ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第40回「さらば修和女学校」【第7週】

あらすじ

製糸工場で働いているはずのかよ(黒木華)が変わり果てた姿ではな(吉高由里子)の前に現れた。醍醐(高梨臨)の部屋にかくまわれたかよは、工場での過酷な生活と脱走の経緯を語り、このまま東京で暮らしたいと言う。はなは、かよのためにも東京で仕事を探そうと決心する。一方、かよの失踪を聞いて騒然としていた安東家では、茂木(浅田美代子)から無事との電報が届きひと安心するが、誰が東京へ迎えに行くかという話になり…。

40ネタバレ

修和女学校

正門

醍醐「しっかりなさって!」

はな「かよ! どうしたの?」

かよ「会いたかった… お姉やん!」

安東家

居間

周造「かよが!?」

ふじ「かよ いつ 工場から いなくなったですか!?」

「1週間前だ。 前金の分も まだ働いてねえだに。 見つからなんでも 金は利子つけて返してもろうぞ!」

(戸が閉まる音)

もも「お姉やん どけえ行ったずら。」

ふじ「かよ…。 かよ! かよ!」

吉太郎「おかあ 落ち着けし。 おかあ!」

修和女学校

醍醐の部屋

かよ「ごちそうさまでした。 こんな うめえもん食えるなんて… 生きててよかった。」

はな「かよ… 痩せたね。 顔色もよくねえ。」

かよ「毎日 朝の5時から夜の8時まで 機械の前に立ちっ放しで…。 死ぬほど しんどかったけんど おらが辛抱できたのは サッちゃんがいたからじゃん。」

はな「サッちゃん?」

かよ「一日中 機械の前にいると 立ったまま 眠りそうになるだよ。 ふんな時 サッちゃんと歌うたって 眠気を吹き飛ばしただよ。」

♬~(歌声)

かよ「ふんだけんど… サッちゃん 病気になっちまって 働けんくなって 田舎に帰されただよ。」

回想

(せきこみ)

かよ「サッちゃん。 これ せめてもの餞別だ。 持ってけし!」

サッちゃん「かよちゃん…。」

回想終了

かよ「サッちゃん おらの手ぇ握って言っただよ。 『おらみたいになる前に こっから逃げろ』って。 ほれから 一緒に歌うたってくれる サッちゃんもいなくなって 一日中 ただ黙って 機械の前に立ってると おら もう 自分が 生きてんだか死んでんだか よく分からんくなって…。 プツッと 辛抱の糸が切れちまっただよ…。」

はな「かよ…。」

かよ「おら 死んでも工場には戻らねえ。 ふんだけんど 女工は 5年の約束だから 借金が まだ残ってる。 うちに帰ったら 工場に連れ戻されるだよ。 おら 東京で仕事見っけて 必死に借金返すつもりだ。 ふんだから うちには知らせんで…。」

はな「かよ…。 今日は ゆっくり 体 休めて。 先の事は また ゆっくり考えよう。 醍醐さんが 今夜は ここに泊まっていいって。」

かよ「本当け。 ほの ふかふかの布団で 寝ていいだけ。」

はな「いいだよ。」

翌朝

はな「かよ。 お姉やん 決めた。 もう二度と かよを工場に行かしたりはしねえ。 お姉やんも東京で仕事探すから 一緒に頑張ろう。」

かよ「お姉やん…。」

(ノックとドアが開く音)

かよ「てっ! これ 何でえ?」

はな「西洋のパンだよ。」

かよ「パン? 頂きます。 うめえなあ!」

(ノック)

茂木「醍醐さん。 入りますよ。」

2人「ごきげんよう。」

茂木「この お履き物 醍醐さんのじゃありませんね。」

安東家

居間

もも「『かよ無事。 安心せられたし。 修和女学校 茂木』。」

ふじ「とにかく 無事でよかったよ~!」

もも「ふんだけんど 何で お姉やんの学校にいるでえ。」

周造「そうさな。」

吉太郎「おらが迎えに行ってくる。」

周造「おまんがか?」

ふじ「おらに行かしてくりょう。 ここは 母親として こぴっとしねえとな。」

周造「ふじ おまん 汽車にも乗った事ねえじゃんけ。」

徳丸商店

徳丸「ほれ。 往復の汽車賃。 ほれ!」

ふじ「ありがとうごぜえやす! 必ずお返しします!」

徳丸「…で 製糸工場の前金も 返さんきゃならんずら。」

ふじ「へっ?」

徳丸「わしが立て替えてやるじゃん。」

ふじ「てっ… ほんなあ…。」

徳丸「子を思う気持ちは わしにも よく分かる。」

ふじ「本当に 恩に着ます。」

徳丸「ふんだけんど おまんの亭主は 一体 どうなってるだ。 行商に行ったっきり もう3年も 帰っちゃねえちゅうじゃん。」

ふじ「いいえ。 2年と10か月です!」

徳丸「ふじちゃんも苦労するじゃん。 ほんな薄情な亭主とは 別れた方がいいら。 何なら わしが面倒見てやっても…。 …いねえじゃん。」

嘉納家

<福岡の石炭王に嫁いだ蓮子は 夫や娘たちを教育し直そうと 孤軍奮闘しておりました。>

嘉納「あっ ああ…。 (すする音)」

蓮子「さあ どうぞ。 冬子さん。」

冬子「うちは 牛乳は 好かんと。」

嘉納「頑張って飲め。 牛乳を毎日飲みよったら 西洋人のごと 色が白うなるそうじゃ。」

蓮子「それは違います。 体は 丈夫になりますが 色が白くなるなんて どの本にも書いてありません。」

嘉納「俺は 本は読みよらんきね。」

蓮子「間違った事を子どもに教えるのは よくありません。」

冬子「ごちそうしゃん。 おとっちゃん 行ってきます。」

嘉納「ああ 行ってこい。」

蓮子「おとっちゃんではなく お父様と呼びましょう。 冬子さんは もう大きいんですから。」

嘉納「うわっ!」

タミ「ほんなこつ 旦那様が お気の毒じゃ! あげな気取った人とおったら 息が詰まるし おならもできん!」

(笑い声)

「本当やが。」

タミ「お姫様は 何でん 自分の思いどおりにせにゃあ 気が済まんとやき。」

「そうですたい。」

タミ「それ 拭いちゃって。」

「はい。」

向学館

<はなは かよと東京で暮らす事を考え 本腰を入れて 就職活動を始めました。>

梶原「そう。 もう卒業か。 でも 女の子にお薦めできないね。 何しろ 出版社ってのは 忙しいからね。」

はな「構いません。 私 体力には 自信がありますし あっ 小間使いでも何でもします。」

梶原「そういえば 君は 翻訳もできる 優秀な小間使いだったね。 よし 分かった。 じゃあ 上に掛け合ってみるよ。」

はな「よろしくお願いします!」

修和女学校

廊下

<一方 初めて東京にやって来た ふじは…。>

生徒たち「ごきげんよう。」

談話室

ふじ「かよ… 痩せたじゃん。 色も白くなっちまって…。」

かよ「お姉やんにも同じ事言われた。 おかあ… おら もう工場には戻らねえ。 あんなとこ 死んでも戻らんから。」

ふじ「よっぽど つれえ思いしただなあ…。 ほれじゃあ うちに帰ってこうし。 おかあや おじぃやんたちと 百姓やれし。」

かよ「帰らねえ。」

ふじ「かよ…。」」

かよ「おら もう貧乏は 嫌だ。 東京で仕事見っける。」

ふじ「東京で?」

かよ「東京なら なんぼでも働き口があるし お姉やんもいるし。」

ふじ「なにょう言うだ。 はなは もうすぐ卒業するだから 甲府に帰ってくるだよ。」

かよ「えっ?」

(ドアが開く音)

はな「おかあ!」

ふじ「はな!」

はな「1人で来ただけ?」

ふじ「ほうだよ! かよが心配で 汽車に飛び乗っただ!」

はな「よく1人で来られたじゃなんね! おかあ…。 遅くなって ごめんね。」

かよ「どけえ行ってたでえ。」

はな「出版社に雇ってもらえるか お願えしに行ってきただ。」

ふじ「出版社? 何の事でえ?」

はな「おかあ。 おら 卒業したら 東京で働きてえ。 出版社に働くこんになったら 甲府には帰れねえけんど おかあ ほいでもいい?」

ふじ「ああ… いいに決まってるじゃんけ。 うん。 はなの好きにしろし!」

はな「ありがとう!」

<はな。 おかあの本当の気持ちを 分かってやれし…。 ごきげんよう。 さようなら。>

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