ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第13回「初恋パルピテーション!」【第3週】

あらすじ

英語が大好きな女学生に成長したはな(吉高由里子)は、同室の醍醐(高梨臨)たちが将来の結婚相手の話題で盛り上がるのも気にせず、毎日英語の本を読みふけっていた。醍醐たちに、「どんな時にときめくのか」と尋ねられたはなは、「辞書を引いて未知の言葉の意味が明らかになる時だ」と答え、からかわれる。そんなある日、醍醐たちと孤児院へ奉仕活動に出かけたはなは、同じく英語が堪能な帝大生・北澤(加藤慶祐)に出会う…。

13回ネタバレ

修和女学校

<5年前 この女学校に編入した頃は 英語が恐ろしくて 西洋人の先生たちから 逃げ回っていた はなでした。 それが今では 横文字の本が なくてはならぬほど 英語が大好きになりました。>

廊下

はな「この単語 何だろう?」

ブラックバーン『止まりなさい!』

はな「イタッ! イタタタタ!」

ブラックバーン「Hana! 『ベッドに行きなさい!』」

はな「あの! はなじゃりません! 私の事は 花子と呼んで下さい!」

図書室

はな「palptation… palpitation…。 う~ん 何だろう この単語…。 はあ~… 何だろう?」

醍醐「ごきげんよう。」

2人「ごきげんよう。」

はな「ごきげんよう。」

醍醐「はなさん また 廊下を走って 『Go to bed』?」

はな「ええ…。 あっ 醍醐さん 辞書を貸して下さらない?」

醍醐「よくってよ。 どうぞ。」

はな「ありがとう。」

松平「私 両親に 縁談を勧められましたの。」

畠山「まあ お相手は どんな方?」

松平「お家柄は 申し分ないけれど イノシシみたいな方。 もっと すてきな方が 現れないかしら!」

醍醐「今度 日曜学校に行けば 出会えるかもしれなくってよ。」

松平「そうね!」

はな「あった! あった! Palpitation… 『ときめき』か~!」

松平「まあ 出会いのときめき?」

畠山「ロマンスのときめき!」

はな「いえ これは 90歳のおじいさんのお話なので 『動悸 息切れ』と訳した方が よさそうです。」

醍醐「ねえ はなさんは どんな時に ときめくの?」

はな「それは… こんなふうに辞書を引く時です。」

醍醐「はっ?」

はな「未知の言葉の意味が 明らかになる時の わくわくした気持ちが たまりません!」

畠山「辞書に ときめくなんて…。」

松平「本当に はなさんって 変わってること。」

はな「あの 繰り返し申し上げますが 私の事は はなではなく 花子と呼んで下さい。」

畠山「あら 子の付く名前なんて ここには いくらでも いるじゃないの。 はなの方が はなさんらしくってよ。」

2人「ええ。」

はな『前略 お母様 お元気ですか? 花子は 元気でやっております。 富士山は もう すっかり雪化粧をして 美しいでしょうね』。

安東家

朝市『今度のお正月も 甲府に帰れませんが どうか皆様 お体を大切に よいお年をお迎え下さい。 ごきげんよう。 Thank you. 花子』。

ふじ「朝市 いつも ありがとね。」

朝市「はな もう すっかり 東京言葉になっちまったですね。」

リン「お母様だなんて… てっ よその人みてえじゃんね。」

周造「そうさな。 もう5年も ここにゃあ帰ってこんだからな。」

リン「ほうか… 5年け。」

ふじ「朝市。」

朝市「ん?」

ふじ「おらに 字を教えてくれんけ。 いつか はなに 自分で 便りを書えてみてえだけんど 今っ更 字を覚えようなんて 無理ずらかね?」

朝市「ほんなこん ねえら。 一緒に頑張るじゃんけ!」

リン「朝市! 早く 畑行かざあ。 土寄せが終わらんら。」

朝市「おかあ 今行くずら。」

<はなに負けないくらい 勉強が好きだった朝市は 上の学校へは進まず お百姓さんになりました。>

修和女学校

教室

富山「My hair is turning gray. 『私の髪は 灰色に変わってきました』。 That is a long story. 『それは 長い物語です』。」

はな「そうかな…。」

富山「安東さん。 質問があるなら おっしゃい。」

はな「私は 少し違う訳をしました。」

富山「言ってごらんなさい。 あなたの訳とやらを。」

はな「My hair is turning gray. 『私は 白髪が増えてきました』。 That is a long story. 『話せば長いのよ』。」

富山「つまり あなたは 私の訳が 間違ってると言いたいの?」

はな「いえ そういう訳では…。」

(どよめき)

富山「そんな砕けた訳は 私の授業では 認めません。 分かりましたね。」

廊下

醍醐「はなさんの訳の方が 自然で分かりやすかったわ。 自信を持って。」

2人「ええ そうよ。」

はな「ありがとう。」

醍醐「でも はなさん。 そんなに お勉強ばかりしていると 富山先生や白鳥様のように お嫁に行きそびれてしまうわよ。」

はな「えっ…。」

畠山「あっ うわさをすれば。」

<はなの天敵の白鳥かをる子様です。 卒業後は 職員として学校に残り 今も このとおり 幅を利かせていらっしゃいます。」

白鳥「安東はなさん。」

はな「はい。」

白鳥「お父様が面会室でお待ちです。」

はな「てっ!」

白鳥「『てっ』?」

はな「いえ… ありがとうございます。 失礼致します。」

茂木「廊下は 静かに歩きなさい。」

はな「はい。」

面会室

はな「おとう!」

吉平「グッド アフタヌーン。 はな。」

はな「グッド アフタヌーン。 お父様。」

吉平「『お父様』! 元気そうじゃな。」

はな「はい。 おとう 今度は どこに行ってたの?」

吉平「うん。 東北の方を あちこちな。 あっ ほういえば 寮母の茂木先生から聞いたぞ。 英語の成績 学校で一番だそうじゃな。」

はな「うん。 英語だけは。 ふんだけんど 数学やお裁縫は 苦手で…。」

吉平「一番なんて すげえじゃんか! やっぱし おとうの見込んだとおりじゃ。 はなは うちの一家の希望の光じゃ。 はな 今度の冬休みは 甲府に帰れ。 みんな はなに会いたがってるだぞ。」

はな「だけんど…。」

吉平「金のこんは 心配するな。 汽車賃ぐらい おとうが なんとかするから。」

はな「やっぱり いい。」

吉平「どういで?」

はな「そのお金で おじぃやんや おかあや みんなに 腹いっぺえ おいしいもん 食べてもらって。 おとう。 寄宿舎のお正月も悪くないのよ。 誰もいないから 図書室は借り切りで 毎年 本を好きなだけ読むの。」

吉平「はな…。」

<はなの そんな強がりを おとうも よ~く分かっておりました。>

はな「みんなに会いてえなあ…。 はあ…。」

<日曜日がやって来ました。 はなたちは 毎週 孤児院に出向き 恵まれない子どもたちのために 奉仕活動を行います。 それにしても お嬢様たち 随分と気合いが入っております。>

孤児院

♬~(讃美歌)

<礼拝のあとは いよいよ 待ちに待った日曜学校。 ミッションスクールの生徒にとっては 異性と知り合う唯一のチャンスです。>

はな「かごめかごめ? いいよ! 鬼やりたい人!」

子どもたち「はい! はい! じゃあ なっちゃん!」

一同♬『かごめ かごめ』

醍醐「あの背の高い岩田様 おうちは 財閥で大富豪ですのよ。 その隣の北澤様は 金沢の由緒あるお家柄で 帝大一の秀才なんですって。 おまけに あのとおり 眉目秀麗。」

♬『うしろの しょうめん だーれ』

「だ~れだ?」

「はなおねえさん!」

はな「はなじゃなくて 花子おねえさんでしょ!」

「はなは はなだ! 逃げろ~!」

子どもたち「逃げろ~!」

はな「あっ! あっ! 待て! 待て 待て!」

はな『どうぞ おいしいわよ』

はな『あっちでみんなと遊ばない? 行きましょう』

ミニー「No! (泣き声)」

はな『びっくりさせてごめんなさい』

はな「どうしよう…。」

北澤『この歌知ってるかな? ♬『Twinkle, twinkle, little star,』 『How I wonder what you are Up above the world so high, Can you sing?』

2人♬『Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are One more time. Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are Up above the world so high,』

はな「Here you are. Yummy? More?」

畠山「ミニー・メイちゃんは カナダから 貿易商のお父さんと 一緒に日本に来たんだけど お父さん 亡くなってしまったそうよ。 ずっと 誰にも 心を開かなかったらしいの。」

はな「そう…。」

醍醐「はなさん。」

はな「先ほどは ありがとうございました。」

北澤「いえ 僕は 何も。 たまたま1曲だけ知ってる動揺を 歌っただけです。」

岩田「こいつは 10歳の時から イギリス人の家庭教師がついてて 英語ペラペラなんです。」

はな「そうなんですか。」

北澤「花子さんは 英語の発音が 実にきれいですね。」

はな「てっ!」

北澤「申し遅れました。 北澤です。 花子さん?」

はな「てっ… 花子…。」

<はなは 心臓が飛び出すかと思いました。 生まれて初めて はなを 花子と呼んでくれる人 現れたのです。 パルピテーション!これぞ ときめきというものでした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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