あらすじ
はな(吉高由里子)が書きあがったばかりの脚本を真っ先に蓮子(仲間由紀恵)に渡したのを見て、醍醐(高梨臨)は嫉妬を抑えられない。一方、白鳥(近藤春菜)がジュリエットの代役を買って出る。その怪演ぶりに皆が内心困り果てていると、蓮子が現れ、脚本にいたく感動した、今日からまじめにけいこする、と宣言。喜びで演出にも力が入るはな。そのころ甲府ではふじ(室井滋)が血相を変えて吉太郎(賀来賢人)に…。
28回ネタバレ
修和女学校
校庭
はな「このままだと ジュリエットの役 降ろされますよ。 舞台に立てなくても いいんですか?」
蓮子「いいえ。」
はな「じゃあ これ 読んで下さい。」
はな「徹夜で書き上げた脚本です。 私なりに脚色も加えました。 これを読んで やるかどうか 決めて下さい。」
廊下
醍醐「はなさん。」
はな「あっ 醍醐さん おはよう。」
醍醐「はなさんは どっちを選ぶの?」
はな「は…?」
醍醐「徹夜で書き上げた原稿を あの方に読ませるなんて…。 私より葉山様の事が好きなの?」
はな「どっちかなんて そんなの 選べる訳ないじゃないですか。 『ロミオとジュリエット』を成功させるために 2人とも大切な人です。」
醍醐「そういう事じゃなくて!」
はな「えっ?」
醍醐「もういい! 私は はなさんに ジュリエットをやってほしいの。」
はな「それは無理! だって 私 緊張すると 声 裏返っちゃうし。」
醍醐「じゃあ 誰が ジュリエットをやるの? 葉山様は ちっとも 稽古にいらっしゃらないし。」
白鳥「分かりました。 私が一肌脱ぎましょう。」
はな 醍醐「白鳥様…。」
白鳥「そんなに困っているなら ジュリエット役は この白鳥が お引き受けしても よくってよ。」
<ますます 暗雲が立ち込める 『ロミオとジュリエット』。 無事に公演まで こぎ着ける事が できるのでしょうか?>
稽古場
白鳥『おお ロミオ様! どうして あなたは ロミオなんでしょう? ロミオ・モンタギュー! あなたの家と 私の家は…』。
醍醐「あの衣装 どうしたのかしら?」
はな「やる気満々ですよ。」
醍醐「どうするのよ?」
はな「どうするって…。」
醍醐「お願い! 畠山さん 断ってきて。」
畠山「えっ…。」
白鳥「『ロミオ様。 どうしたら 私たちは 運命に打ち勝ち 永遠の愛を手にする事が できるのでしょう?』。 醍醐さん あなた ロミオでしょう? 何 見てるんですか? 早く お稽古 始めましょう!」
醍醐「すいません…。」
畠山「では 第三幕 四場 キャピュレット家のバルコニーと庭園。」
醍醐『おお 愛するジュリエット…』。
白鳥「もっと 気持ち入れて!」
(ドアが開く音)
白鳥「何しに来たんですか? あなたは もう とっくに 降りたはずでしょう。」
蓮子「私 降りません。 絶対に。」
はな「蓮子さん…。」
蓮子「お稽古も 今日から ちゃんと参りますので よろしくお願い致します。」
醍醐「また そんな無責任な事 おっしゃって これ以上 私たちを振り回さないで下さい!」
蓮子「脚本 最後まで読みました。 率直に感動致しました。 シェークスピアが こんなに 面白かったなんて知らなかった。 あなた やっぱり 翻訳力だけは 大したものだわ。」
はな「蓮子さん…。」
茂木「やっと 本気になってくれましたね。」
ブラックバーン『それでは、期待していますよ』
安東家
庭
ふじ「吉太郎! 吉太郎!」
<とろこで ふじは こんなに慌てて どうしたのでしょう?>
居間
リン「ふじちゃん…。」
ふじ「吉太郎!」
吉太郎「おかあ どうしただ?」
ふじ「おまん 軍隊に入りたがってるって 本当け。」
周造「てっ!」
りん「今 地主さんとこで 聞いてきただよ。 事もあろうに 宴会に乗り込んで 軍隊長に直訴しただとう?」
もも「てっ! 兄やん 兵隊さんになるだけ。」
ふじ「もも やめろし!」
周造「キチ どういうこんだ。」
吉太郎「おじぃやんと おかあには 折を見て ちゃんと言おうと思ってただよ。 おら 兵隊になる。 ええ加減な気持ちじゃねえ。 いつか 軍隊に入って 立派に お国の役に立って みんなに楽さしてやりてえだ。」
リン「ほれと 同じ根うちの人も言ってだた…。 そう言って おらが止めるのも聞かんで 行っちまって… 戻ってこなんだ。 あんな思えすんのは おら一人で たくさんだ…。」
庭
リン「(泣き声)」
居間
周造「リンの亭主が戦死した時にゃあ 朝市は まだ 乳飲み子だったからな。」
吉太郎「朝市から聞いただ。 日清戦争で戦死しただって。 ほんでも おら お国のために死ねるじゃ本望だ! このまま ここで くすぶってちゃ 死んでると同じこんだ!」
修和女学校
講堂
蓮子『ロミオ・モンタギュー。 あなたの家と 私の家は 互いに憎しみ合う宿命。 その忌まわしいモンタギューの名前を あなたが捨てて下さるなら 私も 今すぐ キャピュレットの名を捨てますわ』。
醍醐『名前が何だというのであろう。 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!』。
蓮子『ええ。 バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ。 名前が 何だというのでしょう』。
はな「そうかな…。」
畠山「どうしたの? はなさん。」
はな「ここ どうしても気になるんです。 『バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ』と シェークスピアは 言ってますが もし バラが アザミとかキャベツなんて名前だったら あんな すてきに 感じられるのかしら? 私のおとうが 吉平ではなく ゴンベエっていう名前だったら おかあは 好きになってるかしら…。」
醍醐「つまり はなさんは 何が言いたいの?」
はな「やっぱり 名前は 大切ですよね。 あの… ここのセリフ 変えたいんですけど…。」
畠山「はなさん。 悪いけど そんな時間は ないわ。 このまま いきましょう。」
はな「分かりました。」
畠山「では 今のところから もう一度。」
醍醐『名前が 何だというのであろう。 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!』。
蓮子『ロミオ様 それは どうでしょうか。 もし バラが アザミやキャベツという名前だったら 同じように 香らないのではありませんか? やはり 名前は 大事なものです』。
醍醐「勝手に セリフ変えないで下さい!」
はな「そのセリフの方が ずっといいわ! 前より 意味が深まって聞こえます。」
畠山「そうね。 じゃあ それでいきましょう。」
はな「さっきは すてきな即興のセリフ ありがとうございました。」
蓮子「シェークスピアのセリフに けちをつけるなんて はなさんも 相当ひねくれてるわね。」
はな「そうですね…。」
蓮子「はなさんのお父様とお母様は 好き合って結ばれたの?」
はな「ええ まあ。 行商で甲府に来た父が ブドウ畑で倒れて 母に助けられたんです。 父は 母に 旅先での話を いろいろしてくれて 母は もっと話が聞きたいと思って 結婚したんです。」
蓮子「そう…。」
<はなは 思いました。 もしかすると 蓮子様は 望まない相手と結婚させられたのかもしれない。 まるで ジュリエットのように。>
校庭
はな「もし 私が ジュリエットのように 親が決めた 望まない相手との 結婚を迫られたら…。」
<はなは 子どもの頃のように 想像の翼を広げました。>
吉平「はな。 はなは あの男と一緒になるだ。」
ふじ「はな。 涙をのんで辛抱してくりょう。 これで みんな 腹いっぺえ食えるだよ。 こりゃあ おまんの運命じゃん。」
吉平「あっ 婿殿が おいでになっただ。 婿殿!」
武「はな。 おらの嫁になってくりょう。」
はな「武…。」
武「はなたれ! おらの嫁にしてやるじゃん!」
はな「嫌~!」
ブラックバーン『大丈夫ですか?』
綾小路「大きな声を出して…。」
茂木「脚本の事で 根を詰めすぎたのね。 少し 頭を休めた方がいいわ。」
蓮子の部屋
蓮子『お兄上様。 来る5月16日 午後2時より 修和女学校 講堂にて 大文学会開催の運びと相成り候。 兄上様には 必ず 必ず おいで下さるべく候。 おいで候わば 理由お分かりと存じ候。 かしこ。 蓮子』。
<いやはや まあ まるで 果たし状のような招待状ですこと。 ごきげんよう。 さようなら。>