あらすじ
宇田川(山田真歩)から従軍作家として戦地へ行くという報告を聞き、驚く花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)。触発された醍醐(高梨臨)は自分もいつか従軍記者として戦地へ赴きたいと言いだし、長谷部(藤真利子)に歓迎される。そんな一同の様子に花子は戸惑いを隠せず、蓮子は花子に「この人たちについて行けない」と告げてその場を去る。そんなある日、ブラックバーン(トーディ・クラーク)が村岡家を訪れる…。
133回ネタバレ
町中
<中国との戦争が続き 国民は総力を挙げて 軍事体制に協力する事を 求められておりました。>
JOAK東京放送局
<花子が語り手を務める 『コドモの新聞』のニュースも 軍事に関するものが 大半を占めるようになました。>
カフェー・タイム
宇田川「私 この度 長谷部 汀先生をはじめとする 諸先生方のご推薦を頂きまして ペン部隊として 大陸の戦場へ 向かう事と致しました。」
花子「ペン部隊?」
「宇田川満代先生 万歳!」
一同「万歳!」
<戦争の足音は 確実に近づいておりました。>
「いや~ 女流作家で 一番に 戦地へ乗り込まれるなんて さすが宇田川先生です!」
宇田川「長谷部先生のお言葉どおり 国民の士気を高める記事を どしどし書き 送りますわ。」
「よろしくお願い致します!」
「お願いします!」
花子「驚いたわ。 宇田川先生が従軍記者とは。」
醍醐「ごめんなさい。 ご結婚の報告じゃないかなんて 浮かれた事を言ってしまって…。 私 恥ずかしいわ。 なんて ご立派なのかしら…。 実は私も 機会があれば ペン部隊として 戦地へ赴きたいと思ってるの。」
花子「醍醐さん… 本気なの?」
醍醐「ええ…。実際に戦地へ行って この目で確かめないと 分からない事が たくさんあると思うの。」
宇田川「この戦時下において 表現者なら当然の事よ。」
長谷部「醍醐さん。 次のペン部隊に あなたを推薦しておきましょう。」
醍醐「本当ですか?」
長谷部「ええ。」
宇田川「白蓮さんは 相変わらず 恋愛や家族愛をたたえる歌を 詠んでいらっしゃるの?」
蓮子「ええ…。」
宇田川「もう 今は くだらない恋愛なんか 書いている場合じゃないと 思いますけど。」
蓮子「どんな時代でも 人は恋をします。 戦争の真っただ中でも 人は誰かを愛します。 宇田川先生だって あんな みずみずしい恋愛小説を 書いていらしたじゃないですか。」
宇田川「今は 色恋なんかよりも お国のために 作家として何ができるかを 考えるべきでしょう。」
蓮子「そうでしょうか?」
花子「蓮様…。」
長谷部「村岡さんは どう お考えになって?」
花子「えっ…。」
長谷部「あなたは ラジオで 子どもたちに 語りかけているから 世の中への影響も大きいわ。 子どもたちを 立派な国民に育てるために どんな考えをお持ちか 聞いておきたいわ。」
花子「私は… 子どもたちの夢を守りたいんです。 今の日本の状況で そんな悠長な事は 言ってられないかもしれません。 けれども いつの時代も 子どもたちは 美しい夢を持っています。 その夢を 大人たちが 奪ってはならないと思うんです。」
宇田川「ラジオのおばさんが どれほど 立派なご意見を おっしゃるかと思ったら… この戦時下に夢ですって? 時代が変わっても あなたは 『みみずの女王』の頃から 進歩してないのね。」
長谷部「村岡さん。 この国の子どもたちの将来を思う 気持ちは 私も同じです。」
花子「はい。」
長谷部「そのためには 日本が より強い国にならなくては。 大人も子どもも お国のために 一致協力する事です!」
宇田川「そのとおり!」
「そのとおり!」
(拍手)
蓮子「お先に失礼するわ。」
花子「あっ…。 蓮様。」
「万歳! 万歳!」
♬~(『婦人従軍歌』)
蓮子「なぜ 皆さん… あんなふうに 一色になれるのかしら。」
♬『くれない染めし 草の色』
蓮子「ああなれたら きっと楽でしょうね…。 でも 私は ついていけないわ。 婦人参政権の活動では 共鳴できたけれど もう あの先生方と ご一緒する事はないと思う。」
村岡家
居間
英治「蓮子さん 途中で帰っちゃったのか。」
花子「ええ…。 私も考えてしまったわ。 このままでいいのかしら…。」
英治「えっ?」
花子「子どもたちの夢を守るって どういう事なのか 分からなくなってしまって…。」
英治「あんまり悩まないで。」
花子「ええ…。」
英治「花子さん。 踊って頂けませんか。」
花子「えっ…。」
<時代の空気が キリキリと緊張していく中 花子と英治は こんなひとときを 大切にしていました。>
美里「お父ちゃまとお母ちゃま いいな~!」
英治「ほら じゃあ 3人で踊ろうか。」
花子 英治「え~の。」
英治「はい クルル~ クルル~。 上手だ。」
花子「すご~い。」」
英治「はい 花子さんも。」
(笑い声)
英治「お母様 上手だね~。」
玄関前
<そんな ある日の事。>
「敵 発見!」
「目標 10m前方の敵! 突撃 前へ!」
子どもたち「やあ~!」
ブラックバーン「Stop! ゴキゲンヨウ。」
子どもたち「ご… ごきげんよう…。」
子どもたち「うわ~!」
ブラックバーン「Hana.」
花子「はい。 ミス ブラックバーン…。」
居間
英治「僕は 昔 修和女学校に 辞書を借りに行って…。 Once upon a time I went to Shuwa jyogakko for borrow a dictionary, and… 『たくましい女性に 投げ飛ばされました』」
回想
白鳥「やあ!」
英治「うわっ! ああっ!」
ブラックバーン「What is happening?」
白鳥「不審者がいたので捕まえました!」
英治「ご… 誤解ですよ! 僕は…。 ああ…。」
回想終了
ブラックバーン『あなたの英語は上達しましたね』
英治「Thank you very much. 思い出して頂けたみたいだ。」
花子「ええ。」
スコット『ブラックバーン校長は カナダに帰国なさいます はなにお別れを言いに』
ブラックバーン『私ももうおばあさんですから』
花子「さみしくなります」
ブラックバーン「Hana.」
花子「Yes.」
ブラックバーン『この先 国と国はどうなるかわかりませんが ただひとつ 私たちは永遠に友達です』
美里「お母ちゃま?」
花子「『国と国は どうなるか分からないけれど 私たちは 永遠に友達です』と おっしゃって下さってるわ。」
ブラックバーン『私はどこにいても あなたたちの幸せを 心から祈っています あなたの翻訳は二つの国の 友情のシンボルです』
花子「『あなたの翻訳は 二つの国の友情のシンボルです』と。 『ブラックバーン校長のお言葉は いつも私のここにあります 最上のものは過去ではなく 将来にある』
ブラックバーン「Hana. 『あなたが私の夢を 引き継いでください この国の人々に愛と平和を』
書斎
<その夜の事でした。>
(戸をたたく音)
花子「こんな時間に誰かしら…。」
玄関
花子「どちら様ですか?」
吉太郎「はな。 俺だ。」
花子「兄やん…。 どうしたの?」
吉太郎「すまない こんな時間に…。 ちょっと話しておきたい事が あってな。」
花子「上がって。」
吉太郎「いや… すぐ帰るから ここで。 はな… 最近 蓮子さんに会ったか?」
花子「ええ…。 この間 かよのお店で 従軍記者として出発する 宇田川先生の壮行会があって。」
吉太郎「何か 変わった様子はなかったか?」
花子「兄やん? 蓮様がどうかしたの?」
吉太郎「明日から しばらく 蓮子さんのうちには近づくな。」
花子「どうして?」
吉太郎「何でもいい。 ここは 俺の言うとおりにしておけ。 分かったな。」
花子「兄やん…。」
<蓮子の身に 何か大変な事 迫っているのでしょうか。>
花子「蓮様…。」
<ごきげんよう。 さようなら。>