あらすじ
4年の月日がたち、はな(吉高由里子)もすっかり小学校の教師らしくなっていた。ある日、行商から戻った吉平(伊原剛志)が見合い話を持ってくる。はなは「見合いはもうこりごり」と言うが、今度はもも(土屋太鳳)への見合い話で、相手は北海道へ移住しようとしている青年だと言う。吉平は熱心に勧めるが、ふじ(室井滋)は否定的で、もももあまり乗り気でない様子。はなは、ももはひそかに好きな人がいるのでは、と思い始める。
55回ネタバレ
尋常小学校
(鐘の音)
<はなが初めて 生徒たちを送り出してから 4年の月日がたちました。>
教務室
「木場先生 おはようごいす!」
「おはようごいす!」
朝市「おはよう。」
「はな先生。」
2人「グッド モーニング!」
はな「グッド モーニング!」
緑川「てっ! あれだけ禁止した英語も 今じゃ 使いてえ放題じゃん! 校長先生! 4年もたつと おなごは ずうずうしくなって 始末に負えんですな~!」
はな「4年もおって悪かったですね 緑川先生。 授業行ってきます。」
緑川「行ってこうし!」
教室
はな「ごきげんよう。」
シゲル「はな先生と緑川先生 お似合いじゃん!」
正一「うちの おかあが言ってたさ。 けんかするほど 仲がいいだとう!」
きよ「結婚するだけ?」
はな「黒板係 消しなさい。」
「はい。」
<はなの教師生活も はや 5年目に入り すっかり 教師らしくなりました。>
はな「では 出席をとります。」
安東家
居間
周造「よっこらしょ。」
ふじ「フフフフ。 今日 吉太郎から手紙が来たさ。」
2人「てっ!」
ふじ「ああ おらが読めるように 全部 平仮名だ。」
はな「おかあ 読んで。」
ふじ「『ははうえさま おげんきですか。 じぶんは まいにち げんきで にんむに はげんでいます。 こんげつは すこし おおく しおくりをします』。」
<軍隊に入った吉太郎は うちには戻らず 志願して憲兵になりました。>
ふじ「『きちたろう』。」
もも「兄やん たまには 帰ってきてもいいじゃんね。 憲兵の仕事って ほんなに忙しいずらか。」
ふじ「元気でやってくれたら それでいいだよ。」
周造「そうさな。」
はな「お盆には 帰ってこられるといいね。」
吉平「帰ったぞ!」
<地主の徳丸さんに 借金を返すと宣言した吉平は 相変わらず忙しく 全国を回って行商しています。>
吉平「いい土産を持ってきただ!」
ふじ「はっ?」
吉平「縁談話じゃ!」
もも「てっ!」
はな「おとう… おら もう縁談はいい…。」
回想
望月「ご縁がなかったようです。」
はな「望月さん…。」
望月「失礼します。」
回想終了
はな「お見合いは つくづく 向いてねえって分かったから…。」
吉平「違う。 はなにじゃねえ。 ももの縁談じゃ。」
ふじ 周造「てっ!」
もも「てっ! おらに?」
吉平「ああ。 旅先で知り合った 森田君っちゅう若者だけんど これが なっかなか 見込みのあるやつでなあ! 新天地の開拓のために 一家挙げて 北海道に移住するだとう!」
はな「北海道?」
もも「北海道? そこ どこでえ?」
はな「遠くて 冬は すごく寒い所。」
もも「東京と どっちが遠いでえ?」
はな「北海道の方が ずっとずっと遠く。」
ふじ「何でまた ほんな遠くに行く人との 縁談なんか…。」
吉平「ああ 森田君は ほりゃあ いいやつなんじゃ。 働きもんの もものこん話したら 向こうも是非にと言ってくれてる。 ほれに 時代は 今 北海道だ。 まだ誰のもんでもねえ土地が ほこら中にあるし 金持ちも貧乏人もねえ。 みんな平等だ!」
周造「また婿殿の突拍子もねえ話が 始まっとう。」
吉平「これっからは 北海道の時代だ! 偉え外国の博士も言ってる。 え~… 何だっけな…。 ボーイズ ベー… アン…。」
はな「Boys, be ambitious.」
吉平「ほれ ほれ! ボーイズ ビー アンビシャスだぞ もも!」
はな「あっ おとう。 ももは 女の子だから Giris, be ambitious.」
吉平「おお! ももよ 大志を抱けし! 森田君はな でっけえ野望を持った熱い男だ。 どうでえ? 夢のある縁談ずら?」
もも「う~ん…。」
吉平「いい話ずら?」
寝室
はな「さっきの縁談の話 嫌なら お姉やんから おとうを説得するよ。」
もも「おら 家族と離れるのは 嫌だ。 地元の人と結婚して この近くで暮らしてえ。 ほうしたら みんなと ず~っと一緒にいられるら?」
はな「分かった。 北海道なんか 絶対行かせねえから 心配しんでいいよ。」
もも「ほれと… おら お嫁に行くなら 好きな人のところがいいなあ…。」
はな「もも ひょっとして 好きな人でもいるのけ? てっ! 誰?」
もも「あ…。 てっ! やっぱし言えねえ! おやすみ!」
<あんなに小さかった ももが いつの間にか 恋するお年頃に なっていたんですね。>
庭
(鶏の鳴き声)
朝市「おはようごいす。」
周造「ああ おはようごいす。」
朝市「おはよう。」
はな「おはよう。」
朝市「これ うちのおかあが 漬物 漬け過ぎたからって。」
はな「てっ! ありがとう!」
朝市「ほら。」
はな「うわ~ おいしそう! 夜 みんなで頂くさ。 朝市 ほつれてるじゃん。」
朝市「ああ。」
はな「中で直してやる。」
朝市「ありがとう。」
居間
朝市「痛っ!」
はな「てっ! ごめん…。」
朝市「大丈夫 大丈夫。」
はな「大丈夫?」
もも「お姉ちゃん 貸して。」
はな「ああ…。」
もも「出来た。 これで大丈夫ずら。」
朝市「ももちゃん うまいね。」
もも「エヘヘ! これぐらい どうって事ねえだよ。 いつでも やってあげるさ。」
朝市「本当け? ありがとう。」
もも「てっ… て~っ! 痛~…!」
朝市「大丈夫け?」
もも「てっ! 大丈夫。 大丈夫。」
<もしかして ももの好きな人というのは…。>
もも「朝市さん 遅刻するよ! 行ってこうし!」
朝市「行ってきます。 ありがとう。」
尋常小学校
教務室
朝市「ほうか。 北海道か…。」
はな「朝市は どう思う?」
朝市「どうって… ももちゃんが ほんな遠いとこに 嫁いじまったら めったに会えねえじゃん。 寂しくなるな…。」
はな「寂しくなる? ほうけ。」
本多「ももは わしも 受け持った事があるけんど 素直でいいボコじゃん。 もう嫁に行く年になったのか…。」
緑川「妹に先越されそうで 焦ってるだけ。 20代も半ばんなって 素直の『す』の字もねえ おなごの 貰えては いねえ。 もう諦めろし。」
はな「私の事は いいです。」
安東家
居間
はな「朝市に縁談の話したら ももが北海道に嫁いじまったら 寂しくなるなって言ってただよ。」
もも「朝市さんが? 本当に?」
はな「うん。」
<やっぱり ももが好きなのは 朝市に間違いないと はなは 思いました。>
吉平「何で 朝市が ももの縁談に 口ょう挟むだ。 森田君は 本当にいいやつだから 一緒になれば 必ず ももは幸せになれるだ。」
はな「おとう。 もっと ももの気持ち 考えてやれし。 おら ももが赤ん坊の頃から 子守りしてきた。 おしめ替えて 背中におんぶして 一緒に学校にも通った。 おとうや おかあに 負けねえぐれえ おら ももの事が かわいくて たまらん。 ふんだから ももが好きな人と 幸せになってくれる事が 一番だと思う。」
もも「お姉やん…。」
周造「そうさな。」
尋常小学校
廊下
はな「こうなったら 急いで 朝市とももをくっつけなきゃ。 おとうを諦めさせるには ほれしかねえ。 うん。」
本多「安東! おまんは なにょう ブツブツ言っとるだ。」
はな「校長先生… 教えて頂きたい事が。」
本多「何ずら?」
はな「男女を 急いで仲良くさせるためには どうしたらいいでしょうか?」
本多「う~ん… おまんの受け持っとる3年生は 男子も女子も みんな仲がいいら。」
はな「はあ…。 もっと大きな男女の場合は?」
本多「ほんなもん 一緒に遊ばしときゃあ 仲良くなるら。」
はな「なるほど…。」
「木場先生! おら 大人になったら 先生のお嫁さんになる!」
朝市「あ… ありがとう。」
はな「(小声で)てっ! 木場先生モテるじゃんけ…。 こりゃあ 本当に急がんきゃ…。」
徳丸商店
はな「これ 今月の分です 父から預かってきました。」
徳丸「うん。 確かに。 この分だと 今年中に全額返済できると おとうに伝えてくりょう。」
はな「はい! ほれと あの… 徳丸さんなら ご存じかと思うんで お聞きしますけんど 大人の遊びって何でしょう?」
徳丸「大人の遊びっていったら 芸者呼んで お屋敷遊びずら。」
はな「芸者… いえ もっと気軽にできるもんで。」
徳丸「船遊びもいいぞ。 川に船浮かべて 芸者呼んで。」
はな「(小声で)芸者はいいから…。」
徳丸「ん?」
はな「男女が一緒に楽しめて お金のかからない 何か遊びは ないでしょうかね?」
徳丸「う~ん ほれなら 茶飲み会でもやれし。」
はな「なるほど!」
武「ほんなに大人の遊びがしてえなら うちに招待してやらっか。」
安東家
居間
はな「ただいま。」
もも「お帰り。」
はな「もも 今度の日曜日 徳丸さんとこで茶飲み会やるよ。」
もも「えっ?」
はな「一緒に行こう! 朝市も誘うから。」
もも「てっ! 朝市さんも? 行く!」
<もものために 今で言う合コンを 思いついた はなですが ふじは 何だか心配そうです。>
もも「どうしっか。 着るもん ねえだよ。」
はな「お姉やんの着ていけばいいじゃん。」
<ごきげんよう。 さようなら。>