あらすじ
スコット(ハンナ・グレース)から、『アン・オブ・グリン・ゲイブルズ』の原書を手渡された花子(吉高由里子)。スコットは友情の記念として持っていて欲しい、と花子に語る。傍らで本に興味しんしんの美里(岩崎未来)を見たスコットは、花子の小さい頃みたいだと言い、花子は、子どもの頃スコットの歌を聞いて初めて英語が心に響いてきた、と思い出を語るのだった。やがてスコットが去ったあと、その本を読み始めた花子は…。
137回ネタバレ
村岡家
1939年(昭和14年)・10月
<9月に第二次世界大戦が始まり いよいよ スコット先生も カナダに帰国する事を決意しました。>
居間
スコット『あなたに渡したい本があります』
花子「『ANNE of GREEN GABLES』。」
<花子は ついに あの本に出会いました。>
スコット『ルーシー・モンゴメリという カナダの作家の作品です 日本にいる間 この本が心の友でした』
花子「そんな大切な本いただけません」
スコット『あなたに持っていてほしい 私たちの友情の記念に』
花子「友情の記念…。」
美里「お母ちゃま 何のお話 してるの?」
花子「スコット先生がね この大切なご本を 下さるとおっしゃってるの。」
美里「何ていう ご本?」
花子「『ANNE of GREEN GABLES』。 そのまま訳すと 『緑の切り妻屋根のアン』ね。」
美里「どんなお話なの?」
花子「お母ちゃまも まだ読んだ事がないから 分からないわ。」
スコット『あなたの小さい頃を 思い出しますね』
花子「お母ちゃまの小さい頃を 見ているようですねって。 お母ちゃま 美里ぐらいの時 英語が大っ嫌いだったの。」
もも「てっ! お姉やんが英語大っ嫌いだったなんて信じられない。」
花子「修和に入ったばかりの頃 みんなが何をしゃべってるか ちっとも分からなかったんだもの。 でも… スコット先生のお歌を聴いたら 初めて 英語が 心に優しく響いてきたの。」
回想
♬~(英語での歌声)
花子「スコット先生…。」
♬~(歌声)
回想終了
花子『私はスコット先生の 『The Water ls Wide』が 大好きだったんです』
スコット「Oh, really?」
美里「お母ちゃま 歌ってみて!」
花子「えっ 今?」
もも「私も聴いてみたい!」
花子『スコット先生 一緒に歌ってください』
スコット『もちろん』
♬『この海は広すぎて 私には渡れません 大空を舞う羽もありません どうか ふたりが乗れる小舟をください ふたりで漕いでゆきます 愛する人と私で』
(笑い声)
(拍手)
英治「すてきな歌だね。」
花子「英治さん…。 旭さんまで いつの間に。」
旭「どういう歌なんです?」
花子「この歌は 別れた恋人への気持ちを 歌った歌なの。」
もも「悲しい歌なのね…。」
花子「ええ。」
スコット『あの頃はカナダにいた恋人を思って歌っていた その彼も 先の大戦で戦死しました』
玄関前
スコット『ありがとう はな 最後にとても素敵な 思い出ができました』
花子『こちらこそ』
スコット「Hana. 『いつかきっと平和が訪れます その時 あなたの手で この本を日本の少女たちに』
花子『約束します 平和が訪れたら この本を翻訳して 沢山の人に読んでもらいます』
スコット『ありがとう さようなら はな』
花子『またお会いしましょう』
スコット「ゴキゲンヨウ。」
花子「ごきげんよう。」
<日本が戦争へと向かう中 日本とカナダをつなぐ大切な一冊が 花子の手に託されたのでした。>
書斎
<それは カナダのプリンス・エドワード島という 小さな島を舞台にした物語でした。 そばかすだらけの痩せっぽちな ニンジンのように赤い髪の少女 アン・シャーリーが 人々と 心を通い合わせていく様子が 生き生きと描かれています。 花子は みるみる夢中になりました。>
(花子が英文を読む声)
花子「『『おお ダイアナ』。 やっとの思いで アンは言った。 『ねえ 私の事を少しばかり 好きになれると思って? 私の…』』。 Bosom friend。 親しい友…。 『私の親友になってくれて?』。」
回想
蓮子「私は 時代の波に平服したりしない。 世の中が どこへ向かおうと 言いたい事を言う。 書きたい事を書くわ。 さようなら。」
(鐘の音と2人の笑い声)
蓮子「翻訳者 安東花子。」
花子「歌人 白蓮。」
蓮子「お久しぶり はなちゃん。」
花子「蓮様! 会いたかった!」
蓮子「私も!」
回想終了
花子「蓮様…。」
<スコット先生から託された この本を 日本の少女たちに 送り出す事ができる日を 心から願う花子でした。>
町中
「武運長久を祈って! 万歳!」
一同「万歳!」
<けれども 2年過ぎても 中国との戦争は 終わる気配はありませんでした。>
一同「万歳! 万歳!」
村岡家
寝室
(電話の呼び鈴)
英治「こんな朝早くに誰だろう?」
花子「私が。」
居間
花子「はい 村岡でございます。」
JOAK東京放送局
執務室
黒沢「JOAKの黒沢です。 朝早くに申し訳ございません。 今週は 村岡先生に担当して頂く 予定だったのですが…。」
花子『ええ。』
黒沢「今日は 村岡先生には お休みして頂く事に なりましたので お電話しました。」
村岡家
居間
花子「どうしてですか?」
黒沢『大変 重要なニュースがありまして。』
JOAK東京放送局
執務室
漆原「黒沢君! 皆様がいらっしゃったぞ!」
黒沢「はい! 急な事で申し訳ございませんが 今日は お休み頂き 明日 改めてお越し下さい。 では。」
廊下
漆原「こちらでございます。 こちらでございます。 どうぞ どうぞ。」
スタジオ
(つばを飲み込む音)
村岡家
居間
英治「新聞にも それほど重大なニュースは 出てないな。」
花子「そう…。」
美里「お母様。」
花子「あ… もうすぐ朝ごはん出来るから 準備をお願いね。」
美里「はい。」
(チャイム)
花子「何のチャイムかしら…。」
JOAK東京放送局
スタジオ
有馬「臨時ニュースを申し上げます。 臨時ニュースを申し上げます。 大本営 陸海軍部 12月8日 午前6時発表。 帝国陸海軍は 本8日未明 西太平洋において アメリカ イギリス軍と 戦闘状態に入れり。 帝国陸海軍は 本8日未明 西太平洋において アメリカ イギリス軍と 戦闘状態に入れり。」
<とうとう 太平洋戦争が始まりました。 ごきげんよう。 さようなら。>