ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第129回「新しい家族」【第22週】

あらすじ

もも(土屋太鳳)が産んだ女の子は、英治(鈴木亮平)によって「美里」と名づけられ、花子(吉高由里子)たちは新しい家族に目を細める。このころからラジオ「コドモの時間」は軍事関係のニュースが多くなるが、花子はあくまで子どもたちに親しみやすい内容になるよう心がけていた。そんな折、旭(金井勇太)が体調を崩し、結核にかかってしまう。ももは花子に、旭の看病に専念したいので、しばらく美里の面倒を見てほしいと頼む。

129ネタバレ

村岡家

居間

かよ「かわいいね~。」

花子「見てるよ。」

<歩の誕生日と同じ 9月13日。 ももと旭に かわいい女の子が生まれました。」

かよ「おめでとう もも。 よく頑張ったじゃん。」

もも「ありがとう。」

旭「よし! やっぱり これだな。」

英治「益田… 桃太郎。 う~ん… ちょっとね…。」

居間

もも「美里…。」

旭「やっぱり 桃太郎の方がよくないか?」

(首を横にふるもも)

旭「そうかな~…。」

<やっと 名前が決まって よかったですね。>

花子「ごきげんよう。 美里ちゃん。」

JOAK東京放送

廊下

花子「ごきげんよう。」

<3か月が過ぎました。>

応接室

(ノック)

花子「はい。」

漆原「どうも 村岡先生。 ごきげんよう。」

花子「漆原部長 ごきげんよう。」

漆原「今日も 随分と 原稿に手を入れてるようですね。」

花子「あと少しで終わります。」

漆原「今日は こちらの原稿に 差し替えて下さい。」

花子「えっ…。でも 先ほど 黒沢さんと相談して 今日は この原稿にと…。」

漆原「先生の担当なさる週は のんきな話題が多すぎるのでは ないでしょうかねえ。 ご自分の人気取りのために 面白おかしい話ばかりを 取り上げるのは いかがなものかと。」

花子「そんな事…。」

漆原「今日は こっちのニュースにして下さい。」

花子「この内容なら 明日でもいいんじゃないですか? 時間もないですし。」

漆原「手直しせずに そのまま 読めばいいじゃないですか。 じゃあ 後ほど。 ごきげんよう。」

(ドアが閉まる音)

花子「駄目だ。 これじゃ 子どもたちに伝わらない。」

<花子も負けていません。>

スタジオ

花子「全国のお小さい方々 ごきげんよう。 これから 皆様方の新聞のお時間です。 満州でお働きの兵隊さんを お助けして いろいろな手柄を立てる 犬の兵隊さん。 すなわち 軍用犬のお話は つい この間も 申し上げましたが 陸軍では この4月から 5年掛かりで この軍用犬を どしどし育てる事になりました。 そこで軍用犬の学校が…。」

漆原「また 原稿直したのか。」

黒沢「…はい。」

花子「満州の公主嶺という所に出来 利口で勇ましい性質の犬を…。」

村岡家

玄関

花子「ただいま帰りました。」

英治「花子さん お帰り。」

花子「何か あったの?」

英治「旭君が倒れたんだ。」

花子「えっ…。」

居間

もも「旭さん ずっと せきをしていて 熱も下がらないから 病院で診てもらったら 結核でした。」

花子「結核…。」

もも「入院して 経過見てみないと よく分からないって…。 でも よくないみたいで…。」

花子「そんな…。」

もも「お姉やん。 しばらくの間 美里を預かってもらえませんか?」

花子「もちろん いいわよ。」

もも「助かります。」

花子「もも…。 お姉やんに遠慮なんかしないで。」

もも「ありがとう…。」

花子「旭さんとも結ばれて こんなかわいい赤ちゃんも 授かって… これからって時に どうして ももだけ あんな悲しい思いをしなきゃ いけないの?」

英治「旭君が一日も早く よくなってくれる事を祈ろう。」

花子「ええ…。」

書斎

(美里の泣き声)

花子「美里ちゃん…。」

(泣き声)

花子「ミルクは さっき飲んだばっかりだし おしめも替えたし…。」

(泣き声)

英治「花子さん。」

花子「お帰りなさい。」

英治「随分 元気に泣いてるね。」

花子「そうなの。 さっきまでは いい子だったんだけど。」

英治「美里ちゃん。 今日は お友達を連れてきたよ。」

花子「お友達?」

英治「ほら!」

花子「てっ! かわいい。 どうしたの?」

英治「いつの間にか 僕の後 ついてきちゃって 帰らなくてさ。」

花子「へえ~!」

英治「ほら。 この子 うちで飼わない?」

花子「美里ちゃんも賛成よね。」

(笑い声)

英治「名前は どうしようか?」

花子「う~ん…。」

英治「う~ん。」

花子「ねえ テルは どう?」

英治「テル?」

花子「泣いてた美里ちゃんの涙が あっという間に晴れたから てるてる坊主のテル!」

英治「てるてる坊主のテルか! うん いいね。」

<村岡家に新しい家族が増えました。>

書斎

吉平『旭君の事 心配してます。 はな 忙しいとは思うけんど もものこん 助けてやってくりょう』。

ふじ『何か 困ったこんがあったら すぐに言うだよ。 いつでも飛んでくから。 おとう おかあより』。

もも「お姉やん? こんにちは!」

花子「美里ちゃん。 お母ちゃまよ。」

居間

花子「転地療養?」

もも「空気のいい所で 2年くらい じっくり治療した方がいいって お医者さんが。 私も 旭さんに ついていきたいんです。」

英治「旭君も ももさんがついていれば 心強いと思うよ。」

もも「ええ…。 ただ… 赤ちゃんには うつりやすい病気だから よくなるまで 一緒にいない方がいいって…。 美里には 申し訳ないけれど 今は 旭さんのそばに いてあげたいんです。」

もも「前の主人は お医者さんにも 連れていけなかった…。 だから 旭さんには 精いっぱいの事したいんです。 旭さんが退院できるまで 美里をお願いできませんか?」

花子「いいわよ。 うちは いくらでも。」

もも「本当にすみません…。」

英治「とんでもない。」

もも「美里… よかったね。 お姉やん。 お姉やんに ずっと謝りたかった事があるの。」

花子「えっ…?」

もも「東京に来たばかりの頃 私… お姉やんに ひどい事 言ったでしょう?」

回想

もも「幸せなお姉やんには 私の気持ちなんて 分かりっこない。」

回想終了

もも「私… お姉やんは ずっと 日の当たるところを歩いてきて 惨めな思いなんて した事ない人だと思い込んでた。 でも 違った。 私の知らないところで 悔しい思いも いっぱいして 涙も いっぱい流して…。 私… お姉やんが羨ましくて そんな事も分からなかった…。」

回想

漆原「貧しい家の出である あなたが 殊更に 『ごきげんよう』という言葉を 使いたい気持ちは分かります。 しかし 『ごきげんよう』が 似合う人間と似合わない人間が いるんですよ。」

花子「そうでしょうか。 人生は うまくいく時ばかりでは ありません。 どうか 全ての人たちが 明日も元気に 無事に 放送を聞けますようにという 祈りを込めて 番組を終わらせたいんです。」

花子「それでは 皆さん。 ごきげんよう。 さようなら。」

もも「ごきげんよう…。」

回想終了

もも「あの時 お姉やんの 『ごきげんよう』っていう言葉が ス~ッと心に入ってきて おらまで ここが温かくなった。 ほれなのに… ずっと 素直に謝らなんで ごめんなさい!」

花子「ううん…。 お姉やんこそ ももの気持ち 分かってやれなくて ごめんね。」

もも「お姉やん… おら もう これっぽっちも 自分を惨めだなんて 思っちゃいんよ。 旭さんみたいな優しい人に 出会えて お姉やんやお義兄さんに 祝福してもらって 美里も 元気に生まれてきてくれて…。 本当に… 今は毎日 旭さんの看病できて…。 本当に幸せ。 ほう思えたのは お姉やんのおかげだよ。」

花子「もも…。」

英治「ももさん。 美里ちゃんの事は 心配しなくていいから 旭君の看病 しっかりやってあげて下さい。」

もも「はい。 ありがとうございます…。」

花子「もも… 大丈夫よ。 旭さん きっと元気になるから。」

もも「ありがとう。」

<こうして ももは 美里を花子たちに託し 旭の療養先へ向かいました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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