あらすじ
4年ぶりに突然甲府へ帰って来て、はな(吉高由里子)の教室へ現れた吉平(伊原剛志)。家族のもとへ帰っても追い返されないようにしてくれと頼む吉平のために、はなは一計を案じ、一足先に家へ帰る。はなはふじ(室井滋)たちの前でさりげなく吉平の話題を出そうとするが、吉太郎(賀来賢人)は父への反感をあらわにし、うまく行かない。そのころ教員室で待機していた吉平は、本多(マキタスポーツ)からはなの見合い話を聞き…。
50回ネタバレ
尋常小学校
教室
吉平「グッド アフタヌーン。 はな。」
はな「てっ! おとう!」
キヨシ「てっ! この変なおじやん はな先生のおとうけ?」
(どよめき)
吉平「よっ みんな! グッド アフタヌーン。 はな先生は いい先生ずら?」
生徒たち「うん…。」
吉平「当たり前だ! はなは ちっちゃい時っから神童でな ほりゃあ 勉強は よくできたぞ。」
はな「おとう! もう やめてくりょう!」
(笑い声)
放課後
<行方知れずだった吉平が ひょっこり帰ってきました。>
吉平「久しぶりに はなに会いに 東京の修和女学校に行ったら こっち戻って 先生やってるって 聞いて 驚いただ! てっきり はなは 東京で 英語生かした仕事をしてると 思ってただからな。」
はな「おとう。 おら 卒業したら 甲府に帰ってきてえって ず~っと思ってただよ。」
吉平「何でだ。 こんな英語を使うこんなん まるっきしねえ田舎に 帰ってきたかったなんて 何でだ?」
はな「おらの事なんかより おとうこそ 一体 今まで どこで 何してたでえ? 4年も帰ってこなんで おかあも みんなも 心配してただよ!」
吉平「まあ… いろいろあっただ。 おかあは おとうのこん 怒ってるけ?」
はな「怒ってはないけど… もう帰ってこなんもんだと 思ってる。」
吉平「はな! 助けてくりょう。」
はな「てっ… な… 何?」
吉平「おとうが帰っても 追い返されねえよう なんとかしてくれちゃ! 頼む! 頼む!」
はな「おとう…。」
安東家
居間
はな「ただいま。」
ふじ「ああ お帰り。」
はな「おかあ 手伝うよ!」
ふじ「ほんなに慌てて 手伝わなんでいいだよ。 着物が汚れちもうから 先に着替えてこうし。」
はな「てっ… ほ… ほうだね。」
ふじ「はな どうしたでえ?」
はな「えっ…。」
ふじ「何だか そわそわして。」
はな「あ… あの… あのね… おとうの事だけんど…。」
ふじ「えっ? おとうが?」
はな「実は…。」
吉太郎「ああ はな 帰っただか。」
もも「お姉やん お帰り。」
はな「ただいま。」
吉太郎「おかあ まき 置いとかあ。」
ふじ「ああ ありがとう。 ほいで おとうが どうしたでえ?」
吉太郎「おとうだと?」
はな「ううん! えっと… あ… 元気にしてるかなって…。」
吉太郎「あんなやつ どうなってても 今っ更 関係ねえじゃんけ。」
周造「キチ。 あんな おとうでも おまんのおやじだ。 あんなやつなんて 言うもんじゃねえ。」
ふじ「ほうだよ。」
尋常小学校
教務室
吉平「いやいや 朝市まで 先生になってるとはな! アハハハハ! ほいで 本多先生が校長に なってるとは思わなんだ!
アハハハ! どうです? はなの先生ぶりは。」
本多「ん?」
吉平「立派に教えてるでしょう? アハハハ!」
緑川「問題起こしてばっかしじゃん。」
吉平「ほんなはずは ねえ! はなは 東京のすばらしい女学校で 人一倍頑張って…。」
緑川「こういう父親だから ああいう娘になったでごいすね。 校長。」
吉平「ああいう娘?」
朝市「おじさん! おじさん! おじさん!」
吉平「校長先生。 はなのこん どうぞ よろしくお願えします。」
本多「うん… 今まで何をしてたか 知らんけんど ちょうどいい時に帰ってきた。 早く縁談話を受けろって おやじのおまんが そう言ってくれたら はなも言う事聞くら。 うん。」
吉平「縁談? どういう事でえ?」
朝市「はな こないだ 地主の 跡取り息子と見合いしたです。」
吉平「てっ! 徳丸んとこのせがれと!?」
本多「ああ 違う違う。 徳丸さんの口利きで 望月さんとこの跡取り息子と 見合いをしただよ。」
吉平「望月さんの!? ほれで はなは 断っただけ?」
朝市「ほれが 迷ってるみてえで…。」
本多「グズグズ もったいをつけてるけんど これ以上ねえぐれえ いい条件だ。 断る理由もねえら。 さっさと決めろって おまんから そう言って…。 てっ!」
安東家
居間
ふじ「はな… どうしただ?」
はな「あっ… ひょっとしたら おとうが ひょっこり 帰ってくるかもしれんし。」
ふじ「さっきから おとう おとうって どうしたでえ?」
もも「どうしたでえ?」
はな「いや… 何となく。」
(戸が開く音)
吉平「はな! 見合いなん断れ!」
ふじ「あんた!」
はな「おとう! まだ早いじゃん!」
吉平「しまった…。」
もも「信じられねえ。 おとう! おとう お帰り!」
吉平「えっ…。 おお! ももか! 大きくなったな~! アハハハ! おお 吉太郎。 変わりはねえか?」
吉太郎「『変わりはねえか』じゃねえ。 よくも のこのこ帰ってこれたもんだな!」
もも「兄やん!」
ふじ「吉太郎 やめろし!」
はな「せっかく おとうが 帰ってきてくれただから…。」
吉太郎「今っ更 何の用があって 帰ってきただ!」
吉平「父親に向かって ほの言いぐさは 何だ!」
吉太郎「父親だ! ずっと帰ってこねえで 何が父親だ!」
周造「キチ 落ち着けし。」
ふじ「吉太郎の言うとおりじゃん。」
はな「おかあ…。」
ふじ「今まで 何の便りもしなんで 一体 どこで何してただ!」
吉平「ほれは…。」
ふじ「どんだけ みんなが心配してたか 分かってるか!」
吉平「すまない…。 いろいろあって…。」
ふじ「いろいろって?」
吉平「ほの事は 後で こぴっと話すから 俺の事より はな! 望月さんとの縁談なん もちろん断るずらな?」
はな「ほれは…。」
吉平「はなを 東京の学校で勉強さしたのは 広い世界で英語を使って 活躍してほしかったからじゃん。 地主に 嫁がせるためなんかじゃねえ! こんな狭っ苦しい田舎で 一生 終えてもいいだか!? よし! 俺が今っから 徳丸さんとこ行って 縁談断ってくるだ!」
はな「てっ おとう!」
吉太郎「何にも知らねえくせに 勝手な事するじゃねえ!」
吉平「勝手な事!? おまんは はなが 好きでもねえ地主と 結婚すりゃあいいと 思ってるだけ!?」
ふじ「2人とも… 2人とも やめてくりょう!」
吉太郎「はなが見合いしたのは 何でだか知ってたけ!?」
はな「兄やん いいから…。」
吉太郎「家族のためじゃんか! 結婚したら 望月さんが このうちの借金 肩代わりして 家族の面倒まで 見てくれるちゅうで ほれで はなは見合いしただ!」
吉平「借金?」
ふじ「かよが… かよが こせえた借金さ。 かよは 製糸工場の女工の仕事が つらくって 東京の はなの所に 逃げ込んだだよ。」
吉平「かよが…。 我慢強え かよが…。」
回想
かよ「てっ… お姉やん?」
はな「かよ! どうしたの?」
かよ「会いたかった… お姉やん!」
回想終了
ふじ「あんな明るい かよが… ひっどい痩せて ひど~い顔色してただよ。」
吉平「ほれで かよは 今…。」
はな「東京の洋服店で奉公してるさ。 東京なら なんぼでも仕事あるから 働いて借金返すって。」
吉太郎「はなが甲府に戻ってきたんだって 何でだか知ってたけ? 帰ってこねえ おとうの代わりに 金稼いで借金返すためじゃん! はなだけじゃねえ! おとうが帰ってこねえ間 みんなが どんだけ苦労しただか 知ってたけ。」
吉太郎「おとうの代わりに おかあが 徳丸さんに 何べんも何べんも頭下げてる事 おとうは 知ってたけ!? おかあだけじゃねえ! おじぃやんは 腰も足も痛えの我慢して 人手が足りねえから 休む事もできねえで 毎日 毎日 畑仕事してきただ。 ももは ちっくい頃から 友達と遊ぶのも我慢して 朝から晩まで 畑仕事 手伝ってきただ。」
吉太郎「ほれでも 田んぼと畑だけじゃ 食っちゃいけんから みんなで必死で夜なべしもして…。 こんなに働いても ちっとも 生活は 楽になんねえって おとうは 知ってたけ!? 何一つも知らねえくせに… 知ろうともしなんだくせに… おとうなんか… こんな おとうなんか おらたち家族に必要ねえ!」
はな「兄やん!」
周造「キチ もういい。」
はな「兄やん!」
周造「あいつが怒るのも 無理はねえ。 キチは おまんに代わって 家族の事を支えようと ボコの頃から 歯ぁ食いしばって頑張ってきただ。 こぴっと考えろ。 ここにいるのは おまんの家族だぞ。」
<おとう 本当に 何にも知らなかったんですね。 せめて 今日から 愛する家族のために お励みあそばせ。 ごきげんよう。 さようなら。>