ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第18回「初恋パルピテーション!」【第3週】

あらすじ

甲府の家族たちに励まされ東京へ戻ったはな(吉高由里子)のもとに、帝大生・北澤(加藤慶祐)からはがきが届いていた。しかし白鳥(近藤春菜)が「適切でない表現があったので」と文章を墨で塗りつぶしてしまい、内容を知ることもできない。次の奉仕活動の日、孤児院で親しくなったカナダ人少女・ミニーが帰国することを知ったはなは、北澤とともに少女にお別れを告げる。その帰り道、北澤とふたりになったはなは…。

18ネタバレ

修和女学校

廊下

白鳥「安東さん。」

はな「ごきげんよう。 ただいま帰りました。」

白鳥「ごきげんよう。 あなたが留守の間 これが届きました。」

はな「北澤さん…。 てっ! 真っ黒…。」

白鳥「適切でない表現がありましたので 私が墨で塗り潰しました。 あしからず。」

<『あしからずじゃねえ!』と 心の中で叫ぶ はなでした。>

寄宿舎

はな「『恭賀新年』… その続き 何て書いてあったんだろう?」

醍醐「あの方 人のロマンスの 邪魔ばかりするんですもの。」

畠山「ご自分が行き遅れた腹いせですわ。」

醍醐「私たちも ああならないように 早く結婚しないと!」

松平「実は 私… この度 結婚が決まりました!」

はな「てっ… 結婚!?」

醍醐「まさか 例のイノシシみたいな方と?」

松平「ええ そうです。 両親に強く説得されましたの。 『こんなに条件のいい縁談は 今しかない。 売れ残らないうちに 早く決めなさい』と。」

醍醐「そう…。 お式は いつですの?」

松平「先方のお仕事の都合で 来月早々に。」

醍醐「そんなに早く?」

松平「ええ。 お式の準備があるので 皆さんとも お別れです。」

はな「そうですか…。」

松平「ええ。」

醍醐「はなさん。 急に私も焦ってきたわ。」

はな「えっ?」

醍醐「いい縁談が降るようにあるのは 16か17まで。 その先は どんどん条件が悪くなって 二十歳過ぎたら もう ろくな縁談が 来なくなるんですって!」

はな「はあ…。」

<お嬢様たちの適齢期が 16か17歳というのは そんなに オーバーな話では ございません。 当時 修和女学校では 卒業を待たずに寿退学する生徒が なんと半数近くもいたのですから。>

ふじ『はな。 頑張って勉強してるけ。 こないだは クッキーとやらを ごちそうさまでした』。

安東家

居間

周造「うん…。」

かよ「うん!」

ふじ「うん!」

ふじ『こんな うめえもん 見たことも 食ったこんも ねえって うちじゅう みんな 大喜びだっただよ』。

ふじ『かよは はなのクッキーを 全部平らげて 元気に製糸工場に行きました』。

道中

かよ「ふんじゃあ 行ってくらあ。」

ふじ「かよ。 ちゃんと食うだよ。」

ふじ『きれいなクッキーの缶を 宝物にするちゅうて 持ってっただよ。 はなも体に気ぃ付けて頑張れし。 おかあより』。

朝市『追伸。 おらも はなに負けられん。 教会の図書室で 本を読んでます』。 『やっぱし 本は 面白いけんど はなに追いつくには 何年かかるずら。 朝市』。

修和女学校

中庭

はな「朝市…。」

茂木「はなさん。」

はな「あっ…。」

茂木「おうちは いかがでしたか?」

はな「おかげさまで 家族と 大層いい時間を 過ごす事ができました。」

茂木「それは よかったですね。」

はな『校長のおかげです ありがとうございました』

ブラックバーン『言っておきます 今度門限を破ったら ゴー・ホーム、永久に』

富山「つまり 退学という事ですね。」

茂木「あなたは 前科があるのですから 次の日曜学校では 本当に気を付けなさい。」

はな「はい。」

回想

北澤「花子さんのお父様は 貿易会社を 経営なさってるんですね。」

はな「ええ… そうです。」

回想終了

<もう一度 会いたい気持ちと 嘘をついてしまった後ろめたさが ごちゃ混ぜになって 眠れない はなでした。>

孤児院

「はい!」

「ああ~!」

「早~い。」

『雪隠で饅頭』。

北澤「花子さん。」

「餅は餅屋」。

「わざわざ すみません。 迎えの人が来たので ミニーは 今日 カナダに帰ります。 お二人に お別れを言いたいそうです。 ミニー。」

ミニー『はな、ツカサ 紙芝居、とても楽しかったわ』

北澤『僕もとても楽しかったよ 花子と親指姫ができて』

ミニー『ありがとう さようなら』

北澤『さようなら、ミニー』

はな「Good bye.『元気で』

ミニー『また会いたい』

「ミニー。」

道中

北澤「年賀状 届きましたか?」

はな「あ… すいません。 あれ 読めなかったんです。 厳しい先輩に 墨で塗り潰されてしまって…。」

北澤「そうだったんですか。」

はな「『恭賀新年』のあと 何て書いてあったんですか?」

北澤「参ったな。 じゃあ 今 言います。」

はな「はい。」

北澤「『会えない時間が あなたへの思いを 育ててくれます』と書きました。 金沢に帰っていた時の 率直な気持ちです。 それで はっきり 自分の心に 気が付いてしまいました。 花子さん。 僕は あなたが好きです。 花子さんさえ よければ 近いうちに ご両親にも お目にかかって 結婚を前提にした おつきあいを お願いしたいと思っています。」

はな「け… 結婚? ちょっと お待ちになって下さい。」

北澤「もちろん 返事は 今すぐにとは言いません。」

はな「はあ…。」

北澤「やっと言えた。」

はな「あの…。 1つ 聞いてもいいですか?」

北澤「はい。」

はな「北澤さんは こんな私の どこを 好きになって下さったんですか?」

北澤「子どもが好きで 笑顔が 実に すてきなところです。 あなたの笑顔を見ていると ご両親に こよなく愛されて 温かい家庭に 育った人だという事が 伝わってくるんです。」

はな「はい。 本当に そうです。 けど…。 けど 北澤さんが 思ってるいらっしゃるような 家族とは 全然違うんです。」

北澤「どういう事ですか?」

はな「ごめんなさい。 私 嘘をつきました。 私の父は 貿易会社の 社長なんかじゃありません。 行商人です。 大きな荷物を担いで あちこち駈けずり回って 生糸や日用品を売っているんです。 私のうちは 小作の農家で 葉書を書いても 母は 字が読めません。 私の幼なじみに読んでもらって 返事も代筆してもらうんです。」

はな「妹の かよは 製糸工場の女工になりました。 今頃 苦労して頑張っているはずです。 私 そんな家族が恥ずかしくて 北澤さんに嘘をつきました。 けど そんな家族に支えられて 東京で 勉強させてもらっているんです。 大好きな家族なんです。 だから…。 本当に ごめんなさい!」

北澤「花子さん!」

はな「本当は はなです。 両親から付けてもらった名前は 花子じゃありません。 でも 花子って呼んでもらえて うれしかった。 さようなら。」

<はな 16歳の冬でした。 では また来週。 ごきげんよう。 さようなら。>

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