ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第125回「ラジオのおばさん誕生」【第21週】

あらすじ

もも(土屋太鳳)に会うために吉平(伊原剛志)とふじ(室井滋)が上京し、吉太郎(賀来賢人)とかよ(黒木華)も駆けつけて、久しぶりに一家全員が顔を合わせる。だが、食事の間もももはどこかうつろな様子で、花子(吉高由里子)たちは心配を募らせる。兄姉たちに誘われてかよの店にやって来たももに、花子は「一緒に暮らそう」と持ちかけるが、ももは胸の内にためこんでいた気持ちを次第に花子にぶつけ始める…。

125ネタバレ

村岡家

玄関

花子「てっ…。 もも!?」

蓮子「ももちゃん。」

<北海道に嫁いだももは 夫に先立たれ 東京へやって来ました。>

もも「ご無沙汰してます。」

居間

かよ「もも… よく来たじゃん。」

吉太郎「もも。 しばらくじゃんな。」

もも「かよ姉やん。 兄やん。」

<そして 安東家の家族全員が 本当に久しぶりに 顔をそろえました。>

花子「兄やんが すっかり 年取っちまったから もも 戸惑ってるだよ。」

吉太郎「何だと? はなだって年を取ったら。 なあ もも。」

もも「うん。」

かよ「もも。 北海道は どんなとこだったでえ?」

もも「おとうが言ってたとおりのとこ。」

吉太郎「旦那は どんな人でえ?」

もも「おとうが言ってたとおりの 働きもん。」

花子「もものご主人… 去年 病気で亡くなったそうで…。」

吉平「ほうだっただか…。」

ふじ「もも… 苦労しただね…。 ふんだけんど ももが元気でよかったよう…。 こうして また みんなで集まるこんできて 本当に本当にうれしいよ。」

吉平「ほうだな。」

花子「さあ 頂きましょう。 このごちそう 全部 ももが作ってくれただよ。」

かよ「ここんちの台所は 何でも そろってて びっくりしたら?」

吉太郎「ほれじゃ 頂きます。」

一同「頂きます。」

吉太郎「おとう。 おかあ。」

吉太郎「うん。 もも うめえな。」

かよ「うめえよ。」

かよ「うん。 うめえ。」

英治「お義兄さんも どうぞ。」

カフェー・タイム

かよ「絵描きさん。 今日は 身内だけで 貸し切りなんですけど…。」

旭「これで 飲めるお酒下さい。」

かよ「また やけ酒ですか? どうぞ。 かよ姉やん特製のコーヒーじゃん。」

もも「頂きます。 あ…。」

村岡家

居間

英治「花子さん 時折 ももさんに 本や手紙は送ってましたけど このところ 返事がなくて おかしいと思ってたんです。」

ふじ「ももは 北海道で どんな暮らしをしてたずら…。」

カフェー・タイム

花子「もも。 もう 北海道には 戻らんでいいだよ。」

かよ「ほうだよ。 逃げ出すほど つらかったとこなんか 戻るこんないさ。」

花子「もも。 お姉やんと一緒に暮らそう。 英治さんは 優しい人だから ももは 何も気にしなんでいいだよ。 おら… もっと ももの事 分かってやらんきゃ…。」

もも「お姉やんには 分からないと思う。 あんなに いい暮らしして 立派な仕事して… 旦那さんにも 大切にしてもらって…。 幸せなお姉やんには 私の気持ちなんか分かりっこない。 どうして こんなに違うんだろう…。 同じおとうとおかあから 生まれたのに…。」

吉太郎「もも。 おらも昔 同じこん考えた事がある。 『はなは 東京の女学校行って 最高の教育受けてるに 何で 長男のおらが 地べた はいつくばって 百姓やってるずらか』って…。 あの頃ぁ おとうを恨んでた。」

吉太郎「あの人は 口では 『人間は平等だ』とか 言ってるけんど はなだけを特別扱いしただ。 もも。 いいから 全部 ぶちまけちめえ。 腹ん中にたまってるこん 言っちめえ。 何で逃げてきたのかも 全部 話してみろし。」

もも「食べる物も着る物もなくて 本当に 冬はつらかった…。 雪ん中 はだしで仕事したり…。 それでも まだ あの人が生きてた頃は 頑張れた。 みんなで必死に土地耕してれば そのうち 楽な生活が できるようになるって信じて 来年こそは 来年こそはって 頑張ってた。」

もも「…けど うちの人が 病気で働けなくなったら 親兄妹みんな 冷たくなって…。 薬買うために お金借りようとしたけど みんな その日 生きていくのに 精いっぱいで 貸す金なんか ないって言われた。 最後は 葬式も出してやれなかった…。」

かよ「旦那さんが亡くなってっからは どうしたでえ?」

もも「誰も助けてくれなくて… 住むうちもなくて… 馬小屋で寝てた。 町に出た時 ラジオから お姉やんの声が聞こえてきて…。」

回想

有馬『お伝えしますは 村岡花子先生です』。

花子『全国の お… お小さい方々 ごきげんよう』。

回想終了

もも「その時 思った。 私には こんなに立派な お姉やんがいるのに こんな所で 何やってるんだろうって…。 けど… お姉やんに会ったら もっと惨めな気持ちになった…。 お姉やんが 羨ましくて羨ましくて…。 何で おらと こんなに違うだって…。」

吉太郎「もも。」

村岡家

居間

吉平「全部 俺のせいだ…。 俺が ももを 北海道なんかに嫁がせなんだら ほんな思いしなんで済んだに…。」

(泣き声)

吉平「ふじ…。 ももを甲府に連れて帰ろう。」

花子「おとう。 おかあ。 甲府に帰っても ももは 肩身が狭いだけじゃん。 ここで 一緒に暮らす。 今の私があるのは 家族みんなが働いてる中 私だけ 思いっきし 勉強さしてもらったからじゃん。 ももにも感謝してるだ。 ほれを少しでも返したいの。」

英治「僕からも お願いします。」

カフェー・タイム

かよ「絵描きさん。 もう 店じまいなんで。」

旭「あの…。 今日は 一枚も売れなかったんで この絵 買ってもらえませんか? 調子… よすぎますよね。 すいません…。 いいです。 差し上げます。」

かよ「何の絵?」

かよ「てっ…。」

かよ「えっ… これ… もも?」

(かよとももの笑い声)

(笑い声)

<ももが ようやく 昔の笑顔を見せてくれました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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