あらすじ
修和女学校の一大行事・大文学会が近づき、はな(吉高由里子)の学級は「ロミオとジュリエット」を上演しようと盛り上がる。恋愛劇をやることに富山(ともさかりえ)は猛反対するが、生徒たちの熱意を聞いたブラックバーン校長(トーディ・クラーク)が上演を許可。はなは脚本の執筆を頼まれ、「ロミオとジュリエット」の原書を日本語に翻訳することになる。主役を誰が演じるか話し合っていると、意外な人物が名乗りを上げる…。
25回ネタバレ
修和女学校
蓮子の部屋
はな「何だか楽しくなってきました!」
蓮子「もう そのくらいにしておいたら?」
はな「え~? もっと飲みましょうよ 先輩。」
<葉山蓮子様との出会いは はなにとって まさに 春の嵐の訪れのようでした。>
面会室
吉平「バカ野郎!」
廊下
吉平「申し訳ありません! 申し訳ありません!」
校長室
蓮子「私を退学させて下さい。」
はな「蓮子さん…。」
廊下
蓮子「あなたのためなんかじゃ ありません。」
醍醐「彼女は 一度嫁いだけれど もめ事を起こして 離縁されたんですって。 あの方とは あまり関わらない方が よろしくってよ。」
はな『前略 おかあ。 私は 8つ年上の編入生と ひょんな事から 言葉を交わすようになりました』。
安東家
庭
朝市「『伯爵のご令嬢ですが どこか寂しそうな人です』。 はなは きっと この人と友達になりてえだな。」
ふじ「ほうだねえ。」
周造「ここにも いねえな。」
ふじ「おとう どうしたでえ。」
周造「キチ 知らんけ?」
ふじ「えっ?」
朝市「さあ?」
ふじ「おとうと田んぼ行ったとばっかし 思ってたけんど…。 どけえ行ったずらか?」
甲府の町
♬~(ラッパ)
<そのころ 甲府に 軍隊がやって来ました。>
武「甲府連隊 万歳!」
徳丸「万歳!」
<吉太郎の胸の内に 何かが沸き起こっていたのです。>
修和女学校
1909年(明治42年)・4月
<修和女学校では 年に一度の 大きなイベントが近づいておりました。>
教室
富山「今年も 大文学会が近づいてきました。」
畠山「いよいよですわね!」
醍醐「今年は 本科最後の大文学会ですもの。 頑張りましょう!」
一同「ええ!」
富山「出し物を考えておくように 全員参加です。」
一同「はい!」
「どなたを お招きしましょう?」
<大文学会というのは 今で言う 文化祭の事ですが なぜ ここまで 生徒たちが 熱くなるかと申しますと…。>
醍醐「去年は 『リア王』のコーデリアを演じた 桜子先輩が 舞台で見初められて 財閥の御曹司のところに 嫁がれたのよね。」
畠山「ご子息の花嫁候補を探しに わざわざ見に来るお義母様方も いらっしゃるそうよ。」
<…という訳なんでございます。>
畠山「ところで 去年のコーデリアの衣装は すてきでしたわね。」
醍醐「ええ。 衣装は 大事だわ。 演目と配役を早く決めて 舞台映えする衣装を作らなくては。」
はな「衣装か…。」
醍醐「うちは 両親や親戚が 総出で来るって言ってるの。 はなさんのご家族は?」
はな「あっ うちは 遠いから。」
醍醐「そう…。」
畠山「あの方は どうなさるのかしら?」
醍醐「『私には関係ございません』って お顔なさってるけど。」
醍醐「あの! 葉山様のご家族も 大文学会に おいでになりますの?」
蓮子「呼んでみようかしら。 さぞかし 面白い事になるでしょうね。」
醍醐「どういう意味かしら?」
はな「さあ…。」
図書室
竹沢「今年も『リア王』をやるのかしら?」
梅田「ほかのお芝居も やってみたいわ!」
「皆さん 談話室に集合して 相談しましょう!」
「いいですわね! 行きましょう。」
蓮子「あなたは ほかの生徒のように はしゃがないの?」
はな「蓮子さん…。」
蓮子「興味がないの?」
はな「私のうちは 貧しいから 舞台の衣装なんて作れないし 家族も呼びたくても 呼べないんです。」
蓮子「そう…。 そういう人もいるのね。」
回想
蓮子「うちの者たちは 私を やっかい払いするために ここの寄宿舎に入れたんです。」
回想終了
はな「あの… 蓮子さんは…。」
醍醐「はなさん! ここにいらしたの。 皆さん お集まりよ。 早く! お急ぎになって。」
はな「ええ。」
茂木「葉山さん。 お兄様が 面会にいらっしゃってますよ。」
蓮子「はい。」
談話室
醍醐「あの方には 近づかない方が いいって言ってるのに。」
はな「あちらから話しかけられたの。」
醍醐「私 はなさんの事が心配なの。 あの方と関わると また よくない事に巻き込まれそうで…。 はなさんも この間の事で懲りたでしょう?」
はな「ええ…。」
醍醐「それより 大文学会を成功させましょうよ。」
醍醐「はなさん 連れてきましたわよ。」
畠山「今 演目の相談をしていたの。 去年も おととしも 『リア王』だったでしょう? せっかくだから 新しいお芝居を やろうって事になって。」
醍醐「ねえ 『ロミオとジュリエット』は どうかしら?」
はな「えっ これを舞台で?」
醍醐「舞踏会の場面もあるし 華やかで ロマンチックだわ!」
畠山「すてきね。 賛成。」
「私も賛成ですわ!」
「賛成です。」
畠山「満場一致ですわね。 はなさん。 最後まで翻訳して 脚本を書いて下さらない?」
はな「えっ。」
面会室
(ノック)
蓮子「失礼します。」
葉山「何だ? 私に話というのは。 忙しいから 手短にしてくれ。」
蓮子「お兄様に お願いがあります。 ここから 短歌の先生の所に 通わせて下さい。」
葉山「短歌だと?」
蓮子「ここの生活は 退屈です。 生徒は みんな年下で 話が合いません。 歌を詠む事だけが 私の慰めです。 短歌の先生について もっと深く 日本文学を学びたいのです。 ここは 外出にも 父兄の許可がいるので…。」
葉山「駄目だ。 お前は ここから一歩も出るな。 知り合いに手紙を書くのも禁ずる。」
蓮子「そんな…。」
葉山「お前が ここにいる事は 親類縁者 誰にも知らせていない。 おとなしく 身を隠してろ。 少しは 身の程を わきまえたら どうだ? 父上が芸者に生ませたお前を やっとのことで 子爵の家に 嫁がせてやったというのに 離縁されて戻ってくるとは いい恥さらしだ。 これ以上 葉山の家の名を おとしめるな。」
蓮子「いくら お兄様たちが 私の存在を隠そうとしても 私は こうして 息をして 生きているんです! 私にも 意志というものがあるんです!」
教室
畠山「大文学会の進行役は 私が務める事になりました!」
(拍手)
富山「それで 舞台の演目は もう決まったんんですか?」
畠山「はい。 みんなで話し合ったのですが 今年は 『ロミオとジュリエット』をやりたいんです。」
富山「何ですって?」
畠山「台本は 安東はなさんに 翻訳と脚色をしてもらいます。」
はな「及ばずながら頑張ります。」
富山「いいえ。 『ロミオとジュリエット』なんて駄目です。 私は 反対です。」
はな「富山先生… どうしてですか?」
富山「大文学会の演目として ふさわしくないからです。 今年も『リア王』になさい。 このとおり 台本もありますから。」
醍醐「去年と同じなんて嫌です!」
畠山「もう 配役や衣装も みんなで相談してるんです。 富山先生 やらせて下さい!」
一同「お願いします! やらせて下さい!」
ブラックバーン『静かに』
富山『申し訳ありません』
茂木「どうしたんですか? 富山先生。」
富山「舞台の演目の事で 生徒たちが言う事を聞かなくて。」
はな『私たち、『ロミオとジュリエット』を やりたいんです』
ブラックバーン『なるほど 生徒の意志を尊重しましょう』
醍醐「何ですって?」
はな「皆さんの意志を 尊重して下さるそうです。」
(歓声)
一同「Thank yuu, Miss Blackburn!」
富山「では あなたたちだけで おやりなさい。 私は 一切 手を貸しませんので。」
茂木「富山先生…。」
<富山先生には 『ロミオとジュリエット』を 嫌う訳でもあるのでしょうか。>
はな「この物語は 互いに憎み合う 2つの家に生まれた ロミオとジュリエットが 深く愛し合いながらも その運命に引き裂かれれしまう という悲劇です。」
畠山「それでは 主役のロミオとジュリエットから 決めていきましょう。 我こそはと思う方は 手を挙げて下さい。 ロミオですか? ジュリエットですか?」
「ジュリエットです。」
「ジュリエットです。」
醍醐「私も ジュリエットです!」
「醍醐さんなら ジュリエットに ぴったりですわ。」
「私も ほかの役で結構です。」
畠山「では ジュリエットは 醍醐様でよろしいですか?」
(拍手)
醍醐「ありがとうございます! 精いっぱい務めますわ。」
畠山「ロミオ役は どなたか いらっしゃいませんか?」
醍醐「はなさん 一緒にやりましょうよ。 はなさんが ロミオなら お稽古が楽しいわ。」
はな「とんでもない! 私は 脚本で手いっぱいです。」
醍醐「そう…。」
畠山「ロミオは 男役ですから 背の高い方がよろしいですね。」
畠山「大倉様 引き受けて下さいませんか?」
大倉「だ… 駄目です。 今年の大文学会には 私のいいなずけが お見えになりますので。」
醍醐「まあ! だったら なおの事。」
大倉「お断りします。 男役で主役なんて 目立ち過ぎて 破談になったら困りますから…。」
畠山「困りましたね。 ほかに どなたか いらっしゃいませんか? 誰か勇気を出して 手を挙げて下さい。」
はな「蓮子さん…。」
醍醐「ご冗談でしょう?」
畠山「葉山様 本当に 主役のロミオを やって下さるんですか?」
蓮子「ええ。 やります。」
(どよめき)
<さて 蓮子様は 何を思って ロミオの役を買って出たのでしょう。 ごきげんよう。 さようなら。>