あらすじ
孤児院での奉仕活動で出会った帝大生・北澤(加藤慶祐)に「花子さん」と呼ばれ、胸のときめきを抑えられないはな(吉高由里子)。それに気づいた醍醐(高梨臨)ははなに、北澤と親しくなりたければ貧しい農家の出身であることを黙っておいた方がいいとアドバイスする。その時は、うそをついてまで北澤と親しくなりたくないと答えるはな。だが、北澤と一緒に子どもたちのための紙芝居を作っているとき、家族について問われ…。
14回ネタバレ
孤児院
北澤「花子さんは 英語の発音が 実にきれいですね。」
はな「てっ!」
北澤「花子さん?」
はな「てっ… 花子…。」
北澤「どうかなさいましたか? 花子さん。」
はな「あっ いえ… 何でもございません。」
<生まれて初めて はなを 花子と呼んでくれる人が現れ はなは 恋に落ちてしまったようです。>
修和女学校
給湯室
3人「1 2の 3!」
松平「醍醐さんが 一番多いですわね!」
醍醐「皆さんだって。 あら。 はなさんは 一通も頂かなかったの? ついに 奥てのはなさんにも ときめく男性が現れたようね。」
はな「えっ?」
醍醐「北澤様でしょ?」
はな「ち… 違います!」
畠山「隠しても駄目ですわ。」
醍醐「はなさんも 早く 北澤様から 付け文が来るといいわね。」
松平「では 失礼して 私たち 読ませて頂くわ。」
醍醐「ブラックバーン校長! それだけは…。」
3人「あ~!」
ブラックバーン「(英語)」
はな「『反省文 100回』って…。」
松平「全部 燃やすなんて…。」
醍醐「あの中に 私の王子様が いたかもしれないのに…。 こうなったら 次は 絶対 ブラックバーン校長に 見つからないように うまくやりましょう!」
はな「醍醐さん…。」
醍醐「門限の5時までに 全部開封して 外で読んでから帰りましょう。 付け文には 将来の結婚と 女の幸せが 懸かってるんですもの!」
畠山「それ ミニーちゃんに? はなさんは 本当に 子どもが好きなのね。」
はな「泣いてるミニーちゃんを見ていたら うちの一番小さい妹の事を 思い出して。 毎日 私がおんぶして 学校に行ってたんです。」
畠山「妹さんをおんぶして学校へ?」
はな「ここには そういう生徒は いないけれど 私が行ってた尋常小学校では 女の子は 子守をしながら 授業を受けていました。」
醍醐「はなさん。 余計な事かもしれないけど 北澤様と お近づきになりたかったら あなたが給費生だという事は 黙っておいた方がよくってよ。 あの方のおうちは 金沢の由緒ある お家柄で お父様は 地元で一番の名士なんですって。]
醍醐「家柄もよくて 帝大生で 背も高くて…。 私 はなさんに好きな人ができて すごく うれしいの。 是非 あの方と うまくいってほしいのよ。 だから…。」
はな「醍醐さん。 ありがとう。 でも私… そんな嘘をついてまで 帝大生と お近づきになんて なりたくありません。」
<その時は 心から そう思う はなでしたが…。」
孤児院
♬~(讃美歌)
<次の日曜日 あの方と目が合うと やっぱり どうしても ドキドキ ときめいてしまうのでした。>
北澤「来週 孤児院の子どもたちのために クリスマス会を開き 何か面白い余興を やろうと思うんです。」
岩田「そこで 修和女学校の 麗しいお嬢様たちにも お手伝いをお願いしたいのです。」
醍醐「ええ。 喜んで お力になりますわ。」
はな「何をやるんですか?」
北澤「それが まだ 決まっていなくて。」
岩田「皆さんの得意なものを 教えて頂けませんか?」
松平「私は お琴を少々。」
畠山「私は 踊りを。」
はな「あの… 紙芝居は どうでしょう? 紙と絵の具があれば できますし 子どもたち きっと喜んでくれると思うんです。」
北澤「例えば どんな?」
はな「『親指姫』は?」
北澤「アンデルセンの『親指姫』ですか。」
はな「はい。」
北澤「いいですね。 あっ 皆さん いかがですか?」
「いいんじゃないでしょうか。」
「いいんじゃないでしょうか。」
北澤「花子さん。」
はな「はい。」
北澤「『親指姫』は いつ 読まれたんですか?」
はな「父が 一番最初に 買ってきてくれた絵本なんです。」
回想
吉平「これじゃ~!」
はな「てっ! 本じゃん! おら 初めて本に触った。 夢みてえじゃん!」
回想終了
北澤「そうですか。 いいお父様ですね。 お父様は どんな お仕事を していらっしゃるんですか?」
はな「父は… あちこち飛び回って 商いをしております。」
北澤「海外にも よく いらっしゃるんですか?」
はな「海外?」
北澤「花子さんの英語の発音は お父様仕込みかと。」
はな「あ…。 英語は 最初だけ 父に教わりました。」
回想
吉平「グッド アフタヌーン。」
回想終了
北澤「やっぱり そうか。 花子さんのお父様は 貿易会社を 経営なさってるんですね。」
はな「ええ…。 そうです。」
伝道行商
<そのころ おとうは おとうで 家族の知らない 秘密の仕事をしておりました。>
吉平「はい どうぞ!」
吉平「日露戦争が終わって 国は 軍隊ばかりに金を使っている。 そのために 税金を どんどん上げて 俺たちの生活は ますます苦しくなるばっかりだ! こんな事でいいのか! いいはずがない! 皆さん こんな世の中を変えるのは 社会主義なる思想です。 まずは ここにある本を読んで 勉強してみませんか? お願いします!」
山田「ちょっと おめえ! どっか 行ってくんねえか。 おめえがいると こっちの客まで逃げて 商売 上がったりだよ! ほれ! これ やるから! 早く どっか行ってくれ。」
吉平「ほれじゃあ 代わりに これ読んでみてくれちゃあ。」
山田「おら 要らねえよ!」
吉平「字ぃ読めんでも分かるだよ。」
孤児院
(拍手)
<そして いよいよ クリスマスの日がやって来ました。>
はな『昔々 ある所に 子どものいない女の人が 1人で住んでいました。 女の人は 魔法使いに頼みました』。
松平『お願いがあります。 小さくてもいいから かわいい女の子が欲しいのです』。
はな『魔法使いは 花の種をくれました。 女の人が その種をまくと… チューリップの花が咲き そのつぼみから なんと 親指ほどの小さな女の子が 生まれました』。
醍醐『初めまして。 私 親指姫です』。
『ガアガアガア僕は ヒキガエルだ』。
(拍手)
岩田「みんな 目を開けて。 こっち おいで。」
(歓声)
はな「はい メリークリスマス。」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
はな「はい メリークリスマス。」
「ありがとう!」
岩田「大成功でしたね。」
醍醐「ええ。 では 私たちも これで。 ごきげんよう。」
岩田「あっ 醍醐さん。」
<携帯電話やメールがない頃 男性は こんなふうに お目当ての女性のたもとに 付け文を投げ入れたのです。>
醍醐「よいクリスマスになりましたね。 楽しかったですわね。」
北澤「あの子に 英語で 紙芝居をやってあげたいんです。」
はな「私も 同じ事 考えてました。」
北澤「花子さん。 親指姫をやって頂けませんか。」
はな「ええ。」
北澤『ツバメは親指姫を 背中に乗せて 花の国に 連れて行ってくれました そこには小さい王子様がいて 親指姫をひとめ見て 好きになりました 王子様が言いました 私の妻になってください』
はな「えっ?」
北澤「えっ?」
はな『王子様… 私もお慕いしております …と親指姫は言いました』
北澤「ふたりは結婚して幸せに暮らしました」
修和女学校
正門前
北澤「彼女たち 何をしてるんですか?」
はな「付け文を寄宿舎に持って帰ると 校長先生に 燃やされてしまうんです。」
北澤「えっ そうなんですか?」
松平「あっ 先生。」
茂木「あなたたち 何をしてるんですか。 早く お入りなさい。」
3人「はい。」
はな「はあ… びっくりした。」
北澤「こんなところを見つかったら 大変でしたね。 僕は 正月は金沢に狩ります。 しばらく お会いできませんね。」
はな「ええ…。」
北澤「今日は 本当に楽しかった。」
はな「ええ。 私も。」
北澤「今度は 新年会をやりましょう。」
<はなは 嘘をついているのが 急に つらくなりました。>
はな「北澤さん。」
北澤「はい。」
はな「実は… 私 給費生…。」
(鐘の音)
はな「すいません 今 何時ですか?」
北澤「5時1分過ぎたところですが…。」
はな「てっ! 大変だ 門限破っちまった!」
北澤「えっ?」
はな「北澤さん また。 ごきげんよう。 さようなら。」
<はなの初恋 この分では 先が思いやられますね。 ごきげんよう。 さようなら。>