あらすじ
長年の確執を越えて、再会を果たした花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)。花子は蓮子に、生前の純平に「母のことを頼みます」と言われていたことを打ち明ける。蓮子は残った家族のためにも早く立ち直らなければと言うが、そのきっかけをつかめないでいた。家に戻り、書斎で考えていた花子は「戦争で子どもを失った母親は大勢いるはず」と思いつき、英治(鈴木亮平)に相談した上で、ある所へ電話をかける…。
153回ネタバレ
宮本家
仏間
花子「私は 純平君や大勢の子どもたちを 戦地へ駆り立てた。 お国とために命をささげなさいと ラジオで語りかけて…。」
蓮子「お国のために 命を取られるくらいなら 一緒に連れて逃げればよかった。 この子を殺されるくらいなら…。」
(泣き声)
蓮子「涙なんか とっくに かれたと 思っていたのに まだ残っていたのね…。 まさか はなちゃんが来てくれるなんて 思ってもいなかったわ。」
花子「歩が死んだ時も 蓮様 そばにいてくれたじゃない。 あの時 蓮様がいてくれなかったら 私 どうなっていた事か…。 純平君からも 蓮様の事 頼まれたの。」
蓮子「純平が こんな私の姿を見たら 悲しむわね…。」
花子「そうよ 蓮様。」
蓮子「でも…。」
村岡家
居間
花子「ねえ 英治さん。 戦争で子どもを失った母親は 大勢いるはず。 その人たちの悲しみを 一番よく分かるのは 蓮様だわ。 その人たちに ラジオで 語りかけるのは どうかと思うの。」
英治「花子さん すごくいい考えだと思うよ。」
花子「早速 電話してみるわ。」
廊下
花子「本当ですか! ありがとうございます。 じゃあ よろしくお願いします。 ええ。 失礼します。 蓮様の出演の事 JOAKの黒沢さんが 是非やりましょうって 言って下さったわ。」
英治「そうか。」
花子「早速 蓮様に話してみるわ。」
英治「うん。」
<そして 蓮子がラジオに出演する日が やってまいりました。>
JOAK東京放送局
廊下
黒沢「蓮子さん お久しぶりです。」
蓮子「ごきげんよう。 今日は お世話になります。」
黒沢「GHQの検閲が入って 何か所か 削らないとなりませんが…。 この番組は きっと反響を呼びます。」
花子「ええ。 私も そう思います。」
黒沢「では 本番は間もなくですから。」
蓮子「大丈夫かしら…。」
花子「大丈夫よ。 落ち着いて。」
蓮子「何だか恐ろしくなってきたわ。」
花子「ねえ 蓮様。 スコット先生を覚えてる?」
蓮子「ええ。 修和女学校の…。」
花子「ええ。 あの先生がカナダに帰国なさる時に 本を渡して下さったの。 そこに出てくる主人公が こう言うの。 『自分の未来は まっすぐに延びた 道のように思えた。 いつも 先まで ずっと見通せるような気がした。」
花子「ところが 今 曲がり角に来たのよ。 曲がり角を曲がった先に 何があるのかは 分からないの。 でも きっと 一番よいものに 違いないと思うの』。」
蓮子「その主人公 はなちゃんみたいね。」
花子「蓮様も 勇気を出して 曲がり角を曲がって。 きっと 蓮様の思いは届くわ。」
スタジオ
蓮子「私が 今日 ここでお話したいのは 平和の尊さでございます。 先の戦争で 私は 最愛の息子 純平を失いました。 私にとって 息子は 何ものにも 代え難い存在でございました。」
宮本家
居間
蓮子『『お母様は 僕がお守りします』。 幼い頃より 息子は そう言って 母である私を いつも守ってくれました。 本当に 心の優しい子でした』。
JOAK東京放送局
スタジオ
蓮子「子を失う事は 心臓をもぎ取られるよりも つらい事なのだと 私は 身をもって知りました。 もしも 女ばかりに 政治を任されたならば 戦争は 決してしないでしょう。 かわいい息子を殺しに出す母親が 一人だってありましょうか。」
かよの露店
蓮子『もう二度と このような 悲痛な思いをする母親を 生み出してはなりません。 もう二度と 最愛の子を奪わせては ならないのです』。
JOAK東京放送局
スタジオ
蓮子「戦争は 人類を最大の不幸に導く 唯一の現実です。 最愛の子を亡くされたお母様方 あなた方は 独りではありません。 同じ悲しみを抱く母が 全国には 大勢おります。 私たちは その悲しみをもって 平和な国を造らねばならないと 思うのです。 私は 命が続く限り 平和を訴え続けてまいります。」
廊下
花子「蓮様… すばらしかったわ。」
蓮子「はなちゃん。」
花子「送るわ。」
蓮子「もう 一人で大丈夫よ。 ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
宮本家
仏間
蓮子『焼跡に 芽吹く木のありかのごとく 吾子の命のかへらぬものか』。
村岡家
庭
「貸して 貸して!」
「美里おねえちゃん! その本 貸して!」
美里「いいわよ。 私は 暗記するほど読んだから。」
「ありがとう!」
美里「あっ じゃあ ハルキ君は こっちね。」
「ありがとう!」
美里「どういたしまして。」
花子「一度 本の整理をした方が よさそうね。」
英治「せっかく 焼けずに残ったのに これじゃなあ…。」
美里「ねえ みんなに ご本を貸してあげるのは どう? お兄ちゃまのご本や 私や直子ちゃんが 小さい頃に読んだご本を 近所の子に貸してあげるの。」
英治「なるほど。 図書館か! やろうよ! 日本で一番小さい子ども図書館。」
花子「そうね。 みんなに読んでもらえた方が 本も喜ぶわね。」
美里「お母様。」
「図書館だ!」
「図書館が出来る!」
子どもたち「万歳! 万歳! 万歳! 万歳!」
(拍手と子どもたちの歓声)
<村岡家の庭に建てられた 小さな図書館は 連日 子どもたちでいっぱいです。 花子たちは 歩文庫ライブラリーと名付けました。>
歩文庫
「美里おねえさん これ お願いします!」
美里「はい。」
<館長は 18歳になった美里です。」
英治「はい どうぞ。」
「副館長さん ありがとう!」
<英治は 副館長として 歩文庫を運営しています。>
書斎
子どもたち「おばさん!」
「これ ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「行こうぜ!」
<ごきげんよう。 さようなら。>