ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第44回「想像のツバサ?」【第8週】

あらすじ

教師なのに初日から廊下に立たされたはな(吉高由里子)の話はさっそくリン(松本明子)から家族に広まり、はなは「先生に向いてないのでは?」と言われ落ち込んでしまう。翌朝、迎えに来た朝市(窪田正孝)に励まされ、心機一転厳しく授業を進めるはな。そんな中、はなは家が貧しく欠席しがちだが、想像力の豊かなたえ(伊藤真弓)という生徒が気になっていた。ある日、お弁当を持たないたえが空を見上げているのを見たはなは…。

44ネタバレ

尋常小学校

廊下

生徒たち「グッド イブニング!」

キヨシ「せ~の…。」

教室

本多「授業サボって どけえ行ってただ!」

はな「校外授業です。」

本多「金輪際 英語なん 生徒に教えるじゃねえ!」

朝市「今日だけは 許してやって下さい。」

本多「おまんら 2人とも 教師の自覚が足ら~ん! 立っちょれ~!」

<はなは 新任初日にして 教師失格のらく印を 押されてしまいました。>

安東家

はな「ただいま。」

ふじ「ああ お帰り。 どうだったでえ はな。 先生 1日目は?」

はな「うん。」

周造「はな。 まあ… ほう 気にすんな。 のっけだからな。」

リン「のっけから 教師が廊下に立たされてたじゃ 生徒に示しがつかんら!」

ふじ「てっ! 廊下に立たされた?」

リン「うちの朝市まで巻き添え食らって いい笑いもんじゃん!」

もも「てっ! 朝市さんも!? お姉やん 何したでえ?」

はな「ほれは…。」

吉太郎「先生なのに立たされるったあ よっぽど悪い事したずら。」

リン「授業そっちのけで 生徒と 学校抜け出して遊んでただと!」

ふじ「何で ほんな事したでえ? 東京の学校じゃ あ~んなに立派に 授業やってだじゃんけ。」

はな「あれは 遊んでたんじゃなくて 校外授業で…。」

リン「村の人らが見てただよ。 先生のはなが いっとう 楽しそうに浮かれてたって。」

はな「は… 花が いっぺえ咲いてたもんだから つい うきうきしちって…。」

リン「朝市は はなをかばって 一緒に立たされただ。」

吉太郎「全く 朝市にも迷惑かけて。」

もも「お姉やん 先生に向いてねえじゃねえけ?」

リン「ほうだ ほうだ!」

はな「ほうずらかね…。」

ふじ「はな?」

リン「ちと 言い過ぎたけ?」

周造「そうさな。」

リン「おまんも大変じゃん。 おとうに代わって このうちの 暮らしを支えんといけんし かよのこせえた借金もあるし。 教師にまるっきし向いてなくても やるしかねえずら!」

居間

(鶏の鳴き声)

ふじ「今日は 立たされんように こぴっと授業やるだよ。」

はな「うん… 行ってまいります…。」

朝市「おはようごいす。」

ふじ「ああ おはようごいす。」

朝市「おはよう。」

はな「おはよう。」

朝市「行ってきます。」

ふじ「行ってこうし。」

朝市「はなでも 落ち込む事あるだな。」

はな「おら 先生に向いてねえと思う…。」

朝市「たった一日やっただけで 何言ってるだ。 たった一日で あんだけ 生徒と仲良くなれただから 結構向いてるかもしれんじゃんけ。」

はな「ほうかな?」

朝市「ほれ 早く行かねえと遅刻するら。 先生が遅刻したら 生徒に笑われちもうよ!」

はな「よし。」

<さて 今日は 先生らしくできるでしょうか?>

尋常小学校

廊下

はな「はあ… よし!」

教室

「できました!」

はな「はい 正解。 ありがとう。 では 次の問いを…。」

キヨシ「先生。 昨日みてえに 外行きてえ。」

ミヨ「おら ヨモギがいっぺえ 生えてる場所 知ってるだよ。」

「おらも!」

「おらも!」

(騒ぐ声)

回想

富山『静かに』

回想終了

<はなは 富山先生になりきる事にしました。>

はな「Be quie… あっ じゃなかった。 静かに! 今日は 校外授業には行きません。 授業は 教室でやります。」

生徒たち「え~!」

はな「騒ぐ生徒は 廊下に立たせますよ。」

キヨシ「自分も立たされたくせに!」

はな「キヨシ君 先生や目上の人に対しては 丁寧な言葉を使うのが礼儀です。」

キヨシ「えっ? ほんなの どうでもいいじゃんけ!」

はな「よくありません。 言葉の乱れは 精神の乱れです。」

<おや? どこかで聞いたフレーズです。 これは…。>

回想

白鳥「言葉の乱れは 精神の乱れです。 美しく正しい日本語を 話せるように 努力なさって下さい。」

回想終了

はな「美しく正しい敬語を話せるように 努力なさって下さい。」

<今度は 白鳥様になりきっております。>

はな「分かりましたね キヨシ君。」

キヨシ「は~い…。」

はな「みんなも分かりましたね。」

生徒たち「は~い…。」

はな「では 次の問いを キヨシ君 答えなさい。」

キヨシ「てっ…。」

はな「早く 前に出て答えなさい。」

<まだ 板には ついておりませんが どうにか 先生らしくなってまいりました。>

(鐘の音)

キヨシ「おまんちは 貧乏だから 弁当持ってこれんずら。」

マサル「ほうだ ほうだ! 貧乏がうつるから あっち行けし。」

キヨシ「あっち行けし~。」

回想

はな「もも見ろし。 白い米のおまんまが あんなに いっぺえ!」

回想終了

キヨシ「おまん なにょうしてるだ?」

はな「たえさんは 想像の翼を広げてるの。」

生徒たち「想像の翼?」

はな「ええ。 その翼を広げれば どんな鳥よりも高く飛べるし 雲のごはんだって 食べる事ができるのよ。」

たえ「先生 どうして分かるでえ?」

はな「先生も 小さい頃 そうだったから。 毎日 想像の翼を広げて 鳥と一緒に大空を飛んでいたの。 今でも 時々 羽ばたいてしまうけんど。」

たえ「おらだけかと思ってたけんど 先生も ほうけ。」

はな「うん。」

(おなかが鳴る音)

はな「これ 食べろし。」

たえ「てっ! ふんだけんど 先生は?」

はな「先生は おなかがいっぱいなの。」

たえ「ありがとごいす。 頂きます。」

教務室

本多「小山たえの事だけんどな。」

はな「何か?」

本多「教師が お気に入りの生徒を つくったら いかん。」

はな「そういうつもりは…。」

本多「おまんの弁当をやるのも たえのためにゃ ならん。 一回 弁当やったら 明日っから 弁当がねえと もっと つらくなる。 たえんちは 去年 病気で母親を亡くして 父親は 借金返すために 出稼ぎに出て うちには いねえ。]

本多「たえは 一人で ちっくい弟の世話をしながら 留守を守ってるだ。 ほんな生徒を考えもなしに 中途半端な情けをかけたら けえって不幸んなる。 おまんみてえな 甘ったるい同情心じゃ 救えんだ!」

朝市「(小声で)はな。 大変だ。 6年生の生徒たちが。」

校庭

「たえ!」

「歩け 歩け!」

「歩け!」

「歩け!」

「歩け!」

はな「たえさん! どうして屋根になんか…。」

「キヨシたちが たえをからかっただよ。」

回想

キヨシ「本当に翼生えてるなら 屋根の上歩いても 怖くねえら!」

「ほうだ ほうだ!」

たえ「怖くねえ!」

キヨシ「ほれじゃあ 屋根の端っこまで歩いてみろし!」

「歩いてみろし!」

「ほれ! できねえじゃんか!」

「嘘つきたえ!」

「嘘つき!」

「嘘つきたえ!」

たえ「怖くねえ! 歩ける!」

回想終了

「ほれ! できねえじゃんけ!」

「嘘つきたえ!」

はな「たえさん! 下りなさい!」

たえ「怖くねえ。」

「さっさと 端っこまで歩け!」

はな「たえさん やめなさい! 下りなさい!」

朝市「危ねえ! 下りろし!」

緑川「ほれ! おまんら なにょうしてるだ!」

はな「分かったわ。 私がやる。」

朝市「えっ?」

はな「たえさんの代わりに 私が歩きます!」

朝市「はな。 危ねえから やめろし!」

はな「たえさん 今 行くから!」

たえ「はな先生!」

はな「大丈夫。 先生には 想像の翼が生えてるから。」

「いいぞ! 歩け!」

「歩け!」

「歩け 歩け」

「いいぞ!」

「歩け! いいぞ!」

「はな先生!」

「はな先生!」

「歩け!」

「いいぞ!」

「はな先生!」

「はな先生 下りてくりょう!」

緑川「どうかしてるら!」

「はな先生 下りろし!」

たえ「はな先生!」

はな「てっ…。」

廊下

(鐘の音)

朝市「あっ おはようごいす。」

はな「おはようございます。 昨日は お騒がせして 申し訳ありませんでした。」

緑川「な~んも無理して 学校来る事ねえら。 ず~っと来なんでいいだよ。」

教室

はな「ごきげんよう。 てっ! 何ですか これ。」

キヨシ「はな先生と朝市先生 お似合いじゃん!」

ミヨ「結婚するだけ?」

マサル「アイ ラブ ユー!」

<てっ! なんて大きな相合い傘。 ごきげんよう。 さようなら。>

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