あらすじ
もも(土屋太鳳)をモデルにした絵が完成し、旭(金井勇太)から結婚を申し込まれたももは、申し出を断ってしまう。花子(吉高由里子)と英治(鈴木亮平)が見守る中、旭は「ももさんを描いているうちに心境が変わった。これからは芸術家を気取るのではなく地道な仕事につく。生活の苦労はかけない」と約束する。しかしももは、自分はこんな絵を描いてもらうようなすてきな人間ではない、北海道でいろいろあったと話す…。
128回ネタバレ
村岡家
居間
もも「やっぱり 変な絵に なるんじゃないですか?」
旭「変な絵には しませんってば。」
(笑い声)
書斎
英治「あの2人 案外 お似合いかもしれないな。
花子「ええ。」
居間
旭「この絵が完成したら 言おうと思っていた事があります。 僕と結婚して下さい!」
もも「…できません。」
旭「僕は… ずっと 周りの人たちをびっくりさせる ような絵を描いて 有名になりたいと思っていました。 でも ももさんを描いているうちに 分かったんです。 周囲に才能を評価されるよりも もっと大切な事があると。」
旭「それは… 描く対象を ちゃんと愛する事です。 芸術家気取りは もう やめにします。 これからは 地道な仕事に就いて 一生懸命 働きます。 生活の苦労も 絶対にかけません。 それでも 駄目ですか?」
もも「違うんです。 こんなすてきな絵を 描いてくれて 本当にうれしいです。 でも… これは 本当の私じゃありません。 ほんの少し前まで 北海道で ひどい暮らしをしてました。 2年前に夫を亡くして… いろいろあって 東京に来ました。」
旭「知ってます。」
もも「え…?」
旭「実は… 聞いてしまったんです。 初めて お会いした時に かよさんのお店で…。」
回想
もも「食べる物も着る物もなくて… 冬は 本当につらかった。 雪ん中 はだしで仕事したり…。 誰も助けてくれなくて… 住むうちも なくて… 馬小屋で寝てた。」
回想終了
旭「僕なんか 想像もできないような 苦労をなさったんですね…。 でも 僕は それを聞いて… どうしようもなく あなたに引かれました。 そんなに過酷な生活の中でも 生きようとする強さを 持ち続けた。」
旭「僕は あなたの そんな強さに 引かれたんです。 その気持ちを 僕は この絵に込めました。 ももさん。 これからは 僕に… ももさんを守らせて下さい。」
花子「もも。」
庭
<それから 1年後の夏。 旭とももは 結婚し 村岡家の近所に家を借りました。>
工房
<あの時 旭が描いた ももの絵は 展覧会で3等賞になりました。>
<旭は 英治に 印刷の技術を教わりながら 青凛社で働いております。>
玄関
<そんな ある日の事 珍しいお客さんが訪ねてきました。>
花子「てっ… 朝市 どうしたでえ?>
朝市「はな しばらく。 今日は 相談があって来ただ。」
居間
朝市「ももちゃん。 ご結婚 おめでとうごいす。」
もも「ありがとうございます。」
朝市「もうすぐ 赤ちゃんも生まれるだって。 本当におめでとう。」
もも「ありがとう。」
花子「ありがとう。 それで 相談って?」
朝市「これだけんど…。」
花子「生徒たちの つづり方。」
朝市「文章を書く事で 子どもたちの考える力を 伸ばしてやりてえと思って ずっと つづり方の授業に 力を入れてきただ。」
英治「つづり方は 物事を 客観的に捉える力が培われるし 批評の目も養われる。」
朝市「長え事 指導してきて 随分 生徒たちの作品が たまったもんで 思い切って 本にしてみっかと 思うだ。」
花子「いいじゃんね! 自分の書いた つづり方が 本になったら 子どもたち 喜ぶわ。」
朝市「青凛社で こりょう 本にしてもらえんかと思って 今日は 頼みぃ来たです。」
英治「もちろん。」
朝市「よかった。」
英治「では お預かりします。 すぐに 見本組みに 取りかかりますね。」
朝市「よろしくお願えします。」
英治「ゆっくりしていって下さい。」
朝市「ああ ほうだ。 こないだ 武に誘われて 甲府で演芸会に行ったら はなの ものまねしてる 芸人さんがいたさ。」
花子「てっ… 私のものまね?」
回想
芸人「会場の大きい方々。」
(笑い声)
芸人「ごきげんよう。 これから 皆様方の ラジオのおばさんの時間です。 また お話ししましょうね。 それでは 皆さん ごきげんよう。 さようなら。」
(拍手と笑い声)
回想終了
朝市「ごきげんようのおばさんって はな すっかり有名人じゃんね。」
花子「てっ…。」
朝市「はなの『ごきげんよう』が みんなに広まって おらもうれしいだよ。」
花子「朝市…。」
朝市「はなが東京の女学校から 甲府に帰ってきて 初めて 『ごきげんよう』って言葉を聞いたときゃあ えれえ びっくりしたけんどな…。 今 思うと はなが すっかり 東京の お嬢様みてえになっちまって 寂しかっただな。」
朝市「ふんだけんど はなが 女学校で うんとこさ 頑張ってるの分かって おらも もう一度 勉強してみよう って気持になれただ。 はなには 感謝してる。 おらが教師んなれたのは はなのおかげじゃん。」
花子「朝市… 急に どうしたでえ?」
朝市「ず~っと お礼が言いたかっただ。」
花子「朝市…。」
朝市「今日は もう一つ 報告があって来ただ。」
花子「何?」
朝市「はな。 ももちゃんも聞いてくりょう。」
朝市「おら… 今度 結婚するだ。」
2人「てっ!」
花子「結婚? 朝市 おめでとう! 相手は どんな人? 甲府の人?」
朝市「ああ。 教員仲間の妹じゃん。」
もも「どんな女の人?」
朝市「気さくで よく笑う人だ。 本 読むのが好きで…。 たまに怒ると おっかねえけんどな。」
花子「へえ~!」
もも「お姉やんみたい。」
花子「えっ?」
(笑い声)
朝市「顔は 似てねえけんどな。」
花子「リンさん 喜んでたら?」
朝市「うん。 結婚するって言ったら うちのおかあ 急に泣きだして びっくりしたさ。 この年まで独りだから もう諦めてただとう。 おかあにも 随分 心配かけちまった。」
花子「よかったね 朝市…。 おめでとう。」
朝市「はな… 何で はなが泣くでえ?」
花子「だって… 私 本当にうれしくって…。 こんな ちっくい時から知ってる 朝市が お嫁さん もらうと思ったら…。」
朝市「おら… はなと ももちゃんには こぴっと報告したかっただ。」
花子「本当におめでとう 朝市。 はあ~ とうとう もらったか~…。」
<そして 9月の半ばの事です。>
(荒い息遣い)
もも「う~ん… う~…。」
花子「もも…。」
庭
(産声)
花子「元気な女の子よ。」
居間
もも「ごきげんよう。」
<ももと旭の赤ちゃんは 歩と同じ 9月13日に 誕生したのでした。 ごきげんよう。 さようなら>