ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第131回「新しい家族」【第22週】

あらすじ

愛犬のテルは戦地からきっと帰ってくる、と美里(岩崎未来)にうそをついてしまった花子(吉高由里子)。その言葉を信じて毎日今か今かとテルの帰りを待つ娘の姿に、花子は胸を痛める。テルはいま何をしているだろうと美里に聞かれるたびに、想像の翼を広げてテルの活躍ぶりを話していた花子は、英治(鈴木亮平)とともに、何か美里を元気づける方法はないかと考えていた。そんなある日、吉太郎(賀来賢人)が村岡家を訪れる…。

131ネタバレ

村岡家

「この犬は お国のためにお預かりします。」

花子「この犬は 娘と楽しく遊ぶ事しかできません。」

「お国にためです。」

<中国との戦争が続き 人々の暮らしの中にも 戦争の影が忍び寄っておりました。 花子も英治も テルが二度と帰ってこない事を 知っていました。」

美里「あれ? テルがいない。 テル! テル! お母ちゃま。 テルは?」

花子「あのね 美里…。 テルは…。」

英治「テルは お仕事に行ったんだよ。」

美里「お仕事?」

英治「うん。 兵隊さんたちを 手助けするために行ったんだ。」

美里「お母ちゃま そうなの?」

花子「ええ…。 テルね 目でお話ししてたわ。 『僕 行ってきます。』 美里ちゃんに 『ありがとう』って 言って下さい」って。」

美里「テル いつ帰ってくるの? テル 帰ってくるんでしょ? お母ちゃま。 テル 帰ってくるわよね?」

英治「美里…。 テルは もう…。」

花子「帰ってくるわよ。 テルは… 兵隊さんのために 一生懸命働いて きっと帰ってくるわよ。」

美里「美里がいい子にしてたら 早く帰ってきてくれる?」

花子「そうね。」

美里「美里 たっくさん いい子にしてるわ。」

<花子は 美里を悲しませたくない一心で 嘘をついてしまいました。>

寝室

美里「テル ちゃんと ごはん食べたかな?」

花子「心配しなくても大丈夫よ。 『今日も一日 よく頑張って お仕事しましたね』って 兵隊さんたちから たっくさん ごはんを頂いてるわ。」

美里「ねえ お母ちゃま。 テルは 今 どこにいるの?」

花子「それは…。」

英治「海の向こうに渡るために きっと 今頃 お船の上だよ。」

美里「テル 兵隊さんたちと一緒に 大きな船に乗ってるわ。」

花子「うん。 お船の上で 兵隊さんたちに かわいがられてるわね。」

美里「そんな遠い所に行って 迷子にならない?」

花子「兵隊さんたちがついてるから 心配いらないわ。」

美里「よかった。 テル 早く帰ってこないかな~。」

就寝後

花子「どうしよう…。 あんな事 言っちゃったけど…。」

英治「しょうがないよ。 テルが もう帰ってこないなんて… 言えないよ。」

花子「そうよね…。」

書斎

(戸が開く音)

美里「ただいま!」

もも「お姉やん ただいま帰りました。」

花子「お帰りなさい。」

美里「お母ちゃま ただいま!」

花子「あっ… 美里?」

もも「美里ちゃん… 『テルが帰ってきてるかもしれない』って 今日も急いで帰ってきたの。」

花子「そう…。」

美里「テル?」

書斎

<その後も 美里は 毎日 テルの帰りを 心待ちにしていました。>

もも「美里ちゃん。 吉太郎伯父ちゃまが来たわよ。」

美里「伯父ちゃま!」

吉太郎「美里 少し会わないうちに また大きくなったな。」

花子「兄やん いらっしゃい。 久しぶりじゃんね。」

吉太郎「しばらくだな。 みんな 元気そうじゃん。 はい これ 土産だ。」

美里「伯父ちゃま ありがとう!」

もも「てっ… 兄やんが おまんじゅう?」

花子「どうしたの?」

吉太郎「たまには 土産くらい持ってくるさ。 いや… 実を言うと はなに ちょっと頼みがあってな。」

居間

吉太郎「上官のおいっ子が はなのラジオ番組が大好きらしくて。 悪いな。」

花子「ううん うれしい。 はい どうぞ。」

吉太郎「ありがとう。 助かる。」

花子「これぐらい いつでも言って。」

もも「はい。 吉太郎伯父ちゃまが 持ってきてくれた おまんじゅう。」

美里「頂きます!」

花子「うん おいしい?」

(時計の時報)

花子「あっ… 兄やん せっかく来てくれたのに ごめん。」

吉太郎「あっ ラジオ局か。」

花子「美里 いい子にしてるのよ。」

美里「お母ちゃま 行ってらっしゃい!」

花子「行ってきます。」

美里「伯父ちゃま 一緒にお絵描きしましょう。」

吉太郎「ああ。」

花子「もも じゃあ お願いね。」

もも「うん。 行ってらっしゃい。」

花子「行ってきます。」

吉太郎「へえ~ 上手だな。」

美里「テルが兵隊さんを お助けしてるところよ。」

吉太郎「テルは?」

美里「兵隊さんのために働きに行ったの。」

吉太郎「兵隊さんのために? お母ちゃまが そう言ったのか?」

美里「テルが帰ってきたらね いっぱい褒めてあげるの。 ご褒美もあげるのよ。」

もも「(小声で)美里ちゃん 毎日 待ってるの。」

美里「早く帰ってこないかな~。」

吉太郎「美里。 テルは お国のために 身をささげて働いてるんだ。」

美里「でも 帰ってくるんでしょ?」

もも「お仕事が終わったら 帰ってくるって お母ちゃま 言ってたものね。」

美里「美里がいい子にしてたら 早く帰ってきてくれるわよね。 伯父ちゃま?」

吉太郎「帰ってこられなくても テルは お国のために 立派に尽くしたという事だ。」

もも「兄やん。」

美里「テル… もう帰ってこないの? やだ! そんなの嫌!」

もも「美里ちゃん!」

工房

美里「お父ちゃま!」

英治「ん? 美里 どうした? ん? どうした 美里?」

旭「お義兄さん いらしてたんですか!」

吉太郎「申し訳ありません。 自分が 余計な事を言ってしまって…。」

JOAK東京放送局

廊下

漆原「ああ どうも。」

花子「ああ… ごきげんよう。 よろしくお願い致します。」

有馬「あんなにも浮かない顔で 『ごきげんよう』もないものです。」

漆原「原稿さえ読み間違えなければ いいんだ。」

応接室

花子「(ため息)」

(ドアが開く音)

黒沢「村岡先生。 動物のニュースがありました。 いいニュースですよ。」

スタジオ

花子「この軍用犬の中には 皆さんのおうちで飼われていた 犬も たくさんいます。 その中の あるおうちで飼われていた犬が 隠れていた敵を見事に探し出し…。」

黒沢「はい ありがとうございます。 このぐらいの速さで 本番も よろしくお願いします。」

花子「はい。」

有馬「正しい発音 活舌に注意! 一字一句 原稿は 正確に!」

花子「はい。」

有馬「逓信省の目が 厳しくなっていますからね。 原稿を正確に読む事は ますます重要です。」

花子「はい。」

村岡家

居間

英治「おいで 美里。 ラジオ 始まるよ。」

もも「美里ちゃん。」

有馬『さて 続きましては 村岡花子先生の 『コドモの新聞』であります』。

英治「ほら 美里。 お母ちゃまの出番だよ。」

花子『全国のお小さい方々 ごきげんよう。 『コドモの新聞』のお時間です』。

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「さて 次は 犬の兵隊さんに 功労賞が贈られたというお話です。」

村岡家

居間

花子『犬の兵隊さんと呼ばれる 軍用犬は 戦地でお働きの兵隊さんを お助けして 大変 お役に立っていると 何度か お話ししましたね』。

JOAK東京放送局

スタジオ

花子『この軍用犬の中には 皆さんのおうちで飼われていた 犬も たくさんいます』。 その中の あるおうちで飼われていた犬…。」

回想

(犬の鳴き声)

回想終了

花子「テルは 戦地で元気に 兵隊さんのお役に立っています。 テル号は 隠れていた敵を 見事に探し出し 兵隊さんをお守りするという 大変 立派な働きをしましたので この度 功労賞を与えられました。」

村岡家

居間

美里「テル! テルだ! テルがニュースに出たよ!」

JOAK東京放送局

スタジオ

<もちろん 原稿には テルとも テル号とも ひと言も書いてありませんでした。>

花子「今日の新聞のお時間は ここまで。 また明日も お話ししましょうね。 それでは 皆さん ごきげんよう。 さようなら。」

<これは まずい事になりそうです。 ごきげんよう。 さようなら。>

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