あらすじ
防空ごうから出てきた花子(吉高由里子)ともも(土屋太鳳)は、帰って来た英治(鈴木亮平)や旭(金井勇太)と互いの無事を喜び合う。いつ死んでもおかしくないということを痛感した花子は、その夜英治に、もし明日までの命だったとしたら何をするかと尋ねる。英治の答えに感じ入り、自分なら何をするだろうと考えた花子は、スコット(ハンナ・グレース)から託された『アン・オブ・グリン・ゲイブルズ』の原書を手にとる…。
143回ネタバレ
村岡家
防空壕
<昭和19年11月24日 武蔵野の軍需工場と その付近が 攻撃され 品川 荏原 杉並にも 爆弾が落とされました。>
庭
もも「お姉やん。」
<ついに 東京が戦場となり 命を奪われる危険を 人々は 身をもって知ったのです。>
玄関前
「被害はないか!? けが人はいないか!?」
英治「花子さん!」
旭「お~い!」
もも「よかった 2人とも無事で!」
花子「お帰りなさい。」
英治「花子さん 寝てなきゃ駄目だろ。」
花子「だって 心配だったから。」
旭「ご覧のとおり 僕らは無事です。」
英治「かよさんのお店も見てきたけど 大丈夫だったよ。」
花子「そう…。」
寝室
(ふすまが開く音)
英治「はい。 どうしたの?」
花子「ねえ 英治さん。 もし 明日 死んでしまうとしたら 英治さんは 何をする?」
英治「どうしたんだよ 急に。」
花子「今日 防空壕の中で 爆弾が落ちる音を聞いていて 思ったの。 明日も生きているとは 限らない。 今日が最後の日に なるかもしれないって。」
英治「そうだな。 今日が人生最後の日だとしたら 僕は 花子さんが翻訳した本を 読みたいな。」
花子「明日 死んでしまうかもしれないのに?」
英治「うん。 ほかには 何にもしないで 一日中読んでいたい。」
花子「英治さん…。」
英治「君は?」
花子「私は…。」
書斎
回想
スコット『あなたに渡したい本があります』
回想終了
<平和になる時を 待っているのではなく 今 これが私のすべき事なのだ。 その思いに突き動かされ 花子は 久しぶりの翻訳に 胸を高鳴らせていました。>
花子「『女の子は みすぼらしい古ぼけた 手提げカバンを片手に持って…』。 『緑の…』。 『『もう迎えに 来て下さらないのじゃないかと 心配になってきたもんで…』』。
(電話の呼び鈴)
居間
花子「もしもし。」
ふじ「はなけ。」
花子「あっ おかあ。 どうしたの?」
ふじ『美里ちゃんがいなくなっただよ。』
玄関前
英治「花子さん!」
花子「英治さん…。」
英治「美里がいなくなったって…。」
花子「ええ。 一人で 甲府の家を出たみたいで…。」
英治「花子さん 落ち着いて。」
もも「美里ちゃん!」
美里「お父様! お母様!」
花子「美里! よかった。」
英治「美里。」
美里「ただいま帰りました!」
もも「お母様が どれほど心配したと 思ってるの!」
花子「もも…。」
美里「ごめんなさい…。」
居間
英治「どうして 黙って 勝手に帰ったりしたんだ?」
美里「お母様がご病気だって聞いて ずっと心配だったの。 それに 東京に爆弾が落とされたって みんなが話してるの聞いて 私 じっとしていられないほど 心配になって…。 ごめんなさい。」
花子「美里…。」
英治「東京は 次 また いつ空襲があるか 分からないんだぞ。」
美里「それでもいいわ! 私 どうしても お母様のそばにいたいの!」
英治「美里…。」
美里「私 お父様やお母様と 離れたくない! お願いします!」
花子「美里。 お母様からも 大切なお話があります。」
美里「大切な話?」
花子「さっき もも叔母様が 美里をたたいたのは 美里の事 心から心配していたからよ。 あのね 美里…。 もも叔母様は 美里の本当のお母様なの。」
美里「えっ? 美里の本当のお母様とお父様は もも叔母様と旭叔父様なの。」
英治「本当の事だよ。」
花子「突然 こんな話して ごめんなさい。 本当は 美里が もっと大人になってから 話そうと思っていたわ。 でも それでは いけないと 思い直したの。 戦争は 今より もっとひどくなるかもしれない。」
花子「空襲で いつ 命を落とすかも分からない。 だから 今のうちに 美里に きちんと話をしようと思ったの。 美里。 よく聞いて。 お父様もお母様も 美里を 本当の子どもだと思っているわ。 美里を心から愛してる。」
英治「美里。 これからも 僕らは家族だ。」
花子「美里。」
書斎
(戸が開く音)
『ごめんください。』
花子「はい。」
玄関
もも「かよ姉やん どうしたの?」
花子「かよ…。」
雪乃「村岡花子さんですね。」
花子「はい。」
かよ「お姉やんに 聞きたい事があって来たの。」
雪乃「村岡さんは 英語の仕事をしていて 敵国にも たくさん お友達がいると伺いまして。」
かよ「お姉やん… 隠れて変な事してないよね?」
花子「え… ええ。 外国の友人たちは みんな帰国して もう連絡も取ってませんから。」
かよ「それなら 皆さんに納得してもらうために 見てもらってもいいよね。」
雪乃「拝見させて頂きます。」
花子「あ… ちょっと…。」
居間
書斎
雪乃「ここがお仕事部屋ですね。 村岡さん…。 敵性語の本を まだ こんなに たくさん お持ちだったんですね。」
もも「お姉やんが英語の本を処分すれば みんな納得してくれると思う。」
花子「そんな…。」
玄関
吉太郎「はな! 上がるぞ!」
もも「あっ 兄やん 大変あの! かよ姉やんが 今 婦人会の人たち連れてきて…。」
吉太郎「それ聞いて来たんだ。」
書斎
「敵性語の本を持ってるなんて 国賊です。」
「全くです。」
雪乃「空から爆弾を落として 子どもだろうが 年寄りだろうが 誰かれ構わず殺すような 鬼畜米英の本ですよ。 そんなものを まだ大切に持ってるなんて…。 この非国民。」
吉太郎「だから こんな本は 早く捨てろと言っただろう!」
花子「兄やん…。」
吉太郎「今すぐ 敵性語の本を焼かせましょう。 ここにある本は 自分が全部焼いて処分します。 いいな? はな。」
庭
花子「兄やん… 待って。 お願い… 兄やん やめて!」
吉太郎「離せ。」
花子「兄やん やめて!」
吉太郎「離せ!」
花子「やめて!」
花子「駄目!」
吉太郎「はな!」
花子「兄やん 待って!」
かよ「兄やん?」
吉太郎「また ああいう連中が来る。 密告者も多い。 こういうものを持っていたら スパイだと疑われるという事だ。 そんなに本が大事か?」
花子「今の私には 命よりも大切なもの。」
吉太郎「理解できん。 俺は もう守ってやれん。」
もも「お姉やん…。」
書斎
<この原書と辞書だけは 手元に残し 花子は 祈るような気持ちで 翻訳を続けました。>
宮本家
<学徒出陣で陸軍に入り 訓練を受けていた純平が 1年ぶりに帰ってきました。>
玄関
純平「ただいま帰りました!」
蓮子「まあ… 純平! お帰りなさい!」
純平「特別休暇がもらえましたので。」
<ごきげんよう。 さようなら。>