ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第26回「波乱の大文学会」【第5週】

あらすじ

はな(吉高由里子)は前半部分の翻訳を完成させ、いよいよ芝居の稽古が始まった。しかし、自らロミオ役に立候補した蓮子(仲間由紀恵)は一向に稽古へ現れず、ジュリエット役の醍醐(高梨臨)ら級友たちは反発を強める。無理やり稽古場につれてきても全くやる気を見せない蓮子に、しびれを切らした醍醐は役を降りると宣言。騒ぎを聞きつけたブラックバーン校長(トーディ・クラーク)は、やってくるなり意外な提案をする…。

26ネタバレ

修和女学校

教室

はな「蓮子さん…。」

畠山「葉山様 本当に 主役のロミオを やって下さるんですか?」

蓮子「ええ。 やります。」

(どよめき)

畠山「ほかに どなたか いらっしゃいませんか? いらっしゃらないようなので ロミオは 葉山様に決定します。」

(拍手)

蓮子「では ごきげんよう。」

<大文学会の主役に手を挙げた 蓮子様に 生徒たちは びっくり。 中でも 一番驚いたのは はなでした。>

醍醐「私 あの方がロミオなんて嫌。」

はな「醍醐さん…。」

醍醐「葉山様って 何を考えてるか分からなくて 何だか怖いんですもの…。」

<おやおや。 早くも ひと悶着ありそうですね。>

校長室

ブラックバーン『えっ、蓮子が?』

富山「本当に 葉山蓮子さんが ロミオ役を?」

茂木「はい。 生徒たちの話では 自分から手を挙げたそうです。 彼女も やっと前向きに なってくれたようですね。」

(通訳する富山)

富山「私は とても信じられません。 彼女が 本当に 心を 入れ替えたなら 話は別ですが そんなふうには見えませんし。」

教室

はな「第三幕までの脚本 出来ました!」

醍醐「待ってたのよ1 これで お稽古始められるわね!」

畠山「早速 印刷しましょう。 はなさんは 後半の脚本 急いで下さい。」

はな「はい。 お願いします。」

稽古場

畠山「第一幕 一場 キャピュレット家の広間。」

醍醐「『ああ どうすればいいの? パリス侯爵の愛を受け入れる事など 私には 到底できないわ』。 ロミオは?」

醍醐「ロミオがいなきゃ 始まらないじゃないの! 葉山様 稽古場にも 顔出さないなんて 本当に やる気あるのかしら?」

はな「続けてて。」

蓮子の部屋

はな「蓮子さん。 前半の脚本が出来たので 稽古場に来て下さい。 入りますよ。」

はな「優雅に歌なんて 詠んでいらっしゃる場合じゃ ないんですけど。」

蓮子「出来たわ。 何でしたっけ?」

はな「はあ? 蓮子さん ロミオの役 引き受けましたよね? 忘れちゃったんですか?」

蓮子「あっ 私の事は お構いなく。 どうぞ 皆さんで進めて下さい。」

はな「そんな! ロミオがいなければ お稽古になりません! 今すぐ 稽古場に来て下さい!」

甲府の川

<一方 甲府の若者たちは それぞれの将来を 模索していました。>

吉太郎「朝市は 本当に 百姓やめて 教師になるだけ。」

朝市「うん。」

吉太郎「おらも やっと やりてえこんが見つかっただ。」

朝市「へえ。」

吉太郎「兵隊になる。」

朝市「兵隊?」

吉太郎「こないだ 甲府の連隊がやって来たら。 道端で見てるうちに 体中がカ~ッて熱くなって 『これだ!』と思っただ。」

吉太郎「朝市には言うけんど おら 東京の女学校に行ってる はなに ずっと 引け目感じてただ。 かよも うちに 金送るために 工場行って 妹らに先越されたみてえで…。 おら 長男なのに このまんまで いいずらかって ずっと考えてただよ。 軍隊に入れば おかあたちに 楽さしてやれるじゃん。」

朝市「おらのおとうも兵隊だっただ。」

吉太郎「てっ…。」

朝市「おら 顔も知らんけど 赤ん坊ん時 日清戦争で死んだだよ。」

吉太郎「ほうか…。 お国のために死んだだけ…。」

修和女学校

稽古場

畠山「第三幕 四場 キャピュレット家のバルコニーと庭園。」

醍醐『おお いとしいロミオ様。 私たちは どうすればよいのでしょう?』。

はな「次 ロミオのセリフです。」

蓮子「どこ?」

はな「ここです。 何か おかしいですか?」

蓮子「『おお いとしいジュリエット。 私は あの月に誓う。 そなたへの永遠の愛を』。 こんな芝居じみたセリフ 恥ずかしくて言えませんわ。」

はな「これ お芝居ですから。」

蓮子「こんな陳腐なセリフに 感情を込めろという方が無理です。」

はな「陳腐…。」

醍醐「それは いくら何でも 翻訳してくれた はなさんに 失礼じゃないですか?

はな「私よりも シェークスピアに失礼です。」

蓮子「(あくび)失礼。 ゆうべ 寝不足だたったもので。」

醍醐「ちょっと… どういう おつもりですか? 自分から 主役をやりたいと おっしゃって そういう態度は ないんじゃないですか?」

はな「醍醐さん。」

畠山「少し休憩致しましょう。」

竹沢「醍醐さんが腹を立てるのも 無理ないわ。」

梅田「何でしょう あの態度。」

醍醐「私 あの方の相手役なんか できません!」

畠山「醍醐さん 落ち着いて。」

醍醐「葉山様がロミオをやるなら 私 降ろさせて頂くわ!」

蓮子「どうぞ。」

はな「蓮子さん!」

醍醐「ひどい…。」

はな「醍醐さん…。」

茂木「今度は どうしたんですか?」

畠山「すみません 役の事で もめてしまって…。」

ブラックバーン『報告しなさい』

醍醐「配役を変えたいんです。」

(通訳する はな)

醍醐「葉山様がロミオのままだと 私 ジュリエットをやりたくありません!」

(通訳する はな)

ブラックバーン『では、あなたはロミオをやりなさい』

醍醐「私が ロミオ?」

ブラックバーン『ロミオが嫌なら降りなさい』

はな「『嫌なら降りなさい』と おっしゃっています。」

醍醐「降りません。 葉山様のせいで みんなと お芝居できなくなる なんて やっぱり嫌です!」

(通訳する はな)

ブラックバーン『あなたは?』

はな「『蓮子さんは どうしますか?』」

蓮子「私も降りません。 必ず 舞台に立ちます。」

(通訳する はな)

茂木「困りましたね。 どうしましょう?」

ブラックバーン『では、蓮子がジュリエットをやりなさい』

はな「『では 蓮子さんが ジュリエットをやりなさい』と。」

(どよめき)

ブラックバーン『そして真面目に稽古しなさい』

はな「『そして 真面目に稽古をしなさい』。」

ブラックバーン『わかりましたね』

校庭

醍醐「どうして こんな事に なっちゃったのかしら。 あの人がジュリエットで 私がロミオなんて…。 本科最後の大文学会だから すてきなドレスを着て 舞台に立ちたかったのに…。 葉山様は みんなの神経を逆なでして 失敗させたいだけじゃ ないかしら…。」

はな「私も あの人が何を考えているか 分からない。 けど ブラックバーン校長のご判断は 間違ってないと思うの。」

醍醐「どうして?」

はな「醍醐さんは 背が高いから きっと ロミオ役 すてきよ。 私 醍醐さんのロミオ 見てみたい。」

醍醐「はなさん 本当?」

はな「うん! 絶対 似合うと思う。」

稽古場

醍醐『おお 愛しいジュリエット。 私は そなたが望むなら いつでもモンタギューの名を捨てる覚悟は できている! キャピュレットの家に縛られているのは そなたの方ではないのか?』。

はな「いいですね。 醍醐さんのロミオ。」

茂木「うん。 ジュリエットより ず~っと適役だわ。 あとは 葉山さんね…。」

『おい えらい事になった。キャピュレット家の連中だ』。」

はな「あれ? あの… これ 蓮子さんの…。」

畠山「台本を置いて また おヘやに戻ってしまったの。」

蓮子の部屋

はな「これ 忘れてました。」

蓮子「わざわざ どうも。」

はな「稽古場に来て下さい。」

蓮子「皆さん 一生懸命すぎて 疲れちゃうんですもの。」

はな「蓮子さん 無責任すぎます! どうしてですか? どうして 舞台の主役なんか 引き受けたんですか! ちゃんと 説明して下さい。 蓮子さん!」

蓮子「復讐したい人がいるの。 はなさん。 私の復讐に つきあって下さらない?」

<ドキドキしていました。 こういう危険な香りのする人に 女の子は 心ならずも 引かれてしまうものなんです。 ごきげんよう。 さようなら。>

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