ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第150回「どんな朝でも美しい」【第25週】

あらすじ

吉平(伊原剛志)と吉太郎(賀来賢人)がぶどう酒作りから安東家に帰ってくると、ふじ(室井滋)が「ずっと待っている人がいる」と言う。醍醐(高梨臨)だった。醍醐は心配していたと吉太郎に詰め寄り、吉平とふじに「家事は得意ではないが努力するからここに置いてほしい」と頭を下げるが、吉太郎は…。一方、東京へ戻ることになった花子(吉高由里子)は朝市(窪田正孝)に「ラジオに出演するかどうか迷っている」と打ち明ける。

150ネタバレ

村岡家

廊下

花子「もしもし 黒沢さん? 村岡です。 ああ… あの~… ラジオ出演のお話 是非 受けさせて下さい。 はい。」

安東家

玄関

ふじ「お帰り。 ずっと待ってるだよ。」

吉太郎「醍醐さん?」

居間

吉平「おお あんたは はなの女学校からの友達の…。」

醍醐「お義父様 吉太郎さん 突然 押しかけまして…。」

吉太郎「醍醐さん どうして ここに?」

醍醐「直接 吉太郎さんに お伝えしに来たんです。 私が… どれほど怒ってるいるか。」

吉太郎「えっ?」

醍醐「ずっと捜してたんですよ! 心配で心配で 夜も眠れなくて…。」

吉太郎「そんなに心配かけていたとは… すみませんでした。」

醍醐「もう これ以上 吉太郎さんを 待っていられません! これ以上 待ってたら よぼよぼのおばあちゃんに なってしまいます。 私も 吉太郎さんと一緒に ブドウ酒を造ります!」

吉太郎「てっ?」

2人「て~っ。」

醍醐「お義父様 お義母様。 私 お料理もお掃除も ちっとも得意ではありませんが これから 必死に努力致します。 ですから… 私を ここに置いて下さい。」

吉太郎「あの… 醍醐さん。」

醍醐「私 帰れと言われても 帰りませんから。」

吉太郎「あなたは… いつも肝心な事を 自分から どんどん先に 言ってしまう!」

醍醐「ごめんなさい 私…。」

吉太郎「おとう。 おかあ。 おら この人と一緒んなりてえ。」

吉太郎「こんなボロ家に 本当に来てくれるんですか?」

醍醐「はい…。 はい!」

リン「てっ! 吉太郎が やっとこさ結婚するだと!?」

吉平「てっ リンさん。」

リン「あっ おら ちょっくら 用事を思い出したさ。」

ふじ「あ… あ~ 行っちまった。 あ~。」

吉平「こりゃあ あっという間に 村中に知れ渡るらな。」

(笑い声)

<年が明け 花子が5年ぶりに ラジオに 出演する日がやって来ました。>

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「ご無沙汰しております。」

「ご無沙汰しております。」

黒沢「村岡先生と また こうして ご一緒できた事 本当にうれしいです。」

花子「こちらこそ 黒沢さんが いて下さって心強いです。」

黒沢「今は GHQの 厳しい統制下に置かれていて 以前とは違う ご不便を おかけするかもしれませんが…。」

『ママさん』

花子「ママさん?」

『今日の原稿だ。 検閲済みだから 勝手に変更するなよ』

花子『承知しています』

『へえ あんたそんなチビなのに 本当に英語がしゃべれるんだな』

花子「チビ…。」

『問題起こすなよ いい万年筆だな くれよ』

「あっ この万年筆は 父の形見で…。」

『何だ 言うことが聞けないのか 戦争に勝ったのは誰だ』

花子「Mister.」

「なんだいママさん」

花子『その万年筆は お父様の形見だそうです 返しなさい』

黒沢「村岡先生。」

花子『確かに 日本は負けました だからといって そんな傍若無人に振舞って いいと思ってるんですか 初対面の女性に ヘイ ママさんなどと 言うのは失礼です。』

『まあまあ』

花子『どうか進駐軍として 品位のある行動をして下さい

『このご婦人の言うとおりだ 今すぐガムを捨てて謝罪しろ』

『申し訳ありませんでした』

『退出しろ』

『部下の非礼をお詫びします 失礼しました』

黒沢「あの… 何と?」

花子「『部下の非礼をお詫びします』と おっしゃっています。」

『あなたはまるでポーシャみたいだ ポーシャを知っていますか?』

花子『シェイクスピアの 『ヴェニスの商人』ですね』

安東家

寝室

吉平「そろそろ はなのラジオが始まるら。」

吉太郎「おとう 無理しちゃ駄目じゃん。」

吉平「今日は 気分がいいだ。」

醍醐「はなさん 今日は 何のお話をするのかしら?」

アナウンサー『皆さん 本日は 『ごきげんよう』でおなじみの 村岡花子さんをお招きしました』。

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「全国の皆さん ごきげんよう。 村岡花子です。」

アナウンサー「村岡さん どうぞ よろしくお願い致します。」

花子「よろしくお願い致します。」

村岡家

居間

アナウンサー『村岡さんは 英語の 翻訳家としても ご活躍ですが どのようにして 英語を学ばれたんですか?』。

花子『修和女学校で カナダのすばらしい 宣教師の先生方から…』。

かよの露店

「『ごきげんよう』のおばさんの声 懐かしいな。」

「俺 尋常小学校の頃 毎日 楽しみにラジオ聞いてたよ。」

かよ「よかったら これ どうぞ。 おまけです。」

宇田川「また ラジオに出るなんて 『みみずの女王』も懲りないわね。」

花子『そこの本を ほとんど全部 読んでしまったので 『あなたのために 図書室を増築しなければ』と 冗談で言われた事もありました』。 翻訳という仕事に 興味を持ったのも 修和女学校で学んでいた時でした。」

回想

蓮子「脚本 最後まで読みました。 率直に感動致しました。 あなた やっぱり 翻訳力だけは 大したものだわ。」

回想終了

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「腹心の友が 翻訳の道へと 進む勇気をくれたのです。」

宮本家

居間

蓮子「はなちゃん…。」

JOAK東京放送局

スタジオ

アナウンサー「では 最初に 英語を教えて下さったのも 修和女学校の先生方ですか?」

花子「いいえ。 私に 最初に 英語を教えてくれたのは 父です。」

安東家

寝室

吉平「てっ… 俺のこんけ。」

花子『幼い頃から 本が大好きだった私を見て 父は 修和女学校に入れようと 思いついたのです』。

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「うちは 貧しい農家でしたが 私が給費生として 編入できるように              父は 奔走してくれました。」

回想

吉平「東京の女学校へ行ったら 大好きな本が なんぼうでも読めるだぞ。」

はな「本当?」

吉平「毎日 思っきし 本が読めるんじゃ。 ほういう学校に行きてえか?」

はな「うん!」

吉平「よ~し! おとうに任しとけ!」

回想終了

花子「10歳の時 初めて 故郷の甲府を出て 東京へ向かう汽車の中で 父が英語を教えてくれました。」

回想

吉平「グッド モーニング。 グッド アフタヌーン。 グッド イブニングじゃ。」

はな「何でえ ほれ。 何かの… 呪文け?」

吉平「朝は グッド モーニング。」

はな「グッド モーニング…。」

吉平「昼は グッド アフタヌーン。」

はな「グッド アフタヌーン…。」

吉平「そうじゃ。」

回想終了

花子「いつも 突拍子もない事をして 母や私たち兄妹を ハラハラさせる父ですが あの おとうがいなかったら 私は 英語に出会う事も 翻訳の道へと進む事も ありませんでした。」

安東家

寝室

吉平「はな…。」

JOAK東京放送局

スタジオ

花子「外国の言葉を知るという事は それだけ 多くの心の窓を持つという事です。 戦時中は その窓も 閉ざさなければいけませんでした。 さあ 心の窓を大きく開けて 一歩を踏み出しましょう。 それぞれに 戦争のむごさや 家族を失う悲しみを 経験しましたが 勇気を出して歩いていけば その先には きっと 一番よいものが待っていると 私は 信じています。」

安東家

寝室

ふじ「あんた。 あ…。」

<花子の声を聞きながら 吉平は 息を引き取りました。 ごきげんよう。 さようなら。>

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