ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第156回(最終回)「曲り角の先に」【最終週】

あらすじ

終戦後、筆を折ったままだった宇田川(山田真歩)から『赤毛のアン』を読んで、また書けそうな気がする、と初めてお礼を言われた花子(吉高由里子)は、宇田川が立ち直ってくれたことを心から喜ぶ。英治(鈴木亮平)、かよ(黒木華)、醍醐(高梨臨)、蓮子(仲間由紀恵)ら花子の家族や友人たちは、めいめいの場所で大切な人と『赤毛のアン』を読み、自分と重なる部分に共感していた。やがて出版を祝う会が催されることになり…。

156回(最終回)ネタバレ

村岡家

居間

宇田川「敗戦後 私が筆を折っていたのは ご存じ?」

花子「ええ…。」

宇田川「何を書くべきか 分からなくなってしまったの。 7年間も 宇田川満代は がらんどうだった。 その私が… また書けるような気がするの。 ありがとう。」

花子「宇田川先生…。」

宇田川「あなたじゃなくて 『赤毛のアン』にお礼を言ったのよ。」

花子「あっ 今 お茶を…。」

玄関前

花子「宇田川先生!」

宇田川「もう 書きたい言葉が あふれているんだから 邪魔しないで!」

<『赤毛のアン』は たちまち ベストセラーになりました。>

安東家

居間

醍醐「『プリンス・エドワード島は 世界中で 一番きれいな所だって いつも聞いていましたから 自分が そこに住んでいるところを よく想像していましたけれど まさか 本当に そうなるなんて 夢にも思わなかったわ』。」

木場家

朝市「『もう驚きもしないし あんた方を 気の毒とも思いませんよ』。」

リン「このリンド夫人ちゅうのは 口やかましくって 人騒がせなおばさんじゃんね~。」

徳丸商店

武「『貧乏な者の幸せの一つは たくさん 想像できるものが あるというところだわね』。」

宮本家

縁側

蓮子「『愛すべき懐かしき世界よ。 あなたは なんて美しいのでしょう。 ここで暮らす事ができて この上なく うれしいわ』。」

かよ宅

かよ「『小さな手が 自分の手に触れた時 何か 身内の温まるような 快いものが マリラの胸に湧き上がった。 多分 これまで味わわなかった 母性愛であろう』。」

益田家

旭「『重なっていく日々は 一年と名付けられたネックレスに 連ねられた 黄金の玉のようにも アンには思われた』。」

勅使河原邸

白鳥「『自分が美人なのが 一番すてきだけれど それは 私には駄目だから その次にすてきな事は 美人の腹心の友を持つ事だわ』。」

『赤毛のアン』出版記念会

会場

<今日は 出版の成功を祝うパーティーです。>

廊下

醍醐「はなさん。 間に合いそう? 大丈夫?」

花子「話したい事が 次から次へとあふれてくるの。」

小泉「ああ… 村岡先生。 新聞や雑誌から 取材の依頼が殺到しています。 後で お時間下さい。」

門倉「その前に 続編の打ち合わせだよ。」

花子「てっ… 今 何て?」

門倉「ですから 『赤毛のアン』 続編を出したいんです。」

花子「てっ! 続編?」

英治「はい。 君が読むのを我慢していた 『ANNE ofAVONLEA』。 今日のお祝いに 持ってきたんだけど ちょうどよかったね。」

花子「英治さん…。」

会場

梶原「ルーシー・モード・モンゴメリという カナダの作家と 村岡花子君は 移し鏡のように重なり合うのです。 ありふれた日常を輝きに変える 言葉がちりばめられた この小説は まさに 非凡に通じる 洗練された平凡であります。 必ず 時代を越えて読み継がれる ベストセラーとなる事でしょう。 どうも ありがとうございました。」

(拍手)

小泉「では 最後に 日本語版『赤毛のアン』の 生みの親である 村岡花子先生に ご登壇頂きましょう。」

醍醐「どうしたのかしら。」

廊下

花子「『contankerous… contankerous…。』」

英治「花子さん!」

花子「はい 英治さん。 ねえ 辞書は ないかしら?」

英治「えっ!? みんな 君のスピーチを待ってるんだよ! ほら 急いで!」

会場

(拍手)

花子「あ… ほ… 本日は こんなに大勢の皆さまに 『赤毛のアン』の出版を 祝って頂き こんなに幸せな事はありません。 私は 本の力を信じています。 一冊の本が心の支えとなって 自分を絶えず励まし 勇気づけてくれるのです。 私にとって 『ANNE of GREEN GABLES』は その一冊でした。」

花子「主人公を取り巻いている世界は 私が修和女学校の寄宿舎で 過ごした日々と あまりにも似ていました。 厳しいけれど 深い愛情を持つマリラは まるで 校長のブラックバーン先生のようでした。 腹心の友 ダイアナは 私が寄宿舎で出会った 2人の大切な親友です。 彼女たちは 生涯を通じて 私の腹心の友となってくれました。」

醍醐「2人? 私も…。」

花子「この本との出会いは 運命のように思いました。 13年前 私は ミス スコットと約束しました。 『平和が訪れた時 必ず この本を翻訳して 日本の多くの人に 読んでもらいます』と。 けれど 日本は 大きな曲がり角を曲がり 戦争は 激しくなる一方でした。 どんなに不安で暗い夜でも 必ず明けて 朝がやって来ます。」

花子「そして 曲がり角の先には きっと 一番いいものが待っている。 それは 物語の中で アンが教えてくれた事でした。 私の今までの人生を 振り返っても いくつもの曲がり角を 曲がってきました。 関東大震災 愛する息子の死 戦争…。」

花子「思いがけないところで 曲がり角を曲がり 見通しのきかない細い道を 歩く事になったとしても そこにも 優しい心 幸福 友情などの 美しい花が咲いていると 今は 強く信じています。 アンのように 勇気を出して歩いていけば 曲がり角の先には きっと… きっと 美しい景色が待っています。 日本中に アンの腹心の友ができますように。」

(拍手)

階段

小泉「村岡先生!」

英治「花子さん!」

入口

花子「contankerous… contankerous…」

村岡家

書斎

花子「contankerous… contankerous… contankerous…。 contankerous… contankerous…。 あった。 『意地悪な』 『気難しい』か。」

花子「『ある気持ちのよい 8月の午後の事。 プリンス・エドワード島の 一軒の農家の玄関先 赤い砂岩の踏み段の上に 背の高い ほっそりとした少女が 座っていた』。

(羽ばたく音)

<花子が命懸けで守り 愛と友情を込めて翻訳した 『赤毛のアン』は 昭和から平成の時代を経て 今なお 多くの人々に読み継がれ 希望を与えています。>

花子「『アンの心は はるか彼方の すばらしい世界へ 飛び去っていた』。」

<ごきげんよう。 さようなら。>

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