あらすじ
突然甲府に帰って来た吉太郎(賀来賢人)も交え、吉平(伊原剛志)、ふじ(室井滋)、花子(吉高由里子)、かよ(黒木華)、もも(土屋太鳳)と久しぶりに家族全員そろっての夕食。しかし、どこか浮かない様子の吉太郎を吉平もふじも心配する。みんなが寝静まった後、吉平はこっそり寝床を抜け出し、ひとりいろりのそばに座る吉太郎に声をかける。みな生き延びてくれてよかったと話す父に、吉太郎は少しずつ胸の内を語り出す。
149回ネタバレ
村岡家
居間
吉平「ああ~。」
ふじ「あっ! あんた お酒は駄目だって お医者様に止められてるじゃん!」
花子「ほうだよ おとう!」
吉平「硬いこん言うんじゃねえ。 せっかく 吉太郎が帰ってきたっていうに。」
かよ「ほんなこん言って また倒れちまったら どうするでえ?」
もも「ほうだよ。」
吉平「ほれにしても こうやって みんな そろって うちぃ集まるの何十年ぶりずら?」
吉太郎「ここは 昔のまんまだな。」
リン「ふじちゃ~ん! 大変 大変! てっ! もしかして 吉太郎け?」
吉太郎「どうも おばさん ご無沙汰してます。」
リン「はあ~ 無事だっただけ。 長え事会わんうちに えろう老けたじゃんね。」
(笑い声)
ふじ「ほれで リンさん 何が大変でえ?」
リン「ほうだ ほうだ! ふじちゃんと私が大好きな 岡 晴夫が 今日 甲府の集会場来て 歌うだとう!」
ふじ「てっ…。 岡 晴夫!」
リン「ほら! 入場券も手に入れただよ。 一緒に行かざあ!」
ふじ「ほうだけんど うちは 久しぶりの家族水入らずさあ。 悪いけんど これは ほかの人と行ってくりょう。」
リン「ほうけ…。 本当にいいだけ?」
ふじ「ああ いいさよう。」
リン「本当にいいだけ?」
ふじ「いいさよう。」
リン「ほうけ。 ふんじゃあ ほうさしてもろおう。 じゃあ! ♬『あかいランタン』」
夜
吉太郎「ずっと ここで 百姓やってりゃ よかったのかな…。 おとうに精いっぱい逆らって このうち捨てて 憲兵になったけど…。」
回想
吉太郎「兵役が終わっても そのまま軍隊に残れるように 頑張ろうと思ってるです。」
周造「てっ。」
吉太郎「職業軍人を 目指すつもりでごいす!」
(拍手)
徳丸「吉太郎君! よく言った!」
吉太郎「おらは おとうみてえに フラフラ生きたりしねえ。」
回想終了
吉太郎「自分は正しいって 信じて やってきた。 だけど… 全てが 間違ってたような気がして…。」
吉平「吉太郎… おまん 死のうとしてるだけ。」
吉太郎「憲兵なんか ならなきゃ よかった…。 俺のしてきた事は 全部 無駄だった。」
吉平「ほりゃあ 違う。」
吉太郎「慰めは いらんです。 国は負けたのに 憲兵なんかしてたやつは 生きてる資格もないって 世間は みんな思ってます。 おとうも そう思ってるんでしょう?」
吉平「(ため息) ふざけるんじゃねえ。 俺は おまんに うちの仕事をさして 上の学校にも 行かしてやれなんだこん ず~っと悔やんできた。 ふんだけんど おまんは 自分の人生を 一っから 自分の力で切り開えたじゃん。」
吉平「違うだけ? 必死で生きてさえいりゃあ 人生に無駄なこんなんて これっぽっちもねえだ。 おまんの選んだ道は 間違うちゃいん。 吉太郎…。 世間が何と言おうと おまんは 俺の誇りじゃん。 これまでも これっからも。 うん。 よ~く帰ってきてくれたな。」
吉太郎「(泣き声)」
翌朝
花子「兄やん?」
吉太郎「おとう。 おかあ。 おらを このうちに置いてくりょう。」
ふじ「てっ!」
吉太郎「おとう… ブドウ酒の造り方を 教えてくれちゃあ!」
吉平「よ~し。 分かった。」
吉太郎「ありがとうごいす…。 ありがとうごいす!」
ふじ「吉太郎…。 本当に… 本当にいいだけ?」
吉太郎「おかあ。 野良仕事は 久しぶりだから 足手まといかもしれんけんど 一生懸命やります。」
ふじ「ほうけ。 吉太郎。」
玄関
朝市「はな。 東京に戻るだけ?」
花子「ああ 朝市。 うん。 私だけ 一足先に帰るこんにしたの。」
朝市「ほうか。 おじさん… 吉太郎さんが ブドウ酒作り手伝ってくれるの よっぽど うれしいみてえじゃん。 えらく張り切って畑行った。」
花子「ほうなのよ。 おとう 大丈夫かな…。」
朝市「おじさん はなが また ラジオ出るのも う~んと楽しみにしてたじゃん。 はな… どうしたでえ?」
花子「私… ラジオに出て しゃべっていいのかどうか まだ迷ってるさ…。」
朝市「どうして?」
花子「蓮様の息子さんは 私のラジオを聞いてくれていたの。 その息子さん… 終戦の直前に戦死なさったの。」
朝市「ほうだっただけ…。」
花子「私のラジオを聞いて 戦地へ行った子どもは ほかにも 大勢いるわ。 毎日のように 『兵隊さんが こんなすばらしい活躍をした。 兵隊さんは 立派だ』って ラジオで 子どもたちに 言ってただもの…。」
朝市「ほれなら… おらだって同じじゃん。 お国のために命をささげる事は 立派な事だって 毎日毎日 生徒たちに教えてきた。 教え子も 大勢 戦死した。 申し訳なくて… 後悔しても しきれねえ。」
花子「朝市…。」
朝市「ふんだけんど 償っていくしかねえ。 自分のできる事を 一所懸命やって 償っていくしかないんじゃねえか。 はな。 はなが本当に話したかった話って 何でえ?」
花子「えっ?」
朝市「戦争中にできなんだ話は いっぺえあるはずだ。 ほれを話せばいいじゃん。 はなの『ごきげんよう』を 楽しみぃしてる子どもは 大勢いると思う。」
吉太郎「はな。 おらも ほう思う。」
花子「兄やん…。」
吉太郎「おとうも言ってたさ。 人生に無駄なこんは 一個もねえって。 早く行かんと 汽車に乗り遅れちもう。」
花子「あ… うん。」
朝市「駅まで送ってく。」
花子「大丈夫。 朝市 ありがとう。 兄やん ありがとう。 おかげで勇気が出たわ。」
朝市「ほれじゃ おらも はなのラジオ 楽しみぃしてるから。」
<曲がり角の先の未来に向かって それぞれが歩きだしました。>
花子「ごきげんよう。」
<ごきげんよう。 さようなら。>