あらすじ
蓮子(仲間由紀恵)から純平(大和田健介)が死んだのはあなたのせいだと言われ、花子(吉高由里子)がしょう然としながら帰宅すると、家の前に吉太郎(賀来賢人)が立っていた。終戦後、連絡が取れていなかった吉太郎はみんなの近況を確かめたきり押し黙ってしまう。花子が防空ごうにしまっていた菓子を手に戻ってくると、吉太郎の姿はなかった。闇市で偶然に吉太郎を見かけた醍醐(高梨臨)は声をかけお互いの無事を喜ぶが…。
147回ネタバレ
宮本家
玄関
花子「蓮様…。」
蓮子「あなたが 純平を戦地へ送ったのよ。 あなた… ラジオで日本中の子どもたちに 語りかけてたじゃない。 『お国のために 命をささげなさい』と。 純平を返してちょうだい!」
花子「蓮様…。」
蓮子「お願い…。 純平を…。」
花子「蓮様…。」
(泣き声)
蓮子「あなたのせいで…。 あなたのせいで 純平が! 返して… 返してちょうだい!」
花子「蓮様…。」
龍一「蓮子 よさないか! 純平が死んだのは 花子さんのせいなんかじゃない。 戦争のせいだ。 花子さん… すみませんが 今日は お帰り下さい。」
(泣き声)
村岡家
玄関前
吉太郎「はな。」
花子「兄やん…。」
吉太郎「どうかしたのか?」
花子「あ… ごめんなさい。 入って。」
居間
吉太郎「美里と直子は?」
花子「学校よ。 空襲で 校舎は 焼けてしまったけど 9月から授業再開したの。」
吉太郎「そうか。 英治さんは?」
花子「ももや旭さんたちと 甲府に食糧を調達しに行ったわ。」
吉太郎「そうか。」
花子「兄やん?」
吉太郎「みんな無事だって聞いて 安心した。 大森の町も 随分焼けたのに この一角は焼け残って よかったな。」
花子「ええ。 兄やん ずっと顔見せてくれないから みんなで心配してたのよ。」
吉太郎「ああ… いろいろと忙しくてな。 醍醐さんは どうしてる?」
花子「南方から戻ったっきり まだ会えてないの。」
吉太郎「そうか…。」
花子「これから 日本は どうなるのかしら…。」
吉太郎「さあな…。」
花子「兄やんは? 軍人が大勢逮捕されてるって 新聞に出ていたけど。」
吉太郎「俺たちは 戦争に負けたんだ。 どうなっても しかたないさ。」
花子「兄やん…。 ごめんなさい 何も出してなくて。」
吉太郎「いや もう行くからいい。」
花子「まだ来たばかりじゃない。 ちょっと待ってて。 防空壕にお菓子があるの。」
花子「兄やん?」
闇市
醍醐「吉太郎さん? 吉太郎さん!」
吉太郎「醍醐さん…。」
醍醐「よかった…。 ご無事だったんですね。」
吉太郎「あなたも ご無事でよかった。 心配していたんです。」
醍醐「私も ずっと心配してたんです。」
吉太郎「もう 自分の事は 心配しないで下さい。」
醍醐「えっ?」
吉太郎「醍醐さん…。 あなたに会えてよかった。」
醍醐「吉太郎さん…。 どこかへ 行ってしまわれるんですか?」
吉太郎「いえ。 自分には 行くところなんてありません。 すみません。 これで失礼します。」
醍醐「待って下さい! また… すぐに お目にかかれますよね?」
吉太郎「どうか 幸せになって下さい。」
醍醐「吉太郎さん!」
宮本家
居間
回想
蓮子「純平。 よろしくね…。」
純平「じゃあ 僕 お母様を ず~っと守ってあげるよ。」
蓮子「純平! 武運長久を祈っています。」
純平「はい!」
回想終了
富士子「お母様も お夕食を召し上がって下さい。 もう 何日も 食べていないでしょう? 少しだけでも…。」
(戸が揺れる音)
蓮子「純平?」
玄関
蓮子「純平! 純平なの? 帰ってきてくれたのね! 純平。 純平…。 純平…。 純平!」
龍一「蓮子!」
(蓮子の泣き声と風の音)
村岡家
玄関前
梶原「ああ ここだよ。」
小泉「ああ…。 村岡花子先生のお宅 あの空襲でも 焼けずに残ったんですか。」
玄関
梶原「ごめんください!」
花子「は~い。 ああ 梶原さん お待ちしてました。 どうぞ。」
梶原「いや~ 元気そうで何よりだよ。」
花子「ええ。」
梶原「あっ こちら 小鳩書房で 児童文学の編集をしている 小泉君だ。」
花子「ごきげんよう。 村岡花子です。」
小泉「この度は お忙しいところ お時間を作って頂き 誠に恐縮でございます。」
花子「ああ そんな かしこまらないで下さい。 片づいてまいせんが どうぞ。」
小泉「失礼します。」
梶原「さあ。」
居間
小泉「うわ~! すごいですね! こんなに本が残っているとは。」
英治「ああ どうも 梶原さん。 ご無沙汰してます。」
梶原「いや~ 英治君も元気そうで何より!」
英治「おかげさまで。」
花子「英治さん。 こちら 小鳩書房の小泉さんよ。」
英治「どうも 初めまして。」
小泉「どうも。 お二人のお話は 梶原さんから いろいろと伺っています。 大変仲のいいご夫婦との事で。」
英治「ああ…。 いや…。」
梶原「英治君 聞いたよ 青凛社の事。 本当に残念だったね。」
英治「ええ…。 今は まだ 食糧を作ったりするので 精いっぱいですが また何かの形で 本の仕事を したいと思ってます。」
梶原「そうだね。」
英治「とにかく 家族と このうちが 無事だっただけで幸運です。 梶原さんのところは?」
梶原「家は 焼けてしまったけど 幸い 妻の実家は無事でね。 妻と2人で身を寄せているんだ。」
花子「富山先生… あっ 今は 梶原先生ですね。 お元気でいらっしゃいますか?」
梶原「ああ。 彼女は 家より本を 失ってしまった事を悔やんでるよ。」
花子「あっ あの いつでも 本を読みにいらして下さいと お伝え下さい。」
梶原「世の中が少し落ち着いてきたら 出版業界も 一気に動き出すと思うんだ。 これから 出版できる原稿を 探していると言うんで 小泉君を連れてきたんだよ。」
花子「ああ そうですか。」
梶原「実は 小泉君 『にじいろ』のファンだったそうだ。」
花子「そうなんですか?」
英治「へえ~!」
小泉「はい。 お小遣いをためて 毎号 買っていました。 先生の『王子と乞食』も もう夢中で読みましたよ。」
梶原「これは 君を紹介しない手は ないと思ってね。」
花子「『にじいろ』のファンと お仕事を 一緒にできる日が来るなんて 何だか 不思議な気分です。」
小泉「早速ですが 先生の翻訳されたものを 弊社で出版させて頂けませんか?」
花子「あ… それは 私も うれしいお話ですが でも すぐに 出版なさりたいのでしょう?」
小泉「そうなんです。 短編でも長編でも 何か 翻訳が終わっている原稿が あれば。」
花子「あっ ちょっとお待ち下さい。」
書斎
花子「よいしょ。」
居間
花子「お待たせしました。 こちらの作品は どうでしょうか?」
小泉「ああ… ストー夫人ですか。」
花子「ええ 戦前に 訳し終えたものなんですけど 結局 出版を 見合わせる事になってしまって。 こちらで よろしければ。」
小泉「ありがとうございます。」
花子「それから…。 こちらは 翻訳し終わったばかりの ものなんです。」
<花子が 空襲の中 命懸けで守り 翻訳した物語が いよいよ出版されるのでしょうか。 ごきげんよう。 さようなら。>