ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第16回「初恋パルピテーション!」【第3週】

あらすじ

ブラックバーン(トーディ・クラーク)の計らいで、5年ぶりに甲府へ里帰りすることになったはな(吉高由里子)。道で偶然再会した朝市(窪田正孝)は、見違えるようにきれいになったはなに驚くばかり。それは実家の家族も同じだが、ふじ(室井滋)や周造(石橋蓮司)ははなを温かく迎える。夕食時、吉平(伊原剛志)ははなの頑張りをほめちぎるが、兄・吉太郎(賀来賢人)や妹・かよ(黒木華)ははなにそっけない態度を見せる…。

16回ネタバレ

道中

<ブラックバーン校長の取り計らいで はなは 5年ぶりに うちへ帰れる事になりました。>

朝市「まさか…。 はなけ?」

はな「ひょっとして 朝市? お久しぶりです。 花子です。」

朝市「ふ… 本当に はなけ?」

はな「はなではございません。 花子と呼んで下さい。」

朝市「やっぱし はなだ。」

はな「では ごきげんよう。」

安東家

玄関

(足音)

リン「はな まだけ?」

(鶏の鳴き声)

道中

はな「ここは ちっとも変わりませんね。 あ~! 気持ちいい!」

<『朝市ったら 何で ひと言も しゃべらねえだ? 何 怒ってるだ?』と はなは 思っておりました。 怒っているのではなく 朝市は 声が出なかったのです。 さなぎだった はなが 美しいチョウになって 帰ってきたみてえで。>

安東家

居間

周造「てっ!」

吉太郎「てっ!」

ふじ「てっ!」

もも「てっ!」

かよ「てっ!」

はな「ごきげんよう。 ただいま帰りました。」

吉平「グッド アフタヌーン。 はな。」

はな「グッド アフタヌーン お父様。」

リン「おまん 本当に あのはなずらか?」

はな「ええ。 私 そんな変わりました?」

周造「そうさな… どこのお嬢様かと思ったずらよ。」

ふじ「お帰り はな。 大きくなったじゃんね~!」

はな「おかあ! おじぃやん。 兄やん。 かよ。 もも。 おばさん。 朝市。 会いたかったさ!」

ふじ「あ~!」

ふじ「さあ どうぞ。」

はな「うわ~! おいしそう!」

かよ「おかあ これ こせえるのに 昨日から あっちこっち駆け回って 大変だっただよ。」

はな「ありがとう。 おらの好きなんばっかじゃん。」

周造「ほいじゃ 頂きます。」

一同「頂きます。」

はな「うめえ~!」

吉太郎「毎日 華族のお嬢様たちと 同じ ごちそう食ってたら ほんなもん 口に合わんら。」

はな「ううん! おかあの ほうとうは 日本一じゃん!」

吉太郎「無理しんでいい。」

はな「兄やん…。」

吉平「ほりゃあ はなは 寄宿舎で 肉だの卵だの ぜいたくな食事 させてもらっとるが…。」

もも「肉だの卵 毎日け?」

吉平「おう。 ほの分 苦労して 朝から晩まで勉強しとるんじゃ。」

かよ「おらたちとは まるっきし違う世界の話じゃん。」

吉平「勉強は うんと努力して 頑張ったやつが勝つ。 身分や金持ちかどうかなんて 関係ねえ。 はなは 本当 よく頑張ってるだよ。」

はな「おとう。 せっかくの ごちそうが 冷めちもうよ。」

吉平「おお。」

ふじ「みんな た~んと食えし。 はなの好物の草餅もあるずら!」

はな「てっ! 草餅!」

ふじ「おじぃやんと吉太郎が ついてくれただよ。」

はな「ずっと食べたかったさ~! ありがとう! うめえ~!」

<せっかく焼いたクッキーですが はなは みんなに渡すのを ためらっていました。>

徳丸商店

三郎「見たこんもねえような べっぴんでごいすか。」

武「同じ汽車に乗り合わせて その娘っ子も甲府で降りただ。 おら あの人と お近づきになりてえ。 どこに住んでるだか 見つけだしてくりょう。」

3人「はっ!」

武「着てるもんが上等だったから きっと 大地主か いいとこのお嬢様ずら。」

(戸が開く音)

徳丸「ここいらに うちより 大地主なんか いる訳ねえずら! 武! ほんなこんより この成績は何でえ! おなごに うつつ抜かしてる場合け! 勉強しろし!」

武「はい…。」

安東家

居間

かよ「どうでえ? おら お姫様みてえけ?」

もも「うん! きれいじゃん。 おらは?」

かよ「ももも お姫様みてえ。」

はな「あっ かよ。 よく似合う。 脱ぐ事ないじゃない。 私も その着物 友達から借りたの。」

回想

醍醐「はなさん 聞いたわ!」

はな「醍醐さん! どうしたの?」

醍醐「久しぶりに 故郷に お帰りになるんでしょ? きれいに変身して お母様たちを びっくりさせておあげなさい。」

回想終了

はな「カバンも靴も 全部 その醍醐さんっていう友達が 貸してくれたの。 ねえ かよは 上の学校には 行かないの?」

かよ「行かん。」

はな「どうして?」

かよ「兄やんに言われただよ。 おなごが勉強なんしたって お嫁に行くのに 邪魔なだけずらって。」

はな「でも… 勉強で知らなかった事が 分かっていくのって 本当に わくわくするわよ。 かよ 歌が好きだったじゃない。」

かよ「歌は 好きだけんど 勉強は 嫌えだ。」

はな「修和女学校にはね 楽器が たくさんあって 毎日 誰かが音楽を奏でているの。 本当にいい学校だから かよも きっと気に入ると思う。」

かよ「何で ほんなこん…。」

はな「私ね 実は ずっと考えていたの。 かよも 給費生として うちの学校に 編入すればいいんじゃないかって。」

かよ「お姉やんは のんきでいいずら。」

はな「えっ?」

かよ「もう おらの事は ほっといてくれちゃ!」

はな「かよ!」

吉平「ああ~ 寒っ。 何じゃ? こんなとこで 話って。」

ふじ「あのボコたちの前じゃ でけん話だから。 あんたは すぐに また どっか行っちもうし…。」

吉平「ほういうこんか。 分かった。 子どもたちも 大きゅうなったし こうでもしんと 二人っきりになれんからな。 ほいけど 冷えるなあ…。」

ふじ「フフッ なにょう 寝ぼけたこん 言ってるでえ! いい年こいて。 あんた ほんなだから 吉太郎やら かよの気持ち 分かってやれねえだよ。 あんたは はなだけが自慢で ほかのボコたちは どうなってもいいだけ?」

吉平「ほんなことあ ねえ。 ただ はなは 5年ぶりに やっと帰ってこれて 今しか うちにおれんから…。」

ふじ「ほれは かよも同じずら!」

吉平「どういうこんでえ?」

作業部屋

周造「どうしたでえ? かよ。」

寝室

はな「『まるで この小さなマッチの炎が この子には 大きな たき火のように思いました』。 みんな どけえ行ったずら…。 遅いじゃんね。」

はな「ひやっ 冷てえなあ…。 おはようごいす。 おまんらも 早起きじゃんね。」

はな「あっ… 朝市。 おはよう。」

朝市「おはよう。 はな 元気ねえじゃんけ。」

はな「私 帰ってこねえ方が よかったのかな…。 長い間 うちに帰らなかったから もう 私の居場所なんて なくなっちまったみてえで…。 うまく言えないけど かよも兄やんも 何か 壁があって…。 ああ… 朝市もだけど…。」

朝市「はなは 何にも分かってねえ。 かよちゃんのこんも 何も分かってねえじゃんけ。」

はな「かよが どうしたの?」

朝市「黙ってろって 口止めされたけんど…。」

はな「教えて 朝市。」

朝市「かよちゃん…。」

はな「何?」

朝市「年明けたら すぐ 製糸工場の女工になるだ。」

はな「女工…。」

<5年ぶりに故郷に帰ってきた はなを待っていたのは 冷たい空っ風と 厳しい現実でした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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