ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第43回「想像のツバサ?」【第8週】

あらすじ

甲府に戻り、尋常小学校の代用教員となったはな(吉高由里子)は、ふじ(室井滋)や周造(石橋蓮司)に見送られ、緊張しながら朝市(窪田正孝)とともに初出勤する。かつて担任だった校長の本多(マキタスポーツ)がはなを教師たちに紹介するが、英語を使うはなに緑川(相島一之)は、西洋かぶれの女に教師が務まるのかと嫌みを言う。6年生の担任になったはなは、教室で「ごきげんよう」と挨拶し、子どもたちから笑われてしまう。

43ネタバレ

東京

花子『「私 もう決めたのよ マリラ。 ここに残って先生になる。 だから 私の事は 心配しないでね」。 「でも あんたには 夢があったじゃないか」。 「今までどおり 夢はあるわ。 ただ 夢のあり方が 変わったのよ」』。

花子『「いい先生になろうと 思っているの。 ここで 精いっぱい やってみるつもりよ。 そうすれば きっと 最高のものが返ってくるはずよ」』。

花子「私は ちっとも いい先生には なれなかった…。 でも 最高のものが返ってきたわ。」

<修和女学校を卒業した はなは 故郷に戻り アンと同じように 小学校の先生になりました。>

安東家

居間

<今日は 新任初日の朝です。>

はな「い… 行ってまいります。」

ふじ「うん。」

周造「はな 大丈夫け。」

ふじ「女学校じゃ あんなに上手に 生徒さんたちに 英語を教えてただから大丈夫ずら。」

はな「ほうだけんど 何だか 日本語の方が緊張しちまって どういう生徒がおるか 分からんし…。」

朝市「おはようごいす。」

もも「おはよう 朝市さん!」

ふじ「おはようごいす。」

吉太郎「今日っから朝市も 念願の先生か。」

朝市「うん。 はな 行こう。」

はな「うん。」

朝市「はな…。」

はな「てっ…。」

(笑い声)

ふじ「落ち着いて こぴっとやるだよ。」

はな「はい。 い… 行ってまいります。」

朝市「行ってきます。」

もも「行ってこうし。」

尋常小学校

♬『春が来た 春が来た どこに来た』

教務室

<はなたちの担任だった本多先生は 校長先生になっていました。>

はな「ごきげんよう。 本多先生 また お世話になります。」

本多「新米の2人だ。 木場先生は 3年生 安東生成は 6年生を 受け持ってもろう。 おまんら 挨拶しろし。」

朝市「木場朝市です。 母校の教師になれて 本当にうれしいです。 精いっぱい頑張りますので よろしくお願えしやす。」

(拍手)

はな「安東はなです。 早く6年生のクラスになじめるように 頑張ります。」

緑川「6年生のカラス?」

はな「6年生のクラスです。」

本多「ほりゃ 英語け?」

はな「あっ そうです。」

本多「安東君は 東京のミッチョンスクールに 通っていたから 英語ができるずら。」

はな「(小声で)ミッションスクール。」

本多「えっ?」

はな「ミッション。」

緑川「校長先生。 こんな人を担任にして 大丈夫ずらか。 西洋かぶれの代用教員が 生徒らに おかしな事を 吹き込まんといいですけんど。 ねえ 先生方。」

本多「まあまあ 挨拶は ほれぐらいでいいら。」

(鐘の音)

教室

はな「6年生の皆さん ごきげんよう。」

(笑い声)

キヨシ「ごきげんよう? ほれ 何ずら?」

はな「『ご機嫌いかがですか?』という 挨拶です。」

「『ご機嫌いかが』?」

「てっ?」

はな「今日から皆さんの担任になった 安東はなです。」

ミヨ「先生は 東京の女学校から 来たって本当け?」

はな「ええ 東京の女学校に行ってました。 ふんだけんど 10歳までは この学校に通ってただよ。」

「この学校に?」

「本当け?」

はな「では 出席をとります。 サクタ ハルさん。」

「はい。」

はな「はい。 アイザワ ミヨさん。」

ミヨ「はい。」

はな「はい。」

(戸が開く音)

「たえ。」

「たえが またボコ連れて 遅刻してきたずら。」

「また遅刻け?」

「また遅刻け?」

はな「小山たえさんですね。」

たえ「すんません。 弟が途中で小便漏らして…。」

「てっ! 小便! 汚え!」

「臭え!」

「ボコ連れてくるじゃねえ!」

「ほうだ ほうだ!」

はな「みんなも ボコの頃は 漏らしてたずら。」

(騒ぐ声)

マサル「『おらの友達は キヨシ君です。 毎日 2人で 虫を捕って遊びます。 おらは バッタの次に キヨシ君が好きです。 おしまい』。」

「バッタの次?」

はな「マサル君 よく できました。 ありがとう。 では 次は… たえさん。」

たえ「はい。」

はな「たえさん? どうしました? ちゃんと書けてるじゃ…。 たえさん?」

キヨシ「おまん どうせ また変な事書えたずら。 『私には カッパの友達がいます。 双子のカッパです。 夕方 川へ水をくみに行くと いつも そのカッパたちに会えます』。」

(笑い声)

キヨシ「何でえ! 双子のカッパ 笑わせるじゃん!」

はな「たえさん。 いいから 続きを読んで。 先生 続きが聞きたいさ。」

たえ「『弟が泣きやまない時 カッパたちは 愉快な踊りをして 弟をあやしてくれます。 2人は 夕日の国に住んでいて 金色や あかね色の きれいな着物を 何枚も持っています。 私も いつか その夕日の国へ 行ってみたいです』。」

(笑い声)

はな「たえさん すばらしいわ! 先生は 想像をかきたてられて わくわくしました。」

キヨシ「てっ! カッパなんて 嘘に決まってるじゃんけ! こいつんちは 貧乏で 友達なんか いねえじゃん!」

「ほうだ ほうだ! 嘘つき! 貧乏!」

「嘘つき!」

「貧乏!」

はな「やめなさい!」

(騒ぐ声)

はな「静かにしなさい! やめなさい!」

緑川「ほれ うるさくて授業にならんら! 静かにしろし!」

はな『静かに』

緑川「『ビー クワイ』?」

教務室

緑川「英語なんかで注意して 生徒らが聞く訳ねえら! 東京のミッチャンスコールだか何だか 知らんけんど…。」

はな「ミッションスクールです。 ミッション。」

緑川「ほんな ご大層な女学校出たなら 教員なんかならんで 早く嫁に行きゃあいいもんを…。 何でえ その目は! これだから おなごは 使えんだ! ねえ 先生方! ねえ? うちは 静かに授業をやってるだから 邪魔だけは しねえでくれちゃ!」

教室

(騒ぐ声)

はな「静かに。」

(騒ぐ声)

「勉強なん やりたかねえ!」

「勉強なん やりたかねえ!」

「勉強なん やりたかねえ!」

はな「お願いだから 静かにして。」

(騒ぐ声)

(騒ぐ声)

はな「ほれじゃあ 今日の理科の授業は 生き物のお勉強をします!」

(赤ちゃんの泣き声)

(鐘の音)

教務室

緑川「校長先生! 大変です! 6年生の教室に 人っ子一人いねえです! おなごの代用教員も 消えちまった!」

本多「何!?」

廊下

生徒たち「ハ~イ! グッド モーニング! グッド アフタヌーン! グッド イブニング!」

「せ~の!」

生徒たち「ハ~イ! グッド モーニング! グッド アフタヌーン! グッド イブニング!」

「せ~の!」

生徒たち「ハ~イ…。」

はな「てっ!」

回想

寅次「誰でえ! こら~!」

寅次「牧師様!」

回想終了

「はな先生 どうしたで?」

「小間使いさんじゃん。」

はな「こ… こ… 小間使いさん?」

寅次「早く教室戻れ! 今に 校長先生の雷が 落っこちるから おまんら 覚悟しろし!」

はな「てっ…。 早く 早く。」

緑川「いた~! あっ あっ あっ あすこです!」

教室

本多「おまんら 授業サボって どけえ行ってただ!」

はな「校外授業です。」

緑川「校外授業だと?」

「はな先生と野の花を摘みました!」

「バッタも捕めえたさ!」

「たえの友達のカッパを 探しに行こうって はな先生が。」

本多「カッパ?」

「英語も教わったじゃん!」

緑川「英語?」

本多「おまんは なにょう考えてるだ!」

たえ「はな先生を叱らねえでくりょう。」

生徒たち「校長先生 アイム ソーリー!」

本多「うるせえ! 金輪際 英語なん生徒に教えるじゃねえ! 英語は禁止! カッパも禁止! 分かったけ!」

はな「も… 申し訳ありませんでした!」

朝市「校長先生。 安東先生は 生徒が騒いで うるさかったから ほかの学年に迷惑かけねえように 校外授業に出かけただと思います。 今日だけは 許してやって下さい。 お願いします。」

本多「何でえ。 おまんまで はなの肩を持つだか!」

朝市「生徒たち こんなに楽しそうだし…。」

本多「楽しきゃいいってもんじゃねえ! おまんら 2人とも 教師の自覚が足ら~ん! はな! 朝市! 立っちょれ~!」

(赤ちゃんの泣き声)

廊下

はな「ごめんなさい。 おらのせいで 朝市まで…。」

朝市「さすがに カッパ探しに行くのは まずいら。」

はな「でも あの森の向こうに 双子のカッパがいると思うだけで 気持ちが わくわくして 楽しくなるじゃん。」

朝市「あん時みてえじゃん。」

<そういえば 昔も こんな事がありましたね。 ごきげんよう。 さようなら。>

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