あらすじ
花子(吉高由里子)は、蓮子(仲間由紀恵)と決別してしまったあとも、ラジオの語り手を続けていた。ちょうど戦地から帰国した宇田川(山田真歩)が、ラジオで帰国報告講演をすることになり、花子は宇田川と再会する。日頃から戦争の話を避けたがる花子を苦々しく思っていた漆原(岩松了)は、戦意高揚を熱く語る宇田川を絶賛するのだった。そんなある日、スコット(ハンナ・グレース)が、一冊の本を持って村岡家を訪れる…。
136回ネタバレ
カフェー・タイム
蓮子「私は 時代の波に 平服したりしない。 世の中が どこへ向かおうと 言いたい事を言う 書きたい事を書くわ。 あなたのように ひきょうな生き方はしたくないの。」
花子「私たち… 生きる道が違ってしまったわね。」
蓮子「さようなら。」
花子「お元気で。」
JOAK東京放送局
<蓮子と決別したまま 花子はラジオのおばさんを 続けておりました。>
スタジオ
花子「全国のお小さい方々 ごきげんよう。 『コドモの新聞』のお時間です。 まず 初めのお話は 元気なお年寄りのお話です。」
廊下
花子『今年 84歳におなりの おばあさんが 大阪から飛行機に乗って 東京においでになりました。 『飛行機は 怖い』というような 臆病な事は言わないで 『東京見物には 飛行機で行きましょう』と 息子さんに勧め…』。
宇田川「相変わらず なまぬるいわね。 大陸の戦場では 日本兵が 命懸けで戦ってるっていうのに。 おばあさんが 飛行機に乗った話なんか どうでもいいじゃないの。」
漆原「全く同感です。 村岡先生は 戦争の話を殊更 避けるので 我々としても困ってるんですよ。」
宇田川「まあ 『みみずの女王』らしいっちゃ らしいけど。」
漆原「『みみずの女王』?」
宇田川「いえ 何でもありません。 参りましょう。」
スタジオ
花子「お年寄りでも こんなに お元気な事を伺いますと 私たちも もっともっと 元気よく致したいと思いますね。」
宇田川「私は ペン部隊の一員として 我が皇軍将兵の勇戦敢闘ぶりを この目で しかと見てまいりました。 私は 心の中で叫びました。 『遠き故国 日本の母よ! 姉よ。 はたまた 恋人よ。 あなた方の 慈しんだ人たちは 今 破竹の勢いで 猛新劇を続けております! これを あなた方がご覧になれば きっと 涙にむせびつつ 同時に 誇らしく思われる事で ありましょう』と!」
応接室
宇田川『不肖 この宇田川満代は 一人でも多くの銃後の方々に このお話を たとえ 年を取って 腰が曲がろうとも 語り伝える事でありましょう』。
花子「宇田川先生…。」
宇田川『それこそが ペン部隊の一員たる 私の果たすべき 究極の任務なのでございます!』。
廊下
漆原「宇田川先生。 本日は 誠にすばらしい講演をありがとうございました。 戦地での日本軍将兵の活躍が 目に浮かぶようでしたよ。 興奮しました。」
宇田川「あら。」
花子「宇田川先生。 日本にご帰国なされてたんですね。 ご無事で何よりです。」
宇田川「無事に決まってるでしょう。 兵隊さんが命を張って 私を守ってくれたんですもの。」
花子「はあ…。」
宇田川「ちょうどいいわ。 これから 私の帰国を祝う会があるの。 あなたも来るでしょ?」
花子「えっ…。」
カフェー・タイム
長谷部「乾杯!」
一同「乾杯!」
(拍手)
醍醐「実際に戦場に立つと やっぱり違うんでしょうね。」
宇田川「当然でしょう? 着いたそばから 砲撃の爆風で ぶっ飛ばされかけたわ。 そのうち どこでも 原稿が書けるようになったわ。 戦闘地帯の真っただ中で 書いた事もあるわね。」
醍醐「銃撃戦の最中に…。」
黒沢「男でも 戦地のすさまじい状況を 目の当たりにすれば ひるみそうなところを 女である先生が…。 感服致しました。」
長谷部「宇田川先生を推薦して よかったわ。」
醍醐「やっぱり ご自身の目で 実際に見た方が言葉は 説得力が違うわね。 ますます 戦地へ行って 自分の目で確かめたくなったわ。」
花子「醍醐さん…。」
宇田川「お嬢様のあなたに 耐えられるかしら? 実際の戦地は 内地で聞いて想像するのとは 悲惨さが全く違うわよ。」
醍醐「そうなんですか…。」
宇田川「例えば におい。 爆薬や硝煙のにおい。 それから… 人の命が燃え尽きるにおい。 あの においには 最後まで慣れなかったわね。」
黒沢「ところで 蓮子さんは 今日は いらっしゃらないんですか?」
醍醐「お誘いは したんですけれど…。」
長谷部「しかたないでしょう。 あの方は 私たちとは違うお考えを お持ちのようだから。」
醍醐「はなさん。 蓮子様とは ずっと連絡を取ってないの?」
花子「ええ。」
かよ「お姉やん。 手紙くらい書いたらいいのに。」
花子「いいのよ。」
村岡家
居間
梶原「実は うちも しばらく 翻訳物の出版は やめる事にしたんだ。」
花子「そうですか。」
梶原「童話も近々 やめざるをえないかもしれない。 最近は 戦争漫画や戦記物 それに 実用書ばかりが売れていてね。」
花子「夢のある物語は ぜいたく品なんでしょうか…。」
梶原「これから ますます 世の中に夢を送り出す商売は 成り立たなくなっていくのかも しれないね。」
宮本家
居間
(戸の開閉音)
蓮子「富士子… どうしたの?」
富士子「お母様… お母様!」
蓮子「どうしたの? 何があったの?」
富士子「お母様… お父様は 悪い事してないわよね? 国賊なんかじゃないわよね!? お父様が 憲兵さんに連れていかれたのは 国賊だからだ 銃殺になれって 石を投げられたの…。」
蓮子「けがは? けがはない?」
<憲兵隊で取り調べを受けた龍一は 釈放されましたが 世間からは 白い目で見られたままでした。>
蓮子「富士子。 お父様は お国を平和にするために 働いているのよ。 悪い事してる訳じゃないわ。」
富士子「本当?」
蓮子「ええ。 お父様のなさっている事は 勇気のある行動なのよ。 だから もう泣かないで。 ほら。」
(戸が開く音)
龍一「ただいま。 富士子 どうした?」
純平「お父様。 富士子に謝って下さい。 お父様のせいで 富士子が いじめられているんです!」
蓮子「純平。」
純平「富士子だけじゃない。 お母様やおばあ様だって お父様のせいで 近所の人たちから 悪く言われているんです! お母様とおばあ様にも 謝って下さい。」
龍一「俺は 間違った事を 言っているつもりも しているつもりも ない。 一日も早く 戦争は 終わらせるべきだ。 それが お前たちのためでもあるんだ。」
純平「僕たちのため?」
龍一「ああ。 そうだ。」
純平「僕の将来の夢は あなたのせいで断たれたんです!」
蓮子「やめなさい 純平!」
純平「この人のせいで 僕は 士官学校の受験を 諦めざるをえなかったんだ! あなたが日本を裏切って 敵と妙な取り引きを 企てたりするから。」
龍一「人を殺すために… 戦地で無駄死にさせるために お前を育ててきた訳じゃない!」
純平「お国のために命をささげる事は 無駄なんかじゃありません!」
蓮子「2人とも やめて下さい! 龍一さん。 純平。 純平!」
(泣き声)
台所
浪子「蓮子さん。 申し訳ないね…。 私には 龍一の考えてる事が さっぱり分からない。」
蓮子「お義母様…。」
浪子「あんな息子に尽くしてくれて ありがとうね。 蓮子さん。 あんたが このうちに来たばっかりの頃は とても長続きなんか しないだろうって思ってたけど あんな息子を支えて よく働いて…。 ちゃんと 孫を立派に育ててくれて…。 あなたは いい嫁だよ。 龍一の事を… 見捨てないでやって下さいね。 お願いします。」
蓮子「お義母様。 ええ。」
村岡家
1939年(昭和14年)・秋
<この年の9月 ヒトラー率いるドイツ軍の ポーランド侵攻を契機に イギリス フランスなどの連合軍が ドイツに宣戦を布告。 第二次世界大戦が 始まっておりました。>
居間
花子『カナダも大変な状況ではないですか?』
スコット『ええ 先の大戦よりも厳しい 状況のようです Hana. 私もいよいよカナダへ 帰ることになりました』
花子『そうですか 寂しくなります』
スコット『日本を離れる前に あなたに渡したい本があります』
花子「『ANNE of GREEN GABLES』。
<花子は ついに あの本に出会いました。 ごきげんよう。 さようなら。>