ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第124回「ラジオのおばさん誕生」【第21週】

あらすじ

花子(吉高由里子)がラジオの語り手を始めて一週間たったある日、蓮子(仲間由紀恵)がある女性を連れて村岡家を訪れる。そのしょうすいした女性がもも(土屋太鳳)であることに気づき、驚く花子と英治(鈴木亮平)。北海道で幸せに暮らしているとばかり思われていたももは、すっかりやつれていた。夫を亡くし、北海道での生活に耐え切れずに逃げ出してきたことを聞いた花子は、何も気づいてやれなかったことを悔いる…。

124ネタバレ

JOAK東京放送局

スタジオ

有馬「ただいまから 『コドモの時間』の放送です。」

花子「ぜ… 全国のお小さい方々 ごきげんよう。」

<花子が 翻訳家として活躍する一方 ラジオのおばさんとしての 第一歩を踏み出しました。>

<それから 1週間後の事でした。>

村岡家

書斎

蓮子「ごきげんよう。 はなちゃん。」

花子「はい。」

玄関

花子「蓮様 どうなさったの? てっ… もも!?」

蓮子「ももちゃん。」

もも「ご無沙汰してます… お姉ちゃん。」

<北海道に嫁いで 幸せに暮らしていたはずの ももに 何があったのでしょうか?>

居間

蓮子「最初 うちにいらした時は あの ももちゃんだなんて ちっとも気が付かなくて 驚いたわ。 私は ももちゃんが小さい頃 甲府のおうちで お会いしたきりだから。

英治「僕らも 結婚式以来です。 そうだよね? ももさん。」

もも「あ… はい…。 結婚式の時は 高い旅費を出して頂いて ありがとうございました。」

英治「そんな そんな。 こちらこそ 遠い所を駆けつけて下さって ありがとうございました。」

花子「それにしても 突然 蓮様と一緒に来るんだもん。 びっくりしたわ。 さあ いっぱい焼いたから 遠慮しないで 好きなだけ食べて。」

もも「頂きます。」

花子「もも…。 東京に来るなら 連絡してくれてもよかったのに。 旦那さんと一緒に来たの?」

蓮子「ももちゃんは 北海道の生活に耐えきれずに 逃げてきたそうよ。」

もも「主人は 去年 亡くなって…。」

花子「お姉やん そんな事 ちっとも知らなくて…。」

もも「知らせる余裕がなくて…。」

蓮子「北海道で 偶然 はなちゃんの ラジオ放送を聞いたんですって。 お姉さんの声を聞いたら 居ても立っても いられなくなって 嫁ぎ先のおうちを 飛び出してきたそうよ。」

花子「どうして 蓮様のとこに?」

蓮子「私が書いた記事が 雑誌に出て以来 苦しい境遇に身を置く女性が 何人も訪ねていらっしゃるの。」

英治「ああ…。 『女性も 自らの人生を生きてよい』 という あの記事ですか。」

蓮子「ええ。 北海道からの船の中で ももちゃんも うわさを聞いたらしくて。 ねっ? ももちゃん。」

もも「記事を書いた作家の先生の お宅に行けば ごはんも食べさせてもらって 泊めてもらえるって聞いて。 まさか… お姉やんの友達の 蓮子さんとは思わなかった…。」

花子「とにかく 元気でよかった。 会えてよかった。」

英治「ももさん。 よければ このうちに泊まって下さい。」

もも「いや でも…。」

英治「仕事関係の方たちや 近所の子どもたちも 大勢集まってきたり にぎやかなうちですけど いつまでも いたいだけ いて下さい。」

花子「ええ。 是非 そうして。」

蓮子「よかったわね。 ももちゃん。」

もも「ご迷惑をおかけしますが よろしくお願いします。 お願いします。」

玄関前

花子「蓮様… ももの事 ありがとう。」

蓮子「ううん。」

花子「はあ… もも… 昔は いっつも にこにこ笑ってたのに…。」

蓮子「ももちゃん あまり話したがらないけれど 北海道での暮らしは 相当 過酷だったようよ。 子どもがいなかった事もあって ご主人が亡くなってからは 親族の方たちから あまり いい扱いを 受けていなかったようで…。」

花子「ももが逃げ出すほど つらい思いしてたのに 私 ちっとも 気付いてやれなくて…。 手紙の返事もないのも きっと忙しいからだろうって 思って…。 もっと早く 気付いてやればよかった。」

蓮子「はなちゃん。」

花子「私… もものために 何をしてやれるのかしら。」

居間

もも「おらの暮らしとは 全然違う…。」

JOAK東京放送局

応接室

(ドアが開く音)

花子「あっ… 皆様 ごきげんよう。」

漆原「どうも。 『コドモの新聞』大変結構だと 局長も褒めてましたよ。」

黒沢「村岡先生の語り口が 親しみやすくて よいと 感想の手紙が来ています。 おおむね 好評ですよ。」

花子「そうですか。 うれしいです。 でも まだ ちっとも慣れなくて 緊張で毎日震えています。」

有馬「では ご自分で 原稿に 手を加える時間があったら 与えられた原稿を 正確に読む練習をなさって下さい。」

花子「あ… 申し訳ありません。」

漆原「まあ 結構じゃないですか。 今日も お願いしますね。」

<漆原部長は 本当は どう思っているのか いまひとつ 腹の中が分からない人です。>

黒沢「では スタジオでお待ちしています。 今日も よろしくお願いします。」

花子「お願いします。」

有馬「子ども向けとはいえ 『コドモの新聞』は ニュース番組です。 砕けた語り口というのは 私は いかがなものかと思います。」

<こちらは あからさまに 花子の事を快く思ってませんね。>

花子「お母ちゃま 今日も こぴっと ニュース読むわね。」

村岡家

台所

もも「すごい…。」

英治「ももさん。 どうしたんですか?」

もも「すいません。 お夕飯の支度でもと 思ったんですが 台所の使い方が分からなくて…。」

英治「それは 助かります。」

英治「ここを ひねると…。」

もも「わっ。 こんな簡単に火が…。」

英治「ガスで火がつく仕組みなんです。」

もも「ガス?」

英治「はい。 花子さんの火事の負担を なるべく減らして 翻訳や執筆の仕事に 専念してもらいたいので 思い切って ガスを引いたんです。」

もも「お姉やんは 幸せ者だな…。」

JOAK東京放送局

スタジオ

有馬「続きまして 『コドモの新聞』のコーナーです。 お伝えするのは 村岡花子先生です。」

花子「全国のお小さい方々 ごきげんよう。 これから 皆様方の新聞のお時間です。」

村岡家

居間

ラジオ・花子『チャップリンが 急に帰ってしまいました。 皆さん 活動写真の滑稽者で 世界一になったチャーリー・チャップリンが 先月の14日 ひょっこり 神戸へ着いて 大変な歓迎を受けながら 東京に来た事をご存じでしょう。 それから ちょうど20日目です。 泊まっていたホテルを ふらりと飛び出して 風のように東京の町を 自動車で乗り回したり 例のステッキを振り振り 散歩したり…』。

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「今日の新聞のお時間は ここまでです。 また お話ししましょうね。 それでは 皆さん さようなら。」

村岡家

<翌日 ももの事を知らされた 吉平たちが 甲府からやって来ました。>

玄関

吉平「はな! 電報もらって びっくりしたじゃん。」

ふじ「ももが北海道から 戻ってきたって本当け?」

花子「もも 中にいるから 早く入って。」

居間

吉平「もも…。」

ふじ「もも…。」

もも「おかあ…。 おかあ…。 会いたかったよ…。」

ふじ「もも…。」

もも「おかあ…。」

ふじ「もも…。 もも…。」

(泣き声)

<想像もつかないような苦労を ももは 乗り越えてきたのかもしれません。 ごきげんよう。 さようなら。>

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