ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第2回「花子と呼んでくりょう!」【第1週】

あらすじ

小学校へ数日間通っただけで字を覚えたはな(山田望叶)は、夢中で本を読みふけるように。娘の才能を感じた父・吉平(伊原剛志)は、はなを東京のミッション系女学校へ入学させようとするが、村人たちに「西洋かぶれでおかしくなった」と言われる。母・ふじ(室井滋)も「うちのどこに、そんなお金があるのか」と反対する。そんな折、地主の徳丸(カンニング竹山)が小作料を上げると発表。はなの家族にも動揺が走る中、はなは…。

2回ネタバレ

修和女学校

正門

吉平「ここけえ…。」

<はなの おとうは とんでもない場所で とんでもない事を 考えていたのでした。>

吉平「あの! あの ちょっくら お尋ねします。 この学校へ入るには どうしたら ええでしょうか? うちに 賢い娘がおるんです 女の子だけんど 飛びっ切り ええ教育を 受けさせてえんです。 お願えします!」

『ここは男子禁制です 早く出て行きなさい』

吉平「ありがとうごいす。 お願えします!」

安東家

居間

はな「『ひ… め… さ… ま… は お… や… ゆ… び… ひ… め…』。

ふじ「はなも座れし。」

吉太郎「はなは 飯より本の方がいいずらよ。」

はな「あ~ 兄やん!」

ふじ「吉太郎!」

周造「頂きます。」

一同「頂きます。」

吉平「帰ったぞ!」

はな「あっ おとう! お帰り。」

かよ「おとう お帰り!」

吉平「急いで食え。 食ったら みんなで出かけるだぞ。」

ふじ「帰るなり何ずら。 どけえ行くでえ?」

吉平「町の教会じゃ。」

ふじ「教会?」

吉平「一家そろって 洗礼を受けるんじゃ!」

吉太郎「また おとうの気まぐれが 始まっただ。」

周造「そうさな。」

ふじ「あんた また今度聞くさあ。」

吉平「…ったく うちのもんは みんな そろって。」

はな「おとう 洗礼って何ずら?」

教会

玄関

森「神の祝福をお祈りしています。」

一同「ありがとうございました。」

森「気を付けて。」

吉平「牧師様!」

森「やあ 安東さん。 どうしました?」

吉平「この子に洗礼をお願いします。 大急ぎで洗礼を。」

森「大急ぎで? また どうして?」

吉平「東京の女学校に この子を入れてえんじゃ。 洗礼を。」

リン「おまんとこの婿さん 西洋かぶれで おかしくなっちまっただけ。 ここんとこ 町の教会に 入り浸っちょるだってね。」

ふじ「あら~ よ~く知っちょりますねえ。」

リン「あら~ 私を誰だと思ってるでえ。」

吉太郎「村一番の おしゃべりばばあ。」

リン「あっ?」

ふじ「吉太郎! リンさん すまんねえ。」

リン「年がら年中う 仏頂面こいて 何もしゃべらん じじいより ましじゃんねえ。 ほれと はなの事だけんど。」

ふじ「はなが 何か?」

リン「あのボコは 父親に似たずら。 困ったもんじゃん。 女のボコのくせに 本や勉強が好きなんて ろくすっぽなもんにゃ ならん! 本なんか読まんように 母親のおまんが こぴっと しつけんと えれえこんになるら。」

教会

書庫

はな「てっ!」

客間

吉平「あそこは キリスト教の学校じゃから はなに早く洗礼を受けさせんと。 どういでも はなを あんぼ 修和女学校に行かせたいんです。 お願えします!」

森「(ため息) お父さんのお気持ちは 分かりましたが あんなに小さい お嬢さんを 女学校の寄宿舎に 入れるとなれば ご家族全員の 理解と応援が必要です。 よく話し合って下さい。」

吉平「はあ…。」

書庫

はな「てっ。 本じゃん。 てっ! 全部 本じゃんけ! おとう! 大変じゃん! こんなに うんとこさ 本がある!」

客間

吉平「あっ…。 ちょっと。 はな。 はな~。」

書庫

はな「おとう! この世にゃあ こんなに うんと本があっただけ。」

吉平「へえ~! ここは 大事な本ばっかしだから 入ってきちゃ…。 はな!」

はな「何でえ?」

吉平「東京の女学校へ行ったら 大好きな本が なんぼうでも読めるだぞ。」

はな「本当? どこにあるでえ?」

吉平「ふんだから 東京じゃ。 毎日 思っきし 本が読めるんじゃ。 ほういう学校に行きてえか?」

はな「うん!」

吉平「よ~し! おとうに任しとけ!」

はな「うん!」

安東家

居間

ふじ「東京の女学校? 何を夢みてえなこん 言うちょるですか。」

吉平「はなの夢を かなえてやるんじゃ。」

ふじ「うちの どこに ほんなお金があるですか?」

吉平「金は 一銭もかからん。 キリスト教の学校では 金持ちも貧乏人も平等じゃ。 貧乏人には 特別に 給費生っちゅうもんがあるんじゃ。」

ふじ「西洋かぶれで 頭のおかしくなった婿さん。」

吉平「えっ?」

ふじ「あんた 村の人らに ほう言われてるだよ。」

吉平「何と言われようと 俺は あの子に こぴっとした教育を 受けさせてえんじゃ。 俺は ちっさい頃に奉公に出されて 寺子屋にも学校にも行けなんだ。 奉公先で こき使われながら 苦労して 苦労して 読み書きと そろばんを 覚えたんじゃ。」

ふじ「その話は へえ何べんも。」

吉平「ふんだから 俺は 働きづめの あの子が ふびんなんじゃ。 親がしてやれる 精いっぱいのこんを してやりてえんじゃ。」

ふじ「働きづめなのは 吉太郎だって…。」

吉平「ふじ! 一生の頼みだ。 あの子を 東京の女学校に 行かせてやってくれちゃ! 頼む! はなのために!」

小学校

教室

<あっという間に うわさは 村中に広まり…。>

朝市「はな。 東京の学校へ行くって本当け?」

サト「はなちゃん。 朝市君が聞いてるじゃん。」

はな「ひきょうもんとは 一生 口利かん。」

朝市「こっちこそ。」

武「おい はなたれ。 おまんのような小作が 東京の学校なん 行ける訳ねえら。」

一同「行ける訳ねえら!」

武「こぼすな。 行儀悪いら。」

<お行儀が悪い訳ではありません。 麦やヒエやアワのお弁当は 箸でつかめません。 どうしても ポロポロこぼれてしまうのです。>

一同「うわ~!」

「てっ! 武様の弁当は 今日も 白い米のおまんまじゃん!」

<全部 白いお米のお弁当を 持たせてもらえるのは 飛び切り裕福なうちだけでした。>

「食いてえ~!」

「食いてえなあ!」

徳丸商店

ふじ「地主様から話があるだと。 何ずらか?」

リン「ろくな話じゃねえら!」

徳丸「小作の衆 聞いてくりょう。」

武「さすがずら。 おらのお父様は。」

徳丸「生糸相場が落ちて うちも うんと苦しい。 こうなったら 小作料を上げるほか ねえだ。」

(どよめき)

徳丸「今年は 1反当たり米4俵とする。」

ふじ「てっ!」

周造「4俵!」

リン「去年も小作料上がって また上げられちゃ 食っちゃいけんじゃん!」

徳丸「いいな!」

安東家

居間

ふじ「どうするでえ。」

周造「本当に食えんくなるな。」

ふじ「隣のリンさんが 吉太郎を 奉公に出せっちゅうだけんど あの子がいないと 田んぼも畑も やっていけんじゃんね。」

周造「そうさな。 婿殿が行商なんか やめて 地道に 田んぼ 手伝ってくれりゃあ どうにか 食うだけは 食っていけるけんど。 せめて この わら仕事で稼がんと。」

ふじ「本当にすまんこんです おとう。」

吉平「帰ったぞ~!」

ふじ「あんた! お酒飲んできただけ。」

吉平「おう! 勝沼 売り行ったら 出来損ないのブドウ酒 飲まされたんじゃ。 ああ まずかった!」

周造「わしゃ もう寝る。」

ふじ「本当にすまんこんで おとう。 おやすみなって。 あんた こぴっと聞いてくれちゃ。」

吉平「何じゃ? ふじ。 おっかねえ顔して。」

ふじ「また小作料が上がって 今年は 4俵 納めにゃならんですよ。」

吉平「てっ! また値上げけ! あの欲張り地主め!」

ふじ「大きい声 出さんで! あんたも ちっとは 考えてくれちゃ うちには たった2俵しか残らんだよ。 このまんまじゃ この冬すら 一家7人 越せんじゃん。」

翌朝

はな「おとう おはようごいす。」

吉平「おはよう。 ほうじゃ はな 今日は うちの仕事も学校も休め。」

はな「何ででえ?」

吉平「教会の牧師様が 特別に あそこの本を読んでいいって 言って下すっただ。 東京の女学校に行くまでに いろんな本を読んどかんとな。 どうしただ? はな。」

はな「おとう。 おらは 東京の学校なんか行かん。」

吉平「何でじゃ? 思っきし 本が読みてえって 目ぇ キラキラさせて 言っとったじゃろう?」

はな「東京の学校なんか ちっとも行きたくねえ。 本も もういいだよ。 ちっとも読みたくなくなったさ。 教会は おとう一人で行ってくれちゃ。」

吉平「はな…。」

はな「ほれから 今日から弁当は要らん。」

ふじ「えっ?」

はな「平気平気。」

ふじ「はな!」

吉平「何じゃ あいつ…。」

小学校

教室

(鐘の音と歓声)

「今日も武様の弁当は 白い米じゃ。」

「いいな~!」

「食いてえ!」

校庭

はな「もも 見ろし。 白い米のおまんまが あんなに いっぺえ! こうするだよ。」

はな「ああ うめえなあ。」

<はなは 得意の空想の翼を広げて 空腹を忘れようとしていました。 本が思い切り読めるという 女学校の事も 忘れてしまおうと 思っておりました。>

はな「うまいだろ。」

<ごきげんよう。 さようなら。>

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