あらすじ
美里(岩崎未来)を元気づけたいあまり、軍用犬のニュースに「テル号」と名前を付け加えて読んでしまった花子(吉高由里子)。放送終了後、黒沢(木村彰吾)から「子ども向けのニュースであっても、放送は事実を曲げてはいけない」と厳しく注意され、漆原(岩松了)からも強い非難を受けた花子は、反省とともにラジオ局をあとにする。帰宅した花子は英治(鈴木亮平)から、美里がすごく喜んでいると聞かされ…。
132回ネタバレ
村岡家
居間
花子『さて 次は 犬の兵隊さんに 功労賞が贈られたという お話しです』。
JOAK東京放送局
スタジオ
花子「この軍用犬の中には 皆さんのおうちで飼われていた 犬も たくさんいます。」
村岡家
居間
花子『その中の あるおうちで飼われていた犬…』。
JOAK東京放送局
スタジオ
花子「テルは 戦地で元気に 兵隊さんのお役に立っています。」
黒沢「テル…?」
村岡家
居間
美里「テル! テルだ! テルがニュースに出たよ!」
JOAK東京放送局
スタジオ
<美里を元気づけようと 花子は ニュースの原稿に書かれた軍用犬を テルという名前にして 伝えてしましました。>
有馬「これにて 『コドモの時間』を終わります。 JOAK東京放送局であります。」
有馬「読み合わせの時と 原稿の内容が違いましたね。」
花子「えっ… あ…。」
有馬「テルとか テル号とか。 問題になっても 私は 一切 関わり合いに なりたくございませんので。 では ごきげんよう。 さようなら。」
黒沢「村岡先生。 お話があります。」
花子「はい…。」
廊下
黒沢「先ほどの放送で 原稿にはない事を お話しされましたよね。 犬の名前を テル号と。」
花子「はい… 申し訳ありませんでした。」
黒沢「先生は これまで 子どもたちが理解しやすいように 言い回しを変える事はあっても 今日のように 本番で内容を 変える事は なさらなかったのに なぜ テル号と 付け加えたんですか?」
<まさか 自分の娘を 元気づけたかったからとは とてもじゃないけれど 言えません。>
花子「本当に申し訳ありませんでした。」
黒沢「子ども向けのニュースであっても 事実を曲げてはいけない。 それが放送というものです。 それに 政府の放送への統制が 一層 厳しくなっている事は 先生も ご理解頂いていますよね。 逓信省の検閲を終えた原稿を 変更したとなると…。」
漆原「何!?」
黒沢「あ… 漆原部長…。」
漆原「検閲済みの原稿は 変えてはならないと 何十回も申し上げているのに! 勝手に変えて 逓信省に目をつけられたら 私の首が… 番組に関わった全職員の首が 飛ぶかもしれないんですよ! 局長は 何て?」
黒沢「会議中だったので 聞いていらっしゃらないと 思います。」
漆原「そう…。 この際だから申し上げておきます。 村岡先生は 我々ラジオ局の立場というものを 理解してらっしゃらないようだ。 いいですか? 我々は 国民に 国策への協力を促す立場に あるんです。 先生は そういう社会の事には 全く興味がないかもしれませんが。」
花子「いえ… そんな事ありません。」
漆原「ご婦人というものは 家の事や子どもの事で 頭がいっぱいで ほかの事は 何にも見ないで 生きてますからねえ。」
花子「お言葉ですが 女性の関心は 家の中だけではなく 確実に社会に向いています。」
漆原「では 我々組織の立場も 配慮して頂きたいですね。」
黒沢「村岡先生のお話を楽しみにしている子どもたちのために この番組は続けていきたいんです。」
花子「本当に申し訳ありませんでした。 以後 気を付けます。」
漆原「…ったく。 これだから 女は。」
村岡家
玄関
花子「ただいま帰りました。」
美里「お帰りなさい お母ちゃま! テルは 元気なのね!」
居間
美里「テルは 偉いのよ。」
旭「うん。」
美里「戦争に行って 兵隊さんのお手伝いをしたから テル号っていう名前になったの。 テルより偉い名前なのよ。」
英治「今日 お義兄さんが美里に…。」
花子「兄やんが何か?」
英治「テルは もう戻ってこないって 言われて 美里 泣いてしまったんだ。」
花子「そ… それで?」
英治「でも 放送を聞いてから すっかり元気になった。 テル号は テルだと思ってるよ。」
書斎
回想
黒沢「子ども向けのニュースであっても 事実を曲げてはいけない。 それが放送というものです。」
回想終了
花子「(ため息)」
寝室
英治「今夜は テル テルって 大はしゃぎだったから すぐ寝ちゃったよ。」
(風鈴の音)
英治「花子さん。」
花子「本当はね… 今日の放送でお話しした 軍用犬に 名前は 付いていなかったの。 私が勝手に テル号って付けてしまって…。 ラジオを聞いてくれた子どもたちに 申し訳ない事をしたわ。」
英治「確かに テル号なんて言わない方が 犬を連れていかれた ほかの家の子どもたちも みんな喜んだだろうね。 自分の犬も 戦地で活躍してるんだって。」
花子「ええ…。」
英治「でも…テルの事を 想像してる時の美里は 本当にいい笑顔をしてた。 瞳をキラキラ輝かせて。 花子さんは 今日 美里に すてきな贈り物をしたんだよ。」
花子「そうかしら…。」
英治「僕は そう思うな。」
花子「私… たとえ 世の中が どんな状況になっても この子たちの夢だけは 守りたい。」
英治「ああ。」
<子どもは いつの時代も 美しい夢を持っています。 それを奪ってはならないと 花子は 心に誓いました。>
居間
花子「はい 青凛社でございます。」
宇田川『宇田川満代です。』
花子「宇田川先生。 ごきげんよう。」
宇田川『報告したい事があるの。 3時に かよさんのお店に 来てちょうだい。』
花子「てっ… 今日の3時ですか?」
宇田川『必ず来るのよ。』
(電話の切れる音)
(戸が開く音)
醍醐「ごめんください。 ごきげんよう。」
花子「あっ 醍醐さん。」
醍醐「宇田川先生からのお招き はなさんのところにも 来たでしょう?」
花子「ええ。 たった今。」
玄関前
「あっ ラジオのおばさんだ!」
「ごきげんよう!」
子どもたち「ごきげんよう!」
花子「ごきげんよう。」
(飛行機のエンジン音)
花子「ねえ 醍醐さん。 前にも ここで 飛行機を見た事があったわね。」
醍醐「ええ。」
回想
(飛行機のエンジン音)
ブラックバーン「Hana. 『これからの飛行機の進歩は 世界を平和に導くか 戦争をもっと悲惨にするか どちらかです 我々人類は飛行機を どう使おうとしているのか 平和か 戦争か』」
回想終了
花子「最近 よく あの時の ブラックバーン校長の言葉を思い出すの。 『平和か戦争か。 それは 我々の上に懸かっている 課題である事を よく考えておきなさい』。
カフェー・タイム
かよ「お姉やん。 こっち。」
蓮子「ごきげんよう はなちゃん。 醍醐さんも。」
花子「蓮様もいらしてたの?」
蓮子「ええ。 お招きの電報を頂いたの。」
醍醐「やっぱり 結婚なさるのかしら?」
蓮子「まあ ご結婚の報告? それは おめでたいわね。」
かよ「それにしては 宇田川先生 今日は 地味な いでたちですよ。」
「それでは 先生方 お願い致します。」
宇田川「私 この度 長谷部 汀先生をはじめとする 諸先生方のご推薦を頂きまして ペン部隊として 大陸の戦場へ 向かう事と致しました。」
花子「ペン部隊?」
長谷部「宇田川先生には 従軍記者として 戦地に赴いて頂きます。」
宇田川「お誘いを受けて すぐに決めました。 日本軍の躍進ぶりを 目の当たりにできる またとない機会ですもの。」
長谷部「私たちのために 命を懸けて戦って下さってる 兵隊さん方の事 しっかり取材して書いて下さい!」
宇田川「はい。」
「宇田川満代先生 万歳!」
一同「万歳!」
「万歳!」
一同「万歳!」
<時代は 大きく動き始めておりました。 ごきげんよう。 さようなら。>