ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「花子とアン」第52回「はな、お見合いする」【第9週】

あらすじ

福岡の蓮子(仲間由紀恵)の元へ、兄・晶貴(飯田基祐)が突然現れる。応対した伝助(吉田鋼太郎)は挨拶も早々に晶貴へ封筒を渡す。蓮子が奪い取って確かめると、中身は札束だった。事業の資金繰りが下手な晶貴は伝助に金を無心しに来たのだ。問いつめる蓮子をよそに晶貴は去り、伝助は「お前のために払う金と思えば惜しくはない」などと言い放つ。蓮子の孤独は深まるばかりだった。一方、安東家も相変わらず気まずい空気で…。

52ネタバレ

安東家

居間

はな「おとう!」

吉太郎「何も知らねえくせに 勝手な事するじゃねえ!」

吉平「勝手な事!? おまんは はなが 好きでもねえ地主と 結婚すりゃあ いいと 思ってるだけ!?」

ふじ「2人とも やめてくりょう!」

吉太郎「おとうなんか… こんな おとうなんか おらたち家族に必要ねえ!」

はな「兄やん!」

翌日

(セミの鳴き声)

はな「今日も暑くなりそうじゃん。」

もも「すっかり夏じゃんね。」

ふじ「本当にねえ。」

周造「そうさな。」

はな「兄やんも 何か しゃべってよ。」

吉太郎「ええ加減 見合いの返事しねえで いいだけ?」

はな「てっ…。」

<やぶへびでした。>

尋常小学校

<終業式の日がやってまいりました。 明日から 学校は夏休みです。>

教室

はな「オノ タキさん。」

「はい。」

ミヨ「あれ? 裏に何か書えてあるじゃん。」

はな「勉強が ちっとぐれえ できんでも それぞれ いいところは いっぱいあるだよ。 そのいいところを伸ばしながら 頑張っていきましょう。 それでは 皆さん よい夏休みを。」

キヨシ「先生! 見合いは どうなったでえ?」

はな「てっ…。」

マサル「地主様と 見合いしたって聞いたさ。」

ミヨ「すげえなあ 先生! お金持ちと結婚するだな。」

はな「あっ まだ 決まった訳じゃ…。」

キヨシ「ふんでも 嫁に行ったら 学校辞めちもうだけ?」

はな「ほれは…。」

ミヨ「え~ 嫌だ! 先生 辞めなんでくりょう!」

「辞めなんでくりょう!」

「辞めなんでくりょう!」

キヨシ「先生! アイ ラブ ユー!」

生徒たち「アイ ラブ ユー! 辞めなんでくりょう!」

教務室

はな「やっぱし 縁談断ろうかな。」

朝市「てっ?」

はな「あんなに慕ってくれる生徒が いるなんて 私 意外と教師向いてるかも。」

本多「安東先生。」

はな「はい。」

本多「おまんの通信簿を作っただ。 うん。」

はな「てっ。 『指導力 丙。 勤務態度 丙。 協調性 丙。 裁縫 丙…』。

本多「こぴっと反省して 立派な教師になれし。」

嘉納邸

「奥様。 お兄様が来られました。」

蓮子「えっ 兄が?」

葉山「やあ 蓮子。 元気にしていたか?」

蓮子「お兄様。」

蓮子「お兄様が こんな所にお見えになるなんて 一体 どういう風の吹き回しかしら。」

葉山「蓮子が どうしているか 様子を見に来たんだ。」

蓮子「お兄様が まだ 私の事を 覚えていて下さったなんて 感激して涙が出そうですわ。」

葉山「まさか 嘉納さんに対しても そうなふうに 皮肉たっぷりの口を 利いてるんじゃないだろうな。」

蓮子「ご心配なく。 おかげさまで 私たち夫婦 大層うまくやっておりますのよ。 フフフフ フフッ。」

葉山「お前 分かってるのか。 今度 また離縁でもされたら それこそ葉山家の恥だ。 戻ってきたとしても 葉山家の敷居は 二度と またがせんぞ。」

蓮子「それで 何のご用ですの?」

嘉納「いや~ お待たせしてすんまっせん。」

葉山「いや こちらこそ 突然押しかけてしまって 申し訳ありません。」

嘉納「約束のものを ここに。 おい。」

葉山「では 確かに。 おい! やめないか。」

蓮子「このお金…。 一体 どういう事です?」

嘉納「お中元たい。」

蓮子「お中元? ご冗談を。」

嘉納「よかやろうが。」

蓮子「何がいいんですか!」

葉山「では 私は そろそろ。」

蓮子「お兄様!」

葉山「蓮子 くれぐれも 分かってるな。」

蓮子「お兄様 お待ちください! 兄に お金を渡すなんて 一体 どういうおつもりですか! しかも あんなに たくさん!」

嘉納「お中元ち 言うとろうが。」

蓮子「甘い顔をしたら 兄は 何度でも無心に来ますよ。」

嘉納「金がかかるちいう事は 前から分かっちょった。」

蓮子「はっ?」

嘉納「お前の結納金で 貴族院議員になって その上 事業にも いろいろ手を出しちょるそうじゃ。 どれも うまい事いっちょらん。」

蓮子「なぜ あなたが 尻拭いをなさるんです?」

嘉納「お前のために払う金と思うたら 惜しいこたない。」

蓮子「お金… お金 お金! あなたは いっつも そうです! 私は 芸者ではありません!」

嘉納「フフフフフ 何を言いよるとか。 こげな高い芸者がおるか! ハッハッハッハッハ。」

蓮子「フフフフ…。 フフフフフ! フフフフフ! アハッ! アハハハハ…! アハハハハ! アハハハハ!」

<それからというもの 教養がなく 芸術を理解する心も 持ち合わせていない伝助に 当てつけるように 蓮子は 頻繁に お屋敷で サロンを開くようになりました。>

蓮子「これは?」

黒沢「お招き頂いたお礼にと 思いまして。」

蓮子「なぜ 竹久夢二なのかしら?」

黒沢「彼の描く女性は すばらしいですよ。」

蓮子「あなた こういう かれんな女性が お好きなのかしら?」

黒沢「絵としては すてきです。」

蓮子「あら そう。 それじゃあ 私のような女は どう思って?」

黒沢「竹久夢二に 是非 描かせたいですね。」

蓮子「あなた お名前は?」

黒沢「あっ 申し遅れました。 東西日報の黒沢と申します。 嘉納伝助さんに 取材をお願いしてるんですが なかなか ご承諾頂けなくて。」

蓮子「主人に取材? やめなさいよ そんな つまらない記事。 ねえ 黒沢さん。 いつまで そうやって 突っ立ってらっしゃるの?     」

黒沢「失礼して 飲み物を取ってきます。」

蓮子「ここにあるわ。 乾杯。」

<蓮子が そんな事になっている頃…。>

料亭

徳丸「吉太郎君 入営おめでとう! お国のために こぴっと頑張れし! ほれじゃあ 乾杯!」

一同「乾杯!」

(拍手)

ふじ「おかあまで晴れがましいだよ。」

徳丸「いや~ めでたい! おめでとう!」

周造「今日は こんな 盛大なお祝いをしてもろうて ありがとうごいす。」

ふじ「本当に ありがとうごいす。」

徳丸「ふじちゃんも 立派な息子持って 鼻が高えら。」

ふじ「ええ…。」

徳丸「まあ ほう さみしがらなんでも 兵隊暮らしは 2年だけじゃん。 吉太郎君! 兵役が終わったら また こっち戻ってくるずら?」

吉太郎「ほれは…。」

徳丸「何でえ? 兵役が終わっても 何かやりてえ事があるだか?」

吉太郎「おら 兵役が終わっても そのまま軍隊に残れるように 頑張ろうと思ってるです。」

一同「てっ。」

吉太郎「職業軍人を 目指すつもりでごいす!」

はな「兄やん…。」

「おお~ 頑張れし!」

(拍手)

徳丸「吉太郎君 よく言った! 職業軍人になって お母さんたちを 楽さしてやれし!」

吉太郎「はい。 頑張ります!」

吉平「俺は ほんなの聞いてねえぞ!」

ふじ「ちょっと あんた!」

はな「おとう!」

吉平「ずっと うちにいなんだのに どうやって話せっていうだ。 おとうに許してもらわんでも もう決めただ。 おらは 軍人になる。 金稼いで 家族に楽さしてやるだ。」

吉平「ほれは 俺のせいか?」

はな「おとうも兄やんも やめてくりょう。 せっかくの お祝いの席なんだよ。」

ふじ「ほうだよ!」

吉平「俺は 絶対に許さねえぞ!」

吉太郎「また逃げるだけ!」

吉平「何だとう?」

吉太郎「おとうは いっつも ほうやって おらたちから逃げるじゃんけ! おらは おとうみてえに フラフラ生きたりしねえ。 おまんみてえには 絶対にならねえ。」

徳丸「さあ 仕切り直しちゃあ! 新しい酒 持ってこうし。」

「はい。」

徳丸「吉太郎君! ほら 飲め。」

周造「吉太郎の祝いの席だ。 わしらだけでも祝ってやろう。 なっ。」

<父と息子の絆は 切れてしまったのでしょうか? ごきげんよう。 さようなら。>

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