映画化までされたんですものね。」
宇田川「赤裸々に書きゃ いいってもんじゃないわ。 ウイスキー。」
かよ「はい。」
宇田川「白蓮さんは 要するに 世間の注目を ずっと浴びてたいのよ。 平民になった あなたが 何を着てくるかと思ったら…。」
蓮子「中国の知り合いから頂いたんです。」
花子「あ… 宇田川先生こそ 震災の時に 運命的な出会いをなさった ご主人との事を お書きになったら いかがでしょうか?」
蓮子「是非。 私の小説なんかより よっぽどロマンチックですわ。」
花子「そうですよ!」
宇田川「あれは… 錯覚でした。」
花子「…錯覚?」
宇田川「とっくに別れたわよ。」
花子「てっ…。」
宇田川「早く。」
かよ「はい。」
長谷部「私も。」
かよ「はい。」
<それで 宇田川先生 今日は一段と荒れてるんですね。>
梶原「まあまあ。 僕も離婚経験者ですから。」
蓮子「私なんか 2回も経験しました。」
宇田川「作家は 不幸なほど いい作品が書けるのよ。 ほっといて。」
長谷部「それは そうと… 白蓮さんが雑誌に書いてらした 『どのような境遇であれ 女性も男性と等しい権利を 持つべきだ』という記事 感心して読みましたわ。」
花子「私もです。」
醍醐「私も。」
蓮子「まあ… うれしいお言葉ですわ。」
花子「文学の世界も男性中心ですけど 政治も同じです。 女性は 家庭を守るだけでなく男性と同じように 社会に参加する権利が あるはずです。」
蓮子「そのとおりです。 そもそも 25歳以上の男性に 選挙権があって 女性にないのは おかしいですわ。 おととしも 婦人参政権が 認められる寸前までいって 否決されたのは 全くもって残念です!」
かよ「蓮子さん 早くしゃべれるように なりましたね。」
蓮子「お姑さんに鍛えられましたから。」
(笑い声)
長谷部「皆さん! 女性の地位向上のために 頑張りましょう!」
蓮子「はい!」
醍醐「はい!」
梶原「男の出番は ないな。」
英治「ええ。」
長谷部「これからも お互い 切磋琢磨していきましょう! 乾杯!」
4人「乾杯!」
夜
醍醐「はなさん 今日は ありがとう。 おかげで 先生方から 取材の承諾を頂けたわ。」
花子「醍醐さん… 燃えてるわね。」
蓮子「その後 吉太郎さんとは どうなの?」
醍醐「それが… 龍一さんや武さんに あんなお芝居までして ご協力頂いたのに…。」
回想
(汽笛)
吉太郎「上官に 醍醐さんとの事を話しました。」
蓮子「それで 上官の方は 何と…?」
醍醐「そう… ですか…。」
吉太郎「醍醐さんには 自分より ふさわしい相手がいます。 ですから…。」
醍醐「いいえ。 私 待ちます。 いつまでも… 吉太郎さんを思い続けます。」
回想終了
蓮子「そうだったのね…。」
かよ「好き合ってる2人が どうして一緒になれないの…。」
花子「でも 兄やんは まだ独りだし きっと 今も醍醐さんの事を…。」
醍醐「もういいの。 私 これからは 仕事に生きる事にしましたから。」
蓮子「醍醐さん…。 その愛が本物ならば 必ず いつか成就すると 私は 思います。」
醍醐「蓮子様…。」
英治「龍一君たちが迎えに来ましたよ。」
龍一「もう終わった?」
蓮子「ええ。」
富士子「お母様!」
純平「お母様!」
花子「ごきげんよう 富士子ちゃん 純平君。」
醍醐「ごきげんよう。」
富士子「ごきげんよう。」
純平「お母様を迎えに来ました。」
花子「まあ 偉いこと。 純平君は お母様思いで立派ね。」
龍一「純平のやつ 『お母様は 僕が守る』って 完全に蓮子の味方なんです。 夫婦げんかなんかしようもんなら 僕が一方的に責められますよ。」
醍醐「あら お幸せね。 じゃあ 私も そろそろ。」
花子「ええ。」
龍一「じゃあ 花子さん また。」
2人「ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
蓮子「さあ。」
醍醐「ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
蓮子「あっ そうだわ はなちゃん。 明日 お宅へ伺ってもいいかしら? 会わせたい人がいるの。」
花子「えっ?」
玄関前
富士子「さようなら!」
純平「さようなら!」
英治「さようなら。」
蓮子「さあ。」
英治「純平君 また背が伸びたみたいだな。」
花子「ええ。 歩は1つ上だから…。」
英治「今頃 純平君より大きくなってたな。」
花子「英治さんの息子ですもの。 ノッポになったはずよ。」
村岡家
(足音)
庭
「お話のおばさん!」
子どもたち「おばさん!」
「お話 聞かせて!」
子どもたち「聞かせて 聞かせて!」
花子「ちょっと待ってね。」
工房
花子「今日は 何のお話がいい?」
「せ~の!」
子どもたち「『王子と乞食』!」
花子「また?」
庭
花子「『ある日 ロンドンの片隅に住んでいた キャンティという貧乏人のうちに 男の子が生まれました。 そして それと同じ日に 同じロンドンのチューダーという家でも 男の子が生まれました。 このチューダー家は 大きな宮殿でした』。」
蓮子「英治さん ごきげんよう。」
英治「ああ… 蓮子さん いらっしゃい。」
蓮子「あちらが 村岡花子さんよ。」
花子「『チューダー家に男の子が生まれたのを 知って お祝いをしました』。」
黒沢「子どもたち 顔を輝かせて聞いていますね。」
蓮子「ねっ? 花子先生なら ぴったりじゃなくて?」
黒沢「うん。」
居間
黒沢「JOAKで番組を作っております 黒沢と申します。」
花子「JOAKって あのラジオ局の?」
黒沢「ええ。」
蓮子「黒沢さんは 福岡で新聞記者をなさっていたの。 それが いつの間に JOAKにお勤めになっていたのか 私も知らなかったけれど また ご縁が出来てね。」
花子「あの… ご用件というのは?」
黒沢「村岡花子先生。 是非 我々のラジオ番組に 出演して下さい。」
花子「てっ…。 ラジオに?」
<てっ! 花子がラジオに。 ごきげんよう。 さようなら。>