ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第130回「新しい家族」【第22週】

あらすじ

5年がたった1938年(昭和13年)。もも(土屋太鳳)と旭(金井勇太)の間にもう一人女の子が生まれた。美里(岩崎未来)は、花子(吉高由里子)と英治(鈴木亮平)の養女となっていた。美里から「動物のニュースを読んでほしい」と頼まれた花子はラジオ局へ向かうが、記事は日中戦争や軍隊に関するものばかり。花子は漆原(岩松了)に相談するが、「この戦時下において動物の話などどうでもよい」と一蹴されてしまう…。

130ネタバレ

村岡家

居間

英治「ももさん。 美里ちゃんの事は 心配しなくていいから 旭君の看病 しっかりやってあげて下さい。」

もも「はい。」

花子「大丈夫よ。 旭さん きっと元気になるから。」

もも「ありがとう。」

<それから 5年たちました。>

工房

<ももの献身的な看病のおかげで 旭は 元気になり 英治の頼もしい片腕として 働いています。>

英治「旭君。 ご苦労さん。 お昼にしようか。」

旭「はい。」

居間

<ももと旭の間には もう一人 女の子が生まれました。>

<花子たちが長らく預かっていた 美里は ももと旭のたっての願いで 村岡家の養女になりました。>

<愛犬のテルも こんなに大きくなりました。>

美里「お母ちゃま 行ってらっしゃい。」

花子「美里。 もも叔母ちゃまの言う事 聞いて いい子にしてるのよ。」

美里「はい。 夕方 ラジオ 聞くからね。」

花子「行ってきます。」

JOAK東京放送局

廊下

花子「ごきげんよう。」

応接室

(ドアが開く音)

花子「あっ…。」

漆原「今日の記事は まだ決まらないんですか?」

花子「すいません…。 あの… 動物の記事は ありませんか?」

漆原「はっ?」

花子「ほら 動物園から珍獣が逃げ出して 大騒ぎとか 以前は そういうニュース たくさんあったじゃないですか。」

漆原「村岡先生。 この時局下において 珍獣が どうのこうのって事は どうでもいいんです!」

花子「分かりました…。」

<前年 日中戦争が勃発し この春には 国家総動員法が出来 国民は 総力を挙げて 軍事体制への協力が 求められていました。 『コドモの新聞』のニュースも 軍事の関するものが 大半を占めるようになりました。>

町中

(セミの声)

「あっ! 今日は ラジオのおばさんの日だ!」

「もうじき始まるぞ!」

子どもたち「ごきげんよう!」

村岡家

居間

有馬『JOAK東京放送局であります。 ただいまから 『コドモの時間』の放送です』。

美里「楽しみだな~。 今日ね お母ちゃまにお願いしたの。」

英治「えっ? どんなお願い?」

美里「美里が好きな 動物のお話をしてって。」

英治「へえ~!」

JOAK東京放送局

スタジオ

有馬「さて 続きまして 皆さん お待ちかね 村岡花子先生の 『コドモの新聞』であります。」

花子「全国のお小さい方々 ごきげんよう。 『コドモの新聞』のお時間です。 はるか太平洋の向こう カナダのバンクーバーという港に住む 日本人は 青年会を作っています。」

村岡家

居間

花子『その中の少年たち 30人は クリスマスやお正月のお小遣いを 倹約して 貯金をしていました。 それが 25円53銭になりましたので 陸軍省宛てに送ってきました。』

宮本家

居間

花子『『このお金で 軍馬や軍用犬や軍用鳩のため 何か ごちそうを してあげて下さい』と…』。

蓮子「あっ お帰りなさい 純平。」

浪子「お帰り。」

純平「ただいま戻りました。」

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「また1週間たったら お話ししましょうね。 それでは 皆さん ごきげんよう。 さようなら。」

村岡家

居間

美里「動物のお話は?」

英治「う~ん… 軍馬 軍用犬 軍用鳩って お母ちゃま 言ってただろ? あれは 兵隊さんたちのお手伝いをする お馬や犬や鳩の事だよ。」

旭「まあ 動物の話には 違いないんですけどね。」

もも「美里ちゃんには ちょっと難しかったかな。」

宮本家

居間

富士子「カナダの少年たちは 偉いわね。 お小遣いをためて 陸軍省に送るなんて。」

純平「富士子。 一番立派なのは お国のために戦っている 兵隊さんたちじゃないか。 はあ… 僕も 早く入隊したい。」

蓮子「純平…。」

純平「お母様。 僕は 軍人になりたいです。」

浪子「純平! 立派な心掛けです。」

純平「この間 ラジオで言っていました。 少年航空兵は 15歳から募集があるそうです。 試験を受けさせて下さい。」

蓮子「駄目です。 いけません。」

純平「お母様… どうしてですか?」

蓮子「あなたは まだ 勉強しなければならない事が たくさん あります。 戦地が どういうところかも 分かっていないでしょう。」

純平「僕は お国のために身をささげ お母様たちを お守りしたいんです!」

後日

花子「純平君が そんな事を? 蓮様。 龍一さんは 何て?」

蓮子「龍一さんには とても そんな事言えないわ。」

花子「どうして?」

蓮子「彼は 中国との戦争を 終わらせるために 昔の仲間たちと活動をしているの。 家族には 迷惑かけたくないと言って あまり 話してはくれないけれど…。」

<戦争の影は 人々の暮らしの中に 忍び寄っておりました。>

村岡家

美里「テル。」

梶原「ごめんください!」

花子「は~い。」

玄関

花子「梶原さん ごきげんよう。」

梶原「やあ。」

花子「お暑かったでしょう。 てっ! スコット先生!」

スコット「Hello, Hana.」

居間

梶原「スコット先生には 少し前から 修和女学校の仕事の合間に 聡文堂を手伝って頂いていたんだ。」

花子「そうだったんですか!」

梶原「ありがとう。 これからは なかなか 翻訳物は 出しづらくなると思うけど まあ できる限りの事は やろうと思ってね。 これ… 彼女のご推薦の本なんだけど どう思う?」

花子「『パレアナ! 私の大好きな物語です』 『パレアナ』…。 『どんなつらい時も希望を見出そうとする主人公が素敵ですよね。』

スコット『ええ』

花子「梶原さん この物語は 必ず 日本でも愛されると思います。」

梶原「じゃあ 決まりだな。 翻訳してくれるよね。」

花子「是非 やらせて下さい! 『スコット先生と一緒に本を 作れるなんて夢のようです』」

スコット『私もです』

花子「スコット先生は 英語が通じる喜びを 初めて私に教えて下さった 恩人なんんです。」

梶原「そう!」

花子『先生方はお元気ですか?』

スコット『何人かが日本を離れ帰国しました』

花子『そうですか… ミッションスクールへの政府の圧力が強まったと聞いて 心配していたのです』

スコット『これからどうなっていくのでしょう』

書斎

(時計の時報)

(扇風機の音)

♬~(ラッパ)

(行進の足音)

(飛行機のエンジン音)

<そんな ある日の事でした。>

「役場から 連絡があったと思いますが この犬は お国のためにお預かりします。」

英治「はい…。」

花子「この犬は 娘と楽しく遊ぶ事しかできません。 お役に立てるかどうか…。」

「お国のためです。」

(鳴き声)

花子「テル…。」

<ほっそりした柴犬のテルが 戦地で勇ましく 戦えるはずが ありません。 役に立たなければ どうなるか。 花子も英治も テルが二度と帰ってこない事を 知っていました。>

居間

もも「お姉やん ただいま戻りました。」

美里「お母ちゃま ただいま!」

花子「あのね…。」

美里「テル! ただいま!」

花子「美里…。」

美里「あれ? テルがいない。 テル! テル! お母ちゃま。 テルは?」

花子「あのね 美里…。 テルは…。」

英治「テルは お仕事に行ったんだよ。」

美里「お仕事?」

英治「うん。 兵隊さんたちを手助けするために 行ったんだ。」

美里「お母ちゃま そうなの?」

花子「ええ…。」

美里「美里も テルを お見送りしたかったのに。」

花子「テルね 目でお話ししてたわ。 『僕 行ってきます。 美里ちゃんに 『ありがとう』って 言って下さい』って。」

美里「テル いつ帰ってくるの? テル 帰ってくるんでしょ? お母ちゃま! テル 帰ってくるわよね?」

<とても本当の事は言えない 花子でした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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