ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第34回「腹心の友」【第6週】

あらすじ

蓮子(仲間由紀恵)が見合いした石炭王・伝助(吉田鋼太郎)は親子ほども年の離れた人物で、傍若無人に振る舞って蓮子を戸惑わせる。そんなことはつゆ知らず、はな(吉高由里子)は蓮子の帰りを待ちつづけるのだった。一方、社会運動への厳しい取り締まりを目の当たりした吉平(伊原剛志)はしばらく身を潜めることにし、久しぶりにはなの元を訪れる。蓮子は悩みつつ女学校へ戻って来るが、はなを見かけると意外なことを提案する。

34ネタバレ

向学館

編集部

はな「ありがとうございます!」

修和女学校

蓮子の部屋

<初めてのお給料で 蓮子に きんつばを買ってきた はな。>

見合い

<ところが そのころ 蓮子は お見合いをさせられていたのです。>

久保山「こちら 嘉納さんだ。」

<お見合いの相手は 九州の石炭王 嘉納伝助です。 日清戦争 日露戦争で 石炭の需要が急速に伸びた 時代の波に乗り 裸一貫 一代で巨万の富を築いた 事業家です。>

園子「蓮子さんは お勉強が 大層 お好きなんですのよ。」

葉山「もう一度 しっかり 学び直したいと言うので 今は 女学校の寄宿舎に 入れております。」

久保山「そうですか。」

園子「蓮子さん 召し上がったら?」

久保山「おい。 飲んでばかりいないで 何か しゃべったらどうだ? いつもは もっと にぎやかな男なんですがね。 ハハハハハ!」

園子「アハハ そうなんですか。」

葉山「妹も いい年をして 緊張しているようで。」

園子「実に ご立派な方でしたわね。 裸一貫で成功なさった方は やはり どこか違いますわね。」

葉山「蓮子。 今日は うちの方に泊まりなさい。」

蓮子「いいえ。 寄宿舎に戻ります。」

葉山「もう外泊届は出しておいたから。」

久保山「とうとう ひと言も しゃべらなかったな。 気に入らなかったか?

嘉納「筑豊弁で しゃべったら バカにされるやないな。 この世んもんとは 思えんばい。 おしろいで きれいに飾り立てちょる 中州辺りのおなごとは じぇんじぇん違うちょる。 よか匂いがする花んごとあった。 せやき どうせ 断ってくるに決まっちょる。 さっさと福岡へ帰るばい!」

修和女学校

廊下

はな「(ため息)」

茂木「蓮子さんは 今日 お兄様の所に泊まるようですよ。」

はな「えっ?」

労民新聞

<吉平は 久しぶりに 東京へ戻ってきました。>

(騒ぐ声)

山田「何だべ あれ?」

「下がれ 下がれ! これ以上 前には 出てはならんぞ! おい 貴様! 下がれ!」

「おい 前へ出るなよ。」

「もたもたするな! さっさと歩かんか!」

山田「浅野先生…。」

<このころ 社会主義は 危険思想と見なされ 場合によっては 活動家が警察に捕まり 取り調べを受ける事もありました。>

吉平「ほんなの いいから!」

修和女学校

談話室

畠山「はなさんは 本科が終わったら どうするの?」

はな「まだ 迷っていて…。 畠山さんは?」

畠山「高等科へ進む事にしたの。 もっと シェークスピアの戯曲を 勉強してみたくなって。」

はな「そう!」

大倉「私は いいなずけと結婚致します。」

はな「決まっていないのは 私だけか…。」

スコット『はな』

はな『はい』

スコット『あなたに電報です』

はな『ありがとうございます』

はな「『今日 会いたしい』。 おとう!」

ガス灯の下

吉平「グッド イブニング はな。」

はな「おとう! どうしたでえ?」

吉平「し~っ。」

はな「あ… グッド イブニング おとう。」

吉平「久しぶりに はなの顔 見たくなっちまった。 何か変わった事は なかったけ。」

はな「おとうに しゃべりてえ事 いっぱいあるだよ。 私 出版社で働いて 初めて お給料頂いた!」

吉平「へえ~!」

はな「最初は 小間使いだったけんど 翻訳もさしてもらった。」

吉平「英語の翻訳け。 ほりゃあ すげえじゃん!」

はな「ほれから 腹心の友ができた。」

吉平「腹心の友?」

はな「心から分かり合える親友の事。」

吉平「へえ! ほりゃあ どんな友でえ。」

はな「私より 8つ年上で 葉山蓮子さんっていうの。」

吉平「まさか… いつだか はなに ブドウ酒を飲ませた 生徒じゃねえずらな。」

はな「そう! その蓮子さん。」

吉平「はな。 ほんな不良と つきあっちゃいけんら!」

はな「おとう。 私も 最初は ほう思った。 ふんだけんど 人は 心を開いて 話してみんと分からんだよ。」

吉平「はな 大人になったじゃんけ。 おとうの知らんうちに はなは うんとこさ成長しとる。 歯ぁ食いしばって 頑張ってきたからずら。」

はな「おとう…。」

吉平「おとう しばらく会いに来れんけんど。」

はな「どうして? また来てくりょう。」

吉平「今度ぁ ちょこっと長え旅になるだ。 はな こぴっと頑張るだよ。 さあ もう遅え。 行けし。 ふんじゃあな。 達者でな…。」

葉山邸

葉山「こんな いい縁談は 金輪際ないぞ!」

園子「多くの慈善事業を なさってらして 新しく出来る女学校の経営にも 関わる ご予定だとか。」

蓮子「女学校?」

葉山「何しろ 巨万の富を築いた名士だからな。」

園子「蓮子さん。 お返事は 早い方がいいと思うんですのよ。」

葉山「ちょっと 2人にしてくれ。」

葉山「蓮子 どうだろう?」

蓮子「お兄様は 本当に 私が あの方と夫婦になれると お思いになるんですか?」

葉山「頼む。 先方には お前を必ず説得する という約束で もう 結納金も 受け取ってしまった。」

修和女学校

廊下

はな「蓮様 お帰りなさい!」

蓮子「ただいま はなちゃん。」

蓮子の部屋

はな「固くなってしまったかしら?」

蓮子「ううん。 おいしい。」

はな「お兄様の所へ行ったって聞いて 心配したわ。 また何か ひどい事でも 言われたんじゃ…。」

蓮子「大丈夫よ。」

はな「よかった。」

蓮子「ねえ。 私 甲府の はなちゃんのおうちに 行ってみたい。」

はな「えっ…。」

蓮子「ご家族にもお会いしたいの。 お願い。 ねっ?」

はな「あ… でも うち ぼろ家だから びっくりすると思うわ。」

蓮子「構わないわ。」

はな「じゃあ お正月に。」

蓮子「ううん すぐ。 今度の週末は?」

はな「えっ!?」

安東家

居間

「安東ふじさんに電報ずら。」

ふじ「電報? フフフ ご苦労さんでごいす。」

リン「どっからでえ?」

ふじ「はなから。 フフフフ! 『ド エ ウ ト モ ト カ ヘ ル』。 ん? 『土曜 友と帰る』。」

もも「お姉やん 帰ってくるだけ!」

ふじ「ほうだとう。」

リン「友と?」

周造「友って誰でえ。」

ふじ「さあ?」

リン「まさか 男け?」

周造「まさか。」

リン「分からんじゃんけ! はなちゃんだって お年頃ずら。」

周造「そうさな…。」

ふじ「まさか。 きっと 女学校の友達ずら。 あ… あそこは お嬢様しか いねえじゃん。」

吉太郎「お嬢様が ここに泊まるだけ?」

周造「お嬢様に なにょう召し上がって頂くだ?」

ふじ「あ~!」

一同「大変だ!」

汽車

蓮子「好き合って結ばれた お父様とお母様にも お会いできるのね。」

はな「あ… 父は また旅立ってしまったんです。 おかあと おじぃやんと 兄やんと妹が待ってます。」

蓮子「そう。 にぎやかで楽しそうね。」

<こうして 2人は 甲府に向かいました。 蓮子は 胸の内に 大きな秘密を抱えたまま。>

はな「大変! 蓮様 トンネルですわ。」

蓮子「はなちゃん どうしましょう? 閉まらないわ。」

はな「大変! 大変! すすだらけになってしまいますわ。」

蓮子「えっ?」

はな「あれ?」

(汽笛)

はな「これ…。」

はな「アハハハ!」

(2人の笑い声)

<ごきげんよう。 さようなら。>

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