あらすじ
度重なる空襲で東京じゅうが焼け野原となる中、花子(吉高由里子)は必死に翻訳を続けていた。そして昭和20年8月15日。花子は英治(鈴木亮平)、もも(土屋太鳳)、そして村岡家に身を寄せたかよ(黒木華)らと共にラジオで玉音放送を聞き、戦争が終わったことを知る。同じく宮本家では、ラジオを聞いた龍一(中島歩)が黙りこくっている傍らで、蓮子(仲間由紀恵)は「純平(大和田健介)が帰って来る」とつぶやく…。
146回ネタバレ
<度重なる大空襲で 東京は ほとんど 焼け野原になってしまいました。 8月6日 広島に原子爆弾投下。 次いで 9日 長崎に原子爆弾投下。>
村岡家
居間
玉音放送『朕深く 世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み 非常の措置を以て 時局を収拾せむと欲し 茲に忠良なる爾臣民に次ぐ。 朕は 帝国政府をして 米英支蘇四国に対し 其の共同宣言を受諾する旨 通告せしめたり』。
(泣き声)
美里「どういう事なの?」
英治「戦争が終わったんだ。 日本は 負けた。」
宮本家
居間
富士子「日本は 負けたの?」
龍一「そうだ。 もう明日から戦争がないんだ。 空襲もない。 火の中を逃げ回る必要もない。」
蓮子「何度も夢見たわ。 戦争が終わって… 純平が帰ってくる日を。」
富士子「お母様?」
蓮子「純平を迎える支度を。 いつ帰ってきてもいいように。 戦争は 終わったんですもの。 戦争で死ぬ事は もう ないんですもの。」
龍一「ああ。」
村岡家
庭
英治「あっ 重いから気を付けて。」
居間
花子「よかった 無事で。」
英治「ちょっと かび臭いけど 久しぶりに 最愛の友に会えた気分だな。」
花子「ええ。」
花子「郁弥さんがイギリスで買ってきた 『王子と乞食』。」
かよ「この本が残っててよかった。 あんなにひどい空襲に 遭ったのに。 奇跡だね。 私は読めないけど もらってもいい?」
花子「ええ。 かよが持ってて。」
旭「ただいま。」
もも「お帰りなさい。 どうだった? 何か食べ物 手に入った?」
旭「いや… あっちこっち行ったけど ろくなもの なくて。 闇米は 高くて手が出ないし。」
花子「子どもたちだけにでも おなかいっぱい 食べさせてやりたいわね。」
もも「汽車の切符 なんとか手に入らないかな?」
英治「えっ?」
もも「甲府に行けば 食べ物 たくさんあるじゃないですか! 行きましょう!」
汽車
(汽笛)
(子どもの泣き声)
安東家
居間
花子「おかあ おとう ただいま!」
吉平「おお よく来たじゃんけ。」
英治「お義父さん お義母さん その節は 美里が大変お世話になりました。」
旭「うちの直子も お世話になりました。」
吉平「いや~ 東京は ひでえ空襲だって聞いて こっちまで 生きた心地しなんだけんど みんな無事でよかった!」
ふじ「ももから手紙もらって いろいろ そろえといただよ。」
もも「おかあ ありがとう!」
英治「ありがとうございます。」
吉平「はなと かよも 元気け?」
英治「はい。」
ふじ「吉太郎は どうしてるずらかね…。」
英治「お義兄さんとは 終戦後 お会いしてないんです。」
もも「私も ずっと会ってないの…。 連絡もなくて。」
吉平「世の中が こうなっちゃあ 軍人は… とりわけ 憲兵は ひでえこんになるかもしれんら…。」
村岡家
書斎
花子「(心の声)『アンの地平線は クイーンから帰ってきた夜を境として 狭められた。 しかし 道が狭められたとはいえ アンは 静かな幸福の花が その道に ずっと 咲き乱れている事を知っていた。 真剣な仕事と 立派な抱負と あつい友情は アンのものだった。 何ものも アンが生まれつき 持っている空想と夢の国を 奪う事はできないのだった。 そして 道には 常に間借り角があるのだ』。 『『神は天にあり 世は全てよし』と アンは そっとささやいた』。」
<ついに『ANNE of GREEN GABLES』 の 翻訳が完成したのです。>
宮本家
台所
<一方 蓮子は 出征した純平の帰りを 今か今かと待ちわびておりました。>
(戸をたたく音)
玄関
蓮子「は~い。 ごきげんよう。」
「広報です。」
龍一「蓮子?」
富士子「お母様も お父様も どうしたの?」
龍一「富士子…。 落ち着いて聞きなさい。 純平は… 8月11日 鹿児島で爆撃を受けて 戦死したそうだ。」
富士子「お兄様が?」
蓮子「いいえ。 何かの間違いです。 純平は 死んだりしません。 誰かが だまそうとしてるのよ。」
富士子「お母様…。」
蓮子「純平は 帰ってきます。 もうすぐ帰ってきます。 もう 戦争は 終わったんですもの。」
居間
蓮子「純平…。」
<一晩にして 蓮子の黒髪は 真っ白になりました。>
村岡家
玄関
(荒い息遣い)
かよ「ただいま 帰りました。」
居間
かよ「お姉やん!」
花子「あ… お帰り。 どうしたの? かよ。」
かよ「闇市で 昔のお客さんから 聞いたんだけど 蓮子さんの息子さんが 戦死なさったって…。」
花子「純平君が…。」
宮本家
<蓮子に会うのは 7年前に決別して以来の事でした。>
玄関
(戸をたたく音)
花子「ごめんください。 蓮様。」
(戸が開く音)
花子「蓮様…。 あ… 私… 純平君が 戦死なさったって伺って 信じられない思いで ここへ…。」
蓮子「はなちゃん。 あなたが 純平を戦地へ送ったのよ。 あなた… ラジオで 日本中の子どもたちに 語りかけてたじゃない。 『お国のために 命をささげなさい』と。 あの子を返して! 純平を返してちょうだい!」
花子「蓮様…。」
<これほど悲しい友との再会が あるでしょうか。 ごきげんよう。 さようなら。>