ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第27回「波乱の大文学会」【第5週】

あらすじ

なぜ主役を引き受けたのかと問うはな(吉高由里子)に蓮子(仲間由紀恵)は「家の者に復しゅうするため」と答え、「私の復しゅうにつきあってくださらない?」と呼びかける。はなは取り合わず、とにかく一生懸命稽古して成功させよう、と説得するが蓮子はへそを曲げてしまう。蓮子がまったく稽古に来なくなり、ますます途方にくれるはなたち。一方甲府では、軍隊入りを強く望む吉太郎(賀来賢人)が、あるところへ向かっていた…。

27ネタバレ

修和女学校

蓮子の部屋

はな「どうしてですか? どうして 舞台の主役なんか 引き受けたんですか!」

蓮子「復讐したい人がいるの。 はなさん。 私の復讐に つきあって下さらない?」

回想

蓮子「うちの者たちは 私を やっかい払いするために ここの寄宿舎に入れたんです。 あの人たちの思いどおりになって たまるかと つまり 復讐してやろうと 思ったんです。」

回想終了

はな「復讐って もしかして 蓮子さんの おうちの方たちにですか?」

<はなは 彼女の秘密に 一歩踏み込んでしまったようです。>

蓮子「ええ。 私 家の者たちを憎んでいますの。」

回想

葉山「これ以上 葉山の家の名を おとしめるな。」

回想終了

蓮子「私を この学校に入れたのは 体のいい幽閉なんです。」

はな「幽閉?」

蓮子「『世間へ出て顔をさらすな。 知り合いとも連絡を取るな』。 そういう事よ。」

はな「なぜ そんな事を…。」

蓮子「出戻りの私は 葉山家の恥さらしだからよ。」

はな「そんな…。」

蓮子「私には あなたのお父様のように 思ってくれる家族は 一人もいないの。」

回想

吉平「申し訳ありません!」

回想終了

蓮子「それどころか 私の存在を 世間から消そうとしてるのよ。 だから 私が ここにいる事を おおっぴらにして あの人たちが一番大事にしてる 世間体を ぶち壊してやりたいの。」

はな「そのために舞台の主役を?」

蓮子「ええ。」

はな「だったら なおの事 舞台のお稽古 一生懸命やりましょうよ。 私は ここにいるっていう事を 世間の人たちに 大きな声で叫びたいんですよね? どうせ 舞台に立つなら 思いっきりやって 喝采浴びた方が いいじゃないですか。」

はな「みんな この舞台に懸けてるんです。 この大文学会が終わったら 学校をやめて お嫁に行く人もいます。 みんなで一つになって 最高の思い出を 作ろうとしているんです。」

蓮子「悪いけど お芝居が 成功しようと 失敗しようと そんな事 どうでもいいんです。」

はな「何で そんな ひねくれてんのかな…。」

蓮子「今 何て?」

はな「あっ えっ… すいません。」

蓮子「そりゃあ ひねくれてますよ! 私は あなたたちより 8つも年増なんですから。」

はな「年増?」

蓮子「あなたみたいに まっすぐ単純になんか なれっこないでしょう!」

はな「でも… 単純になった方が きっと楽しいですよ! とにかく 復讐の事は 脇に置いて 『ロミオとジュリエット』を 成功させましょう。」

蓮子「もう結構! 子どもじみたお説教は うんざりです!」

<ジュリエット訳の蓮子様は 完全に へそを曲げてしまい それ以降 稽古に来なくなってしまいました。 はなの説得は 逆効果だったようですねえ。>

稽古場

畠山「じゃあ 始めます。 第三幕 四場 キャピュレット家の庭園 後半から。」

醍醐『私は そなたのいとこ チッバルトを殺し キャピュレットの家の者たちから 追われる身。 この国のどこにも 逃げるとこなど ありはしない』。

はな「すごいわ 醍醐さん。 もう セリフ 全部覚えたの?」

畠山「葉山様は 相変わらず いらっしゃらないわね。」

はな「私のせいです…。」

醍醐「えっ?」

はな「私が ひどい事言ったから。」

茂木「はなさん 何を言ったの?」

はな「蓮子さんの事 ひねくれてるとか いろいろ…。 どうしよう。 あの… 本当に ごめんんさい。」

醍醐「はなさんが謝る事ないわ。 お稽古に来ない人が 悪いんですもの。 はなさんは 後半の脚本を急いで書き上げて。」

はな「はい。」

畠山「じゃあ もう一度 同じところから。」

一同「はい。」

<大文学会は 2週間後に迫っていました。 本当に間に合うのでしょうか?>

甲府の町

武「おい。 こら ちっと待てし。」

<そのころ 吉太郎は 一大決心をして ある所に向かっておりました。」

武「おい! 聞いてるだか?」

料亭

徳丸「連隊長殿 さあ。 さあ。」

県知事「いや~ 徳丸君は 甲府一の大地主で 生糸の商売も 手広くやっておるです。」

連隊長「そうですか。」

徳丸「これを ご縁に ひとつ よろしく ご指導 お願えします。」

連隊長「いえ こちらこそ。 これは…。」

徳丸「甲州の ブドウ酒でごぜえます。」

連隊長「はあ~。 東京の司令部で出されるものより はるかに うまい。」

徳丸「陸軍さんでも ブドウ酒を?」

連隊長「将兵の滋養強壮 それと何より 士気を高めるのに 役立ちますからな。」

徳丸「なるほど。」

「困るですちゃあ お引き取りになって下さい!」

吉太郎「失礼しやす!」

徳丸「吉太郎! 武! おめえら 何をしに来ただ!」

吉太郎「連隊長様 おらを 軍隊に入れておくんなって!」

徳丸「何を言うとるだ! 武 どういうこんだ!」

武「今日 おやじが連隊長様のために 一席設ける話をしたら こいつが 会わせろっちゅうて聞かんだよ。」

吉太郎「お願えでごいす! おらを 軍隊に入れておくんなって!」

徳丸「こら! 無礼もんめが!」

連隊長「お前は いくつになるのか。」

吉太郎「17でごいす。」

連隊長「家族は?」

吉太郎「両親と祖父 妹が3人おりやす。」

連隊長「ご両親は お前が志願する事に賛成か?」

吉太郎「ほれは…。」

徳丸「連隊長殿 誠に申し訳ございやせん。 この吉太郎は うちの小作の せがれでやして。 後で よく言って聞かせやすんで 今日の失礼は 何とぞ お許し下せえませ!」

連隊長「吉太郎君。 17歳にして お国へ ご奉公を願い出るとは 実に見上げた心掛けである。」

吉太郎「ありがとうごぜえやす!」

連隊長「だが 今は 長男として家を守り ご両親に尽くすのが 第一の務めだろうが。」

吉太郎「ふんでも…。」

連隊長「二十歳の徴兵検査を 待っても 決して遅くはない。 まずは 親孝行に励みなさい。 分かったかな?」

吉太郎「はい…。」

<一方 おとうの吉平は…。>

労民新聞

浅野「それで 各地の農村の 手応えは どうでしたか?」

吉平「社会主義の期待を ひしひしと感じています。 この男は 新潟のまんじゅう売りですが 先生の本を読んで いたく感動し 伝道行商の仲間にしてくれと。」

浅野「そうですか。」

山田「正直 本の中身は 難しくて よく分かんねえけど 吉平さんの後 ついて歩いてます。」

浅野「私たちの闘いは 始まったばかりです。 では 乾杯!」

<正反対の方向に進む父と息子。 親子なのに 皮肉なものですねえ。>

修和女学校

廊下

茂木「富山先生。 蓮子さんは 稽古に現れず はなさんの脚本も まだ完成してません。 このままでは 大文学会の公演も危ぶまれます。 富山先生も 稽古場にいらして 生徒たちを指導して下さい。 お願いします。」

富山「いえ 私は…。」

茂木「あの方の事を まだ 引きづってらっしゃるんですか?」

講堂

醍醐「はなさん。 ちょっと代役を頼んでもいい?」

はな「はい。」

醍醐『おお いとしいジュリエット。  夜が明ける。 私は 身を隠さねばならない。 ジュリエット しばしの別れだ』。

はな『ロミオ様。 どうしたら 私たちは 運命に打ち勝ち 永遠の愛を手にする事が できるのでしょう』。」

醍醐『少し待ってほしい。 まずは 今日の この幸福を 神父に報告するまで』。

<富山先生は 『ロミオとジュリエット』のお芝居に 何か つらい思い出が あるのでしょうか。>

寄宿舎

校庭

はな「出来た~!」

はな「あ…。 どうしたんですか? こんな朝早く。」

蓮子「何だか 目が覚めて。」

はな「この間は 出過ぎた事を言って すいませんでした。」

はな「待って下さい。 このままだと ジュリエットの役 降ろされますよ。 舞台に立てなくなっても いいんですか?」

蓮子「いいえ。」

はな「じゃあ これ 読んで下さい。」

はな「徹夜で書き上げた脚本です。 私なりに脚色も加えました。 これを読んで やるかどうか決めて下さい。」

<まるで 挑戦状のように 『ロミオとジュリエット』の脚本を突きつけた はなでした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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