あらすじ
もも(土屋太鳳)の好きな人が朝市(窪田正孝)だと知ったはな(吉高由里子)は、ふたりを近づけるため、はな・もも・朝市・武(矢本悠馬)で合同の茶飲み会を開く。はなはももと朝市をふたりきりにするため、思惑に気づかない武をなんとか巻き込んで、こっそり家に帰る。そうとは知らず、朝市とふたり残されたももは…。そんなある日、小学校に小包が届き、はなは差出人を見て驚く。絶交していた蓮子(仲間由紀恵)からだった。
56回ネタバレ
安東家
寝室
<吉平が ももに縁談を持ってきました。>
もも「おら お嫁に行くなら 好きな人のところがいいなあ…。>
居間
もも「これで 大丈夫ずら。」
朝市「ももちゃん うまいね。」
もも「てっ!」
<ももの朝市への気持ちに気付いた はなは 茶飲み会を計画したのです。>
徳丸家
客間
はな「では ただいまより 合同パルピテーション会を行います。」
武「パ… パパパパパ… パル?」
朝市「はな 意味分からんじゃん。」
はな「いいの 分かんなくて。」
<さて はなの計画どおり 朝市とももは 急接近してくれるでしょうか?>
武「ももちゃん カステラ食わねえけ? うめえよ。」
もも「武さん ありがとう。」
はな「武 ほんな気ぃ遣わんで いいから。」
武「えっ?」
もも「うめえなあ!」
朝市「本当だなあ。」
武「ふんだけんど 何で この4人でえ?」
朝市「ほういやあ この顔ぶれって 小学校の頃 4人一緒に教室にいただよな。」
武「ほういやあ あの石盤事件の時も この顔ぶれじゃん。」
はな「てっ! 本当だ。」
もも「石盤事件?」
朝市「ももちゃんは ボコだったから 覚えてねえら。」
回想
(泣き声)
本多「誰でえ! ボコ泣かしたは!」
武「朝市君でごいす。」
はな「朝市け。」
朝市「はな…。」
はな「はなじゃねえ! こん ひきょうもん!」
回想終了
もも「ほんな事があっただけ!」
朝市「あんときゃあ とんだ目に遭ったさ。」
もも「お姉やん 石盤でたたくなんて ひでえじゃんけ!」
はな「ありゃあ もとはと言えば武が悪いだよ。」
武「えっ? ほうだったかな。 おまんら2人で 廊下立たされたじゃん。」
朝市「あのあと しばらく はな 口利いてくれなんだよな。」
はな「ふんだって 朝市が本当の事言わんから。」
朝市「ほいで やっと はなと仲直りしたと思ったら 奉公行くって言いだして。」
武「朝市 おまん あん時 泣きそうな顔してたじゃん。」
朝市「てっ! ガキん時の話ずら。」
武「はなが東京の女学校行くときゃあ 本当に泣いてたら。 ハハハハ!」
朝市「武だって!」
武「ガキの時の話じゃんけ。 ほんなの覚えてねえじゃん。」
朝市「そしたら おらも覚えてねえ。」
はな「武! あ… おら ちっと御不浄に。」
武「ももちゃん もっとカステラ食えし。」
はな「武! あ… ここんちは 広いから 迷子になってしまうかも分からん。 一緒に来てくりょう。」
武「…ったく 一人で便所も行けねえだけ? はあ… 甘えん坊なやつじゃん。」
朝市「ももちゃん ほら。」
もも「ありがとう。」
朝市「うめえだ。」
もも「うめえ!」
廊下
武「おお 便所は そっちじゃねえよ。」
はな「御不浄は もういい。 おら ちっと急用を思い出した。」
武「はあ?」
はな「武 うちまで送ってくりょう。」
武「何で はなたれを 送らんきゃならんでえ?」
はな「いいから!」
武「えっ? おお… おい。 おまん おらと 二人きりになりたかっただな。 ほれで こんな茶飲み会なんか 開いただけ。」
はな「はあ?」
武「ほれなら のっけから 素直に ほう言やあいいら。 まあ おらに ほれるのは 分かるけんど 地主と小作じゃ身分が違い過ぎて 結婚は できんら。」
はな「いいから 送れし。」
武「えっ?」
客間
朝市「遅えな。」
もも「本当だね。」
朝市「あっ ほういやあ ももちゃん 北海道行く人と 縁談があるだって?」
もも「朝市さん どうすればいいと思う?」
朝市「ももちゃんなら きっと いいお嫁さんになるら。 ふんだけんど 周りに流されて 気が進まん結婚だけは しん方がいい。」
もも「朝市さんが ほう言うなら 絶対に断る。 お姉やんが おとうを説得するって 約束してくれたし。」
朝市「ほうか。 じゃあ 大丈夫だ。」
もも「うん。」
朝市「ほれにしても 遅えな。」
もも「どけえ行ったずら お姉やん。」
朝市「はなみてえなお姉やん持つと ももちゃんも大変ずら。 急に突拍子もねえ事 思いついたりするから。」
もも「ふんだけんど あんなに妹思いの お姉やんは どこにもいねえ。 おら お姉やん大好き。」
朝市「ほうけ。」
もも「本当に遅えなあ。」
朝市「あっ。」
武「てっ! おまんら まだいただけ。」
もも「えっ?」
朝市「はなは?」
武「とっくに帰ったさ。 あいつは 何を考えてだか。 『送ってくれ』とか言って うちの前まで ついてったら ピシャッと戸を閉められただ。 …ったく はなたれの分際で。」
安東家
庭
もも「送ってくれて ありがとう。」
朝市「ほれじゃ。」
もも「うん。」
朝市「ももちゃん おらの顔 何かついてるけ?」
もも「ううん!」
朝市「今日は 何だか へんてこな 茶飲み会で疲れたじゃんね。」
もも「ううん。 おら 最高に楽しかったさ!」
朝市「ほうけ。 なら いいけんど。 ほれじゃ。」
はな「(小声で)…という訳さ。」
吉平「ももは 朝市の事が…。 ほれで 縁談渋ってただか。」
はな「ほうだよ。」
吉平「ああ… いや 朝市は 確かに いいやつだが 森田君も 負けず劣らず いいやつだ。 ももも 会えば きっと よさが分かる。」
はな「おとう 何で… 朝市なら うちも近いし 仕事ぶりも真面目だし 昔っから よく知ってるし 何の問題もねえら。」
吉平「ふじは どう思う?」
はな「おかあも ももと朝市が一緒になった方が いいと思うじゃんね。」
ふじ「そうさな~…。」
はな「おかあは いつから おじぃやんになったでえ。」
吉平「こっちは 真剣に聞いてるだ。」
ふじ「2人とも ももの事は そ~っとしといいてやれし。」
はな「おかあ…。」
尋常小学校
教務室
<そんな ある日の事。>
(戸が開く音)
寅次「安東先生 郵便ずら。」
はな「ありがとうごいす。」
はな「てっ!」
本多「安東…。」
朝市「何でえ?」
緑川「びっくりさせるじゃねえ。」
はな「どうも すいません。」
<はなの心臓は ドキドキ高鳴っていました。 9年間も絶好していた あの蓮子からです。>
はな「『踏繪』…。 『白蓮』…。」
<それは 当時 一世を風靡した 竹久夢二が装丁を施した 歌集でした。>
蓮子『前略 安東はな様。 以前 『児童の友』という雑誌で あなたの童話を お見かけ致しましたが あれ以来 待てど暮らせど あなたの作品は 一作も見かけません。 その間に 私は 歌集を出す事に相成りました。』
蓮子『あなたは いつになったら 安東花子の名前で 本を出すのですか? ぐずぐずしていると おばあちゃんに なってしまいますわよ。 では ごきげんよう。 さようなら』。
はな「蓮様…。」
<はなの胸には たまらない懐かしさと共に 忘れかけていた物語への情熱が よみがえってきました。>
嘉納邸
<余裕しゃくしゃくの手紙とは 裏腹に そのころ 蓮子は 大層 いらだっておりました。>
黒沢「失礼します。」
蓮子「黒沢さん お待ちしてたんです。」
黒沢「急用とは?」
蓮子「教えて下さい。 何があったんですか? 主人は 今 どこで 何をしているんですか? 私だけ蚊帳の外で 新聞も読ませてもらえないんです。 黒沢さんなら 教えて下さるわよね。 一体 何があったのか 話して下さい。」
黒沢「10日前 ご主人の炭鉱で ガス爆発が起きたんです。」
蓮子「何ですって?」
黒沢「多くの犠牲者が出ました。 ご主人は 事故の処理と けが人に対しての対応に 追われています。 事故が起きてから 炭鉱の労働者たちの衝突が 激化し 彼らひゃ 嘉納鉱業の社屋を 取り囲んでいます。」
蓮子「私は 嘉納の妻よ。 何も知らせてもらえないなんて…。 今から主人に会いに行くわ。」
黒沢「落ち着いて下さい! 本当に危険な目に遭いますよ。」
『社長を出せ!』
(悲鳴)
「嘉納伝助!』
「出てこんか!」
「どこにおるとか!」
「出てこんか!」
「どこにおるとか!」
「社長を出せ! 社長!」
「おい! ありゃあ 嘉納伝助の女房ばい。」
黒沢「ここに 社長は いません。 お帰り下さい。」
「とぼくんな! 社長を出せ!」
「そうじゃ 社長を出せ!」
「おい 女!」
蓮子「ごきげんよう。 私に 何かご用でしょうか?」
<ごきげんよう。 さようなら。>